新車試乗レポート
更新日:2024.08.05 / 掲載日:2024.08.05

甘美なサウンドに陶酔! ランボルギーニ レヴエルトの驚異的進化度【石井昌道】

文●石井昌道 写真●ランボルギーニ

 スーパースポーツといえども環境対応は必須であり、CO2排出量削減のために電動化を推し進めなくてはならない。

 ランボルギーニも例外ではなく、2030年までのロードマップが示されている。2023年にはランボルギーニ初のハイブリッドモデルを発表し、今年は全モデルでの電動化、2025年にはCO2排出量50%削減、2028年に第4のモデル投入(BEVの4シーターとみられている)、2029年にウルス後継車投入、2030年にCO2排出量80%削減というのがそれ。

 電動化と聞くと、スーパースポーツにとって重要な要素であるパフォーマンスや官能性が多少なりとも失われるのでは? と疑いをもってしまうが、決してそんなことはない。むしろ予想を超えて、とんでもない進化をみせることが、新たなフラッグシップ、レヴエルトの試乗で確認できた。

ランボルギーニ レヴエルト

 ランボルギーニ初のHPEV(ハイパフォーマンスEV)ハイブリッド・スーパースポーツカーであるレヴエルトはエンジン+3基の電気モーターで駆動。ミドに搭載される6.5L V12 NAエンジンは従来のフラッグシップ、アヴェンタドール用のユニットとボア・ストロークは共通しているが、ヘッドにブロック、吸排気系など刷新された新開発ユニットだ。最高出力825PS/9250rpm、最大トルク725Nm/6750rpmとエンジン単体でも驚異的な性能。アヴェンタドール用が770PS/8500rpm、720Nm/6750rpmと比べるとトルクはわずかな向上だが、高回転化してパワーを絞り出しているのがわかる。

 フロントには最高出力110kW(150PS)・最大トルク350Nmの電気モーターを左右にそれぞれ搭載し、リアは最高出力110kW(150PS)・最大トルク150Nmがエンジンおよび横置きの8速DCTと組み合わせられる。バッテリーの容量は3.8kWhでプラグインで外部からの充電が可能であり、10km程度はフロントのモーターのみで走行できる。

エンジンの進化も素晴らしいが3基のモーターと組み合わせた総合では最高出力1015PSに至った。プラグイン・ハイブリッドのため車両重量は対アヴェンタドールで250kg程度重いのだが、パワーウエイトレシオは1.75kg/PSと大幅に更新している。

ランボルギーニ レヴエルト

 試乗は富士スピードウェイの本コース。先導車付きで3周×2回と短い時間ではあったが、これだけのハイパフォーマンスカーを公道で試乗してもわかることは限られているので、ストレートの長いサーキットで乗れるのはありがたい。コーナーはまったく無理のない、それでいてハンドリングの雰囲気はわかる適度なペースで走行し、ホームストレートではアクセル全開が許された。

 ドライビングモードは、EV走行にもなる「CITTA(シティ)」、一般的な走行の「STRADA(ストリート)」、スポーティな「SPORT(スポーツ)」、サーキットなどクローズド用の「CORSA(レース)」、さらに横滑り防止装置解除となる「CORSA ESC OFF」と5つ。これとは別にハイブリッドモードも「RECHARGE」「HYBRID」「PERFORMANCE」から選択可能で、合計10種類が用意される。

ランボルギーニ レヴエルト

 今回は、まずピットロードを「CITTA」で走行。スーパースポーツでのエンジン音のないEV走行はなんとも不思議な感覚だ。フロントモーターでの駆動なのでFWD(前輪駆動)というのも面白い。本コースへ合流したところで「STRADA」に切り替えると、背後でV12がフォンッと目覚める。始動はセルモーターではなく、駆動用モーターが行うのでいたってスムーズかつ素早い。アクセルを踏みましていくと図太いトルクでドンッと強烈に背中を押される感覚に、やばい乗り物だと直感する。ただし、加速が凄まじいというやばさだけで、シャシー的にはとてつもなく容量があって安心感があるのもたしかだ。コーナー区間は限界域ではなくそこそこのペースだったが、それでもフロント2モーターのトルクベクタリング効果、後輪操舵システム、4WDシステムなどを統合制御して、前後左右のトルク配分を適切に行うLDVI2.0(Lamborghini Dinamica Veicolo Integrata)でドライバーが望んだ方向へグイグイとノーズの向きがかわっていく感覚が味わえた。安定感も抜群なのはLVDIにくわえてエアロダイナミクスの効果も大きい。リアウイングは状況に応じてアクティブに3段階に調整される。

ランボルギーニ レヴエルト

 1.5kmのホームストレートの前に「SPORT」か「CORSA」に切り替える。今回は計4回ホームストレートを走れるのでそれぞれ2回ずつ。前者はシフトアップがオートだが、後者はマニュアルで行う。ホームストレートでインストラクターが乗る先導車がフル加速していくのに合わせてこちらもアクセルを床まで踏み込むと、かつて体験したことのないほど強烈で、しかもエンジンとモーターがハーモナイズされた、ある意味で洗練度の高い加速が始まった。最高出力発生回転数は9250rpmで許容回転数は9500rpm。そこまで回したときのサウンドは言葉では表せないほど甘美。雑味がまったくなく、完璧に調律されたオーケストラのようだ。

 スピードメーターはあっという間に250km/hを超え、300km/hに迫っていくが、アクセル全開では先導車に追いついてしまう。先導車は640PSのウラカンで、加速力はレヴエルトにかなわないのだ。それでも4回のホームストレート通過のうち、1回はめでたく(!?)300km/hを確認。だいぶ安全マージンをとっているにもかかわらず到達していたので、1コーナー手前までアクセルを踏み続けたらどれぐらい出ていたのだろう? 後になって冷静に考えるとおそろしくもあるのだが、安定感が素晴らしいので、運転しているときにはまったく恐怖感はなかった。

 ちなみに、タイヤはブリヂストンが専用開発したポテンザスポーツ。ランフラットなのだが、いやな硬さはなく、しなやかに路面を捉えているのが印象的だった。ブリヂストンは世界中で行われるレヴエルトのカスタマーやメディア向けのイベントをサポートしていくのだという。エンジンだけではなく強力なモーターが加わる独特のパワー&トルクを発揮する新世代スーパースポーツ用のタイヤを開発することで技術的な蓄積が望めるからだ。

 環境対応のための電動化だが、ことレヴエルトにかぎっては、牙が抜かれるのではなく、むしろ研ぎ澄ます効果をもたらした。モーターの特性には、加速・減速、それにハンドリングまで新たな可能性があることを証明しているのだ。

自動車ジャーナリストの石井昌道氏
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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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