車の最新技術
更新日:2024.03.24 / 掲載日:2024.03.18

アコードにはホンダの「最新」が詰まっている【石井昌道】

文●石井昌道 写真●ホンダ

 2023年1月末に国内での販売を打ち切ったアコードが、再び復活した。SUV全盛でセダンは一部の輸入車しか売れていない現状で、あえて導入を決めたのはクルマの基本であるセダンの、走りや佇まいの良さを訴求すること、レジェンドも販売中止となっていてフラッグシップ不在となっていたことへの対応だ。ヒットを飛ばすのはなかなかに難しいかもしれないが、自分もセダンは好きな部類なので応援はしたい。さらに、アコードは技術的に見ても面白い存在だ。

 まず、いまのホンダの主力パワートレーンとなっているハイブリッドのe:HEVには新開発の2モーター内蔵電気式CVTが採用された。

アコードが採用する2L直噴アトキンソンサイクルDOHCエンジン+平行軸配置2モーター内蔵電気式CVT搭載のe:HEV

 そもそも2013年に9代目アコードで初採用されたe:HEV(当時はi-MMDと呼ばれた)は、発電用と走行用の2つのモーターを持ち、基本はエンジンが発電に徹してモーターで駆動するシリーズ式ハイブリッド。それに加えてクラッチによってエンジンが直接駆動するモードを持つことで、高速巡航時の燃費効率を高めている。当初は1モーターハイブリッドのIMAおよびi-DCDが小型車用でe:HEVは中型車以上とされていたが、小型化もなされていまではフィットを始め、全面的に展開されている。エンジンは1.5Lポート噴射、2.0Lポート噴射、2.0L直噴と3種類用意され、車種に合わせて搭載される。バッテリーは48セルから72セル。販売された車両が増えるにつれデータを蓄積したことで、劣化マージンを少しずつ削り取ってもきており、実際に使用する容量を拡大するなど、制御面でも進化してきている。

 また、リニアシフトコントロールやダイレクトアクセルなどでドライバビリティの改善にも余念がない。リニアシフトコントロールは少し強めの加速をするときに、トルコンATやDCTなど有段ギアのように疑似的にシフトアップしていくもの。シリーズハイブリッドのシンプルな制御では、エンジン回転が先にあがり、加速が後から付いてくるラバーバンドフィールになりがちだが、リニアシフトコントロールならば有段ギアと同じように、まさにリニアな加速感になる。また、エンジンと駆動が切り離されているからこそ、ドライバーが要求した加速に対して最適な疑似的ギアレシオを選択できるので、下手な有段ギア車よりも気持ちがいいぐらいだ。

 ダイレクトアクセルは、アクセルの踏み込みに対してレスポンス良く加速Gを立ち上げる。シリーズハイブリッドは、例えばエンジン回転数が低い、もしくは停止している巡航走行から、追い越しをかけようとアクセルを全開にしても、フルパワーが発揮されるまでにはどうしても時間がかかる。エンジンがパワーを発揮する回転まで上げて発電し、それでモーターを回すからだ。ダイレクトアクセルではバッテリー出力特性を活用して素早くエンジン回転数を上げられるようになっている。今回アコードでワインディングロードを走らせてみると、タイトコーナーからの立ち上がりなどでもレスポンスの良さが確認できた。スポーツe:HEVと呼ぶに相応しいドライバビリティを獲得している。

 そして2モーター内蔵電気式CVTは、従来は2つのモーターを同軸としていたが、アコードでは平行軸とされた。同軸では、得意な回転域が異なるエンジンとモーターがロックアップギアを共有していて、妥協せざるを得ないところがあった。これに対して平行軸ならばロックアップギアを独立させられたので、それぞれのレシオを最適化。結果として、エンジンが直接駆動するモードでのエンジン回転数を下げられて静かな高速クルージングが可能になった。

新型アコードで採用されたモーターの平行軸配置

 さらに、平行軸配置となったことでレイアウトの自由度が高まり、従来と同様のパッケージングのまま、発電用と走行用のモーターの大きさ、特性をそれぞれ最適化させることも可能になった。従来と比較すると、発電用モーターは小径で厚みのあるカタチとして最高回転数を高めて最高出力を14kW向上。駆動用モーターは大径にして最大トルクを20Nm向上。ローターの永久磁石粒子の微細化や内部形状の工夫なども回転数向上やトルク向上に役立っている。前述のようにワインディングロードを気持ち良く走れるだけではなく、太いトルクによる頼もしい加速、巡航時の上質感などに、e:HEVの進化が感じられる。

「Honda SENSING 360」のシステム概要

 ADAS(安全運転支援システム)のホンダ・センシング360の国内初搭載というのもアコードのトピックスだ。現行のホンダ・センシングはフロントカメラがおもなセンサーだが、これにフロントと各コーナーへ計5つのミリ波レーダーを搭載。ACC(アダプティブクルーズコントロール)や衝突被害軽減ブレーキなどの機能が拡大するとともに、車線変更支援機能や前方交差車両警報などが可能になった。ホンダは2021年3月に世界初の自動運転レベル3のレジェンドを発売したが、それで得た知見をもとに高価なLiDARセンサーは使わずにADASの高度化を果たしたのだ。

 その他、国内向けホンダ車初のGoogleを搭載車でGoogleアシスタントや Googleマップ、 Googleプレイなどが車内で簡単に使えるようになった。復活したアコードは、興味を惹かれる技術や装備が満載なのだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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