新車試乗レポート
更新日:2025.01.06 / 掲載日:2025.01.06

新しいMINIの切り札は「5ドアで電気自動車」【MINI エースマン】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 直近のMINIは話題が尽きない。クロスオーバーがフルモデルチェンのタイミングでカントリーマンと名称変更したり、3ドアハッチバックの正式名称に“クーパー”が付いたり、そこにBEVが登場したりと忙しい。ここで紹介するエースマンもそのひとつで、新しいラインナップとしてMINIファミリーに加わった。

MINI界の主人公を期待されるニューフェイス

MINI エースマン S E

 まず気になるのはエースマンの名だ。これは文字通りの“ACE”で、イマドキで例えるなら大谷翔平みたいな存在になることを期待してつけられた。トランプのエースみたいなもんで、ここ一番で切るカードのようだ。「ハートのエースが出て来ない~」みたいな。

 それにしてもMINIというか英国文化は“○○マン”というネーミングが好きな気がする。カントリーマンもそうだし、クラブマンやペースマンもその類に属すからだ。「キングスマン」という映画もそう。このコミカルなスパイ映画にはコテコテの英国気質が随所に描かれている。

 そんなエースマンのポジションについて考えてみると、“BEVの5ドア”にカテゴライズされる。新型MINIクーパーは3ドアにはBEVがあるが5ドアには存在しないのだ。で、そのカテゴリーに位置するのがこのエースマンとなる。なので、プラットフォームは3ドアのBEVと共有する。全長と全幅を広げてつくられた。エースマンにガソリンエンジンやディーゼルエンジンが載ることがないことは、開発陣は断言しているし、ボンネットの低さや広さからもあり得ないだろう。

MINI エースマン S E

 エクステリアデザインはBEV専用モデルなので少し未来感を醸し出す。ヘッドライトの形状がそうで、丸型ではなく複雑な六角形の輪郭をもつ。そしてその中に新世代MINIをアピールするシグネチャーランプが輝くといった設定だ。全体的なフォルムはクロスオーバーなので全高は上がるが、ボディは薄く見える。そのためか、思いのほかスポーティな印象。それに写真と実物は違っていて、実車の方が数段かっこよく見える。

インテリアはシンプルな造形に最新技術を搭載する

MINI エースマン S E

 インテリアは他の新世代MINI同様のレイアウトを採用する。センターの大きな丸型ディスプレイが象徴的で、メータークラスターはなく、ヘッドアップディスプレイが情報を表示する。物理的スイッチは少なく、シンプルな造形なのが特徴だ。そして、彼ら自慢の7種類の「エクスペリエンス」で雰囲気はどうにでも変わる。センターディスプレイ内のデザインとカラー、サウンド、連動する走行モード、それとアンビエントライトが一体となって乗員を楽しませてくれる。

 パワーソースはリチウムイオンバッテリーで、容量違いで2つのグレードに分かれる。デフォルトとなるエースマンEとそのハイパフォーマンス版エースマンSEといったように。前者が42.5kWhで後者が54.2kWh。一充電あたりの走行距離はそれぞれ310kmと406kmとなる。最高出力は135kWと160kWを発揮する。

とにかく速い「S E」とナチュラルさが魅力の「E」

MINI エースマン S E

 では走らせた印象だが、2つのモデルを比べると味付けは明らかに異なる。エースマンEはちょうどいい出力なのかガソリンエンジンを動かしているようなフィーリングで操作ができる。アクセルは数段階に加減でき、それに合わせるようにパワーが発生するのだ。もちろん、ガバッと深く踏み込めばBEVらしくモーターの加速が顔を出す。が、そうでなければとても自然。しばらく走っているとBEVであることを忘れてしまうかもしれない。

 これに対しハイパフォーマンス版となるエースマンSEはモーター感が強い。トルクの立ち上がりは急で、それに合わせてピークトルクが発生する。言ってしまえば、とにかく速いのだ。きっと高速道路での長距離走行は追い越しを含め快適だろう。

MINI エースマン S E

 というようにパワーの違いは明らかだが、ハンドリングはともに軽快。エンジンが無いのでフロントが軽いのも相まって、右へ左へスイスイとハンドルを切れる。それに追従するボディもテンポ良く向きを変えるのが良い感じだ。この辺の足回りのセッティングはさすが。キレのいい加速もそうだが、ゴーカートフィーリングはここで感じられる。比較的長いホイールベースながらこの運動神経の良さは想像を超える。

立体駐車場もOKな都市型クロスオーバー

MINI エースマン S E

 というのがエースマンの概要だが、このクルマの長所はそのサイズかもしれない。全長4080mm、全幅1755mm、全高1515mmは都市部でも扱いやすい。それに典型的なSUVと違って全高1550mm制限の機械式立体駐車場も気にしなくていい。これを含めエースマンのメリットはかなり多いような気がする。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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