新車試乗レポート
更新日:2025.08.29 / 掲載日:2025.08.29

これぞボルボの真骨頂! EX30クロスカントリーに注目すべき理由【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 ボルボEX30のラインナップが増え新たなモデル展開が行われた。これまでワングレードだったものが一気に5モデルになったのだからニュース性は高い。

EX30の成長で加速するボルボのEV戦略

ボルボ EX30 クロスカントリー

 具体的にはこれまであったEX30“ウルトラシングルモーター エクステンデッドレンジ”はそのままに、“プラスシングルモーター”、“同エクステンデッドレンジ”、“ウルトラツインモーター パフォーマンス”、“クロスカントリーウルトラツインモーター パフォーマンス”といった顔ぶれだ。

 ちょっと複雑なので、これを整理すると3つのトピックスが見えてくる。一つはツインモーターの4WDが追加されたこと、二つ目は400万円台のエントリーモデルが追加されたこと、それと人気になりそうなクロカン風のクロスカントリーモデルが登場したことだ。これによりボルボのBEV戦略は一気に加速する。

 その背景にはEX30が思いのほかマーケットの反応が良かったことがある。世界的にBEVの販売は鈍化しているが、それでも認知度が上がっているのは事実。ゆっくりではあるが、市場が大きくなっている。しかも、日本ではテスラを筆頭とするプレミアムBEVカテゴリーはまだまだ可能性が感じられる。それを鑑みてボルボが攻勢をかけるのはわからなくもない。

 例えば479万円のエントリーモデルはかなりのカンフル剤になるであろう。東京都の場合補助金が三桁近くなることも考えられるから、たとえ興味本位であっても購入のリアリティはありそうだ。一度はBEVに乗ってみたいというニーズに応えられるだろう。

 さらに言えば、ボルボはこれまでネット主体で販売してきたBEVを内燃機関モデル同様ディーラーに販売を委ねるようにした。それにより、ディーラーマンの熱が入り、セールスに結びつくようになるのは言わずもがな。販売店を持たない予定だったヒョンデがセールス拠点を増やしているのだから、日本ではその方が馴染むようだ。

ボルボが十八番とするクロスカントリーモデル

ボルボ EX30 クロスカントリー

 そしてクロスカントリーの登場がプレミアムBEV全体を活性化するかもしれない。クロスカントリーといえばボルボの十八番だが、それをBEVで具現化するとは正直思わなかった。しかも、見た目はかなりかっこいい。やはり彼らはこのジャンルに一日の長があるのは確かだ。ではその詳細に触れていくことにしよう。

 EX30クロスカントリーウルトラツインモーター パフォーマンスは見た目からしてそれとわかる。車高を上げることで最低地上高はスタンダードモデル+20mmの195mmとなった。スプリングとダンパーはもちろんパワステまで専用セッティングとなる。この辺は“クロスカントリー”を長年ラインナップしてきたノウハウが集約されていることだろう。

 エクステリアではフロントマスクとテールゲートがマットブラックになり、ホイールアーチが強調される。ホイールはマットグラファイト仕上げの19インチ。試乗車には前後235/50R19が履かされていた。純正アクセサリーには18インチのオールテレインタイヤが用意されているそうだから、そちらもいい。ルーフバスケット、マッドフラップと合わせると、さらにワイルドな装いとなる。

 駆動方式は、フロントに156ps/200Nm、リアに272ps/343Nmのモーターを装備する統合制御された4WD。ただドライブモードが標準であればリア駆動のみとなる。パフォーマンスモードにすると前後が駆動するといった仕組みだ。航続距離を最大にしたいときはレンジモードを選べばいい。

ゆっくり走っても、速く走っても楽しい

ボルボ EX30 クロスカントリー

 では実際に走らせた印象だが、まずは乗り心地がいいのに驚いた。ボルボの場合V90がそうだったが、クロスカントリーの方が標準車高よりも乗り心地が悪くなってしまう傾向がある。が、今回はそれがなく、標準車高同等もしくはそれ以上快適な乗り心地に仕上げた。もしかしたらその辺は床下にバッテリーを敷き詰めたBEVの恩恵かもしれない。足まわりのセッティングもそうだが、重心位置とロールセンターの関係がうまく働いているような気がする。

 なので、試乗は終始快適。アクセルに対する反応もそれほどシビアではなく、内燃機関をドライブしているような感覚で走ることができる。BEVのピーキーな走りが嫌いな人には好印象だ。

 それでいてパフォーマンスモードでパワフルな走りができるのもBEVならでは。いきなりの加速は明らかにクラスを超えている。ゆっくり走って楽しく、速くも走れるのだから素晴らしい。

BEVカテゴリーそのものを元気にするパワーがある

自動車ジャーナリストの九島辰也氏

 ということで、SUVの中でもクロカン風モデルが人気を集めている今、EX30クロスカントリーが注目を集めるのは必至。BEVを諦めていた人もこのモデルの存在を知って試したくなるかもしれない。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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