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新車試乗レポート
更新日:2024.02.05 / 掲載日:2023.09.25

エミーラに込められた古き良き時代のロータスの魂【石井昌道】

文●石井昌道 写真●ロータス

 ロータスはエレトレやエヴァイヤを皮切りにプレミアムでハイパーなBEVブランドになっていく。従来のプリミティブなライトウエイトスポーツがなくなってしまうことに寂しさを覚える向きもいるだろうが、その魂を受け継いだモデルもまだ買うことができる。それがロータス最後のエンジン車であるエミーラだ。

ロータス エミーラ

 2021年7月にワールドプレミア、日本の路上を走り始めたのはつい最近のことであるエミーラは、全長×全幅×全高が4413×1895×1226mm、ホイールベースが2575mmのミドシップスポーツでアルミバスタブモノコックを採用してトヨタV6エンジンを搭載。2021年12月に生産終了したエヴォーラは全長×全幅×全高が4390×1850×1240mmでホイールベース2575mmなのだから、当初はこれをベースに手直し、リメイクしたのだろうと思われていたが、実際にはまったくの新設計だ。

ロータス エミーラ

 中国・ジーリーの傘下となってからの新型車であるから、新生ロータスのモデルと言えるのだが、プレミアムBEVブランドへ向かう前に、ファンに愛されてきたこれまでのロータスのベストを追求したのだろう。幸いにして資金はあるので、エリーゼやエキシージ、エヴォーラでの経験から、設計上のウィークポイントと思われるところなどを踏まえて理想を目指したのだ。

 エヴォーラには、市販車一歩手前のプリプロダクションや市販初期のモデルなども試乗しているが、最初はシャシーで苦労していることがうかがえた。

 アルミバスタブモノコックはエリーゼと同じではなく、フレキシブルに使える新たなVVA(Versatile Vehicle Architecture)だったが、重く、重心の高いV6エンジンとのバランスを取るのが難しかったようだ。

 また、開発の裏話として当時はかたく口止めされていたのだが、専用設計として開発していたタイヤがNGになって急遽あり合わせのものを採用したことも災いしていた。専用の開発タイヤはプロトタイプでは性能が良かったものの、いざ量産品をテストしたらだいぶ性能が落ちていてタイヤメーカーと喧嘩別れになったらしい。それで急遽探し出したのが他のタイヤメーカーのFRスポーツカー用だったため、ミドシップのエヴォーラとは前後の荷重バランスが違った。具体的にはフロントタイヤはノーズの軽いエヴォーラにとって剛性が高すぎて、低負荷領域ではやや接地感が薄く、高負荷領域になるといきなり舵が効きすぎてしまうというイヤな癖があった。

ロータス エミーラ

 それでもサスペンションセッティングなどでネガティブな要素はほぼ抑え込んでいたが、下りの高速コーナーなどではリアがめくりあがりそうになる現象は残っていた。年を追うごとに改善され、最終モデルなどは夢のように良くなっていたが、基本にはリア周りの容量を設計段階から上げておきたいという思いは残っていたのだろう。

 エヴォーラも、エリーゼ/エキシージに比べれば豪華でライフスタイル系スポーツカーを目指していたが、エミーラはそれ以上に上級志向でポルシェなどにもひけをとらないのが目標。たしかに各部のクオリティはヘセル本社の工場から出荷されるものとしては信じられないほど高く(工場も最新設備へリニューアルされている)、エヴォーラに比べると大きく進化している。

ロータス エミーラ

 インテリアの造り込みや装備の充実などで、車両重量は従来のロータスからみれば比較的に重い1458kgとなるが、走りも大きな進化を感じる。サスペンションはロータスらしくしなやかかつストロークが深いので、スポーツカーとしてはロールは大きめなのだが、限界的な場面でもリアがめくりあがりそうになってドライバーに不安を与えるようなことはない。いまのところ試乗したのはトヨタ製3.5L V6スーパーチャージャーを搭載し、スタンダードなサスペンションのモデルのみだが、メルセデスAMG製2.0L 直4ターボも用意されスポーティなサスペンションの仕様もあるから楽しみだ。スタンダード・サスペンションはスポーツカーとグランドツアラーの両立といった感じだが、スポーティなサスペンションならばスポーツカー要素が強くなるだろう。軽量かつ重心も低くなるだろう直4との組み合わせならなおさらだ。

 エミーラを走らせていると、エヴォーラが本来目指していた理想を完璧に捉えたという思いがある。現在に比べると当時は開発予算が桁違いに少なく、そのなかではいい仕事をしたのだが、やはり苦しいところはあったのだ。エミーラは最後のエンジン車というだけではなく、古き佳き時代のロータスの魂がこもった最後のモデルでもあるのだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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