新車試乗レポート
更新日:2025.03.09 / 掲載日:2025.03.08
新しいCX-60、ちょっといい仕上がりです【九島辰也】

文●九島辰也 写真●マツダ
マツダのラージプラットフォーム商品群をご存知でしょうか? 日本で売られているCX-60やCX-80がそれに該当します。海外で売られているCX-70やCX-90もそうです。こちらは北米をメインマーケットとしたもので、アメリカやカナダで売られています。要するに仕向地によってパワーソースや装備を変えていると言うことです。それぞれレギュレーションが違いますからね。
それはともかく、この商品群はその名の通りプラットフォームが他のモデルと違います。大きなエンジンやハイブリッド用のバッテリーを搭載できるよう設計されました。具体的には直列エンジンを縦置きし、リア駆動を基本形とします。FRパッケージと言うやつです。
モデル | 主要導入市場 |
MAZDA CX-60 (2列シート) | 欧州、日本、他 |
MAZDA CX-70 (ワイドボディ2列シート) | 北米、他 |
MAZDA CX-80 (3列シート) | 欧州、日本、他 |
MAZDA CX-90 (ワイドボディ3列シート) | 北米、他 |
そしてそこにはマツダらしい走りに対するこだわりが詰められます。プレゼンテーションでは〈ラージ縦置きプラットネームのねらい〉と言う説明で4つの項目がありましたが、どれも走りについてでした。「ダイレクトでリニアなハンドリング」、「高いトラクション性能による走破性」などなどです。なんたって「人車一体」を表明するロードスターを長年つくっているメーカーですから、SUVとてそこは譲れないということでしょう。

と言う背景の中その第一弾として2022年秋にマツダCX-60が生まれました。およそ2年半前です。ただ、発売当初のハンドリングや乗り心地はあまり評価されず、マツダらしくないと言う声が多くありました。言うなれば、前述した項目に当てはまっていないような仕上がりです。で、そこに手が入ったのが今回のモデルとなります。そして商品改良というカタチでメディア向け試乗会が行われました。
ステアリングを握ったのは、3つのモデルです。3.3リッター直6直噴ディーゼルターボの2WDと4WD、それと同エンジンを基本にしたマイルドハイブリッドの4WDです。マイルドハイブリッドに2WDはありません。また、2.5リッター直4のガソリンエンジンとプラグインハイブリッドはこの後順次登場するとか。全モデルを改良するには少し時間がかかるみたいです。車両重量とか違いますから当然でしょう。
それでは乗った印象はというと、総体的によくなっていました。ハンドリングに軽快さは感じましたし、コーナーでの挙動もボディと足回りの一体感がありました。特にスムーズさが強かったのはディーゼルターボの4WD。通常4WDは2WDよりもバネ下の動きが重く感じたり、ステアリング操作に対するトレースがイメージと違ったりしますが、それがありません。コーナーではスッと切ったステアリングの舵角通りにラインをトレースします。この一体感が気持ちいいんですよね。

これに対し2WDは少し足が動きすぎるというか、ヒョコヒョコした挙動があります。車両重量が軽いのでダンパーの減衰圧とバネレイトを変えているそうですが、もう少ししっとり感があった方がいいでしょう。なんたってラージ商品群ですからね。
その他に手を入れた方がいいのは、エンジンのフィーリングかもしれません。踏み込んだ時の吹け上がりや高い回転域はいいのですが、低回転領域では無味無臭というかフィーリングがありません。きっと騒音や振動などディーゼルのネガティブ要素を消そうとしたのでしょう。それとともにフィーリングも無くなってしまったような気がします。それとせっかくのラージ商品群なので、もう少し低回転からトルク感があってもいいかなと。それが6気筒の大きなエンジンを動かしている手応えとなります。
なんて感じのメディア向け試乗会でしたが、あらためてCX-60を見るとデザインはかなりかっこいいと思いました。まるでヨーロッパのカロッツェリアが手がけているようなスタイリングです。それにインテリアのセンスがグッド。500万円を超える値段に応じた仕上がりだと言えます。

今回試乗はできませんでしたが、パーキングロッドには「XD ハイブリッド トレッカー」が展示されていました。ジルコンサンドメタリックのボディカラーが好みです。それにブラックのボディパーツやホイールとのマッチングもワルくないですね。きっと人気になるでしょう。このクルマをベースにカスタムしてみたくなりました。この分だとこの春からCX-60の逆襲が始まりそうです。