新車試乗レポート
更新日:2023.01.30 / 掲載日:2023.01.30

【日産 エクストレイル】「e-4ORCE」はどれだけ役に立つ? ツルツルの氷上で試してみた

文●ユニット・コンパス 写真●日産

 新型エクストレイルの4WD性能はどれくらい進化したのか。例えるなら、旧型と新型では、ガラケーとスマホくらい違う。それくらい驚きの体験だった。

日産の4WD性能を大きく進化させた電動化

長野県女神湖で行われた日産主催の氷上試乗会

 雪国で暮らす人々は、ボディタイプの違いこそあれ、ほとんどが愛車に4WDを選ぶ。それは必要性を感じるからだ。4WDと2WDの違いは大きく、またその4WDもメーカーによって出来に差がある。安全かつ快適に生活できるかどうかに関わるから、ユーザーの選択眼はシビアだ。

 新型エクストレイルの開発に携わった開発エンジニアは、かつて親戚に日産に就職したことを伝えたことろ「たとえ身内が日産に就職したとしても、悪いけど日産は選ばない」とはっきり言われた。

 当時の日産の技術力では、エンジンとメカニカルな4WDシステムの組み合わせでは、先行するメーカーに追いつけない。だが日産の技術者たちは、GT-Rで培ってきた制御技術をモーター駆動と組み合わせることで、逆転できるに違いないと考え、電動4WDシステムの開発に邁進した。それが、先代ノートに2018年に追加された電動4WD「e-POWER 4WD」だ。前輪と後輪それぞれにモーターを搭載し、緻密な制御で高い走破性を実現する「e-POWER 4WD」は、北海道・東北地域でも受け入れられ、ノートの登録車販売台数No.1達成に大きく貢献した。

 新型エクストレイルが搭載する「e-4ORCE(イーフォース)」は、「e-POWER 4WD」をさらに進化させたシステムになる。

 前後のタイヤそれぞれをモーターで駆動するという部分では同じだが、「e-4ORCE」では車両全体を統合制御することで、制御規模がおよそ1.5倍となり、レスポンスと制御の緻密さが大いに高められた。そのおかげで、雪道や滑りやすい路面でも、意のまま感のある安定した走りを実現したという。

「e-4ORCE」の実力を氷上で試す

先進技術「e-4ORCE」を搭載する新型エクストレイルの4WDモデル

 さて、そんな「e-4ORCE」の実力を試すチャンスがやってきた。日産が毎年実施している長野県女神湖での氷上試乗会だ。

 クローズドされたコースなので、スピンを恐れずにクルマの限界性能をテストすることができる。用意されていたのは、「e-4ORCE」搭載のアリア、エクストレイル、電気自動車のサクラ、そして「e-POWER」搭載のキックス、ノート。純粋なエンジンを搭載するGT-RとフェアレディZも用意されていたので、電動化自動車と内燃機関自動車の違いも体験できた。

 1日で10モデルほどをテストすることができたのだが、この日もっとも走りを楽しめたのが新型エクストレイルだった。

 理由は明確で、クルマを操る楽しさと安心感のバランスが、クルマ好きにとって最高だったから。

 停止状態からアクセルを踏み込むと、車体をわずかにゆらしながら車速がグングン上がるので気持ちいいし、減速はアクセルを緩めるだけで回生ブレーキが利くので極めてスムーズ。ペダルを踏みかえる必要がないのは本当にラクだ。コーナーでは、思っていた以上に小回りが利いた。外側に膨らまずに曲がれるのがどれだけ安全なのかは、説明するまでもないだろう。もちろん、タイヤのグリップ限界を超えることはできないが、タイヤの能力を最大限に引き出してくれるイメージだ。

素早い切り返しが求められるスラローム走行では、スムーズかつ安定感のある走りを披露

 安定性の高さだけが評価につながったわけではない。むしろ、ある程度まで不安定な状態を許容してくれるところに、新型エクストレイルの面白さがある。先代エクストレイルもいいクルマだったが、比べてしまうとガラケーとスマホほどの差があると感じた。 

 ほかのモデルは安全性を重視するため、タイヤがすべり始めるとクルマの動きを安定させるために出力をしぼって何もできない時間が長くなる。それに対して新型エクストレイルは、タイヤがスリップしてもある程度は出力を出し続けてるので、ある程度車体をすべらせながら走ることができる。だからドライバーにとっては、コントロールする余地が多く感じられるのだ。もちろん、スピンモードに入りそうになるとクルマが出力をしぼって車体を安定させるため、危険な状態におちいる不安も感じない。他人の運転でも安心感があることが確認できた。クルマの動きに唐突さがないからだ。

まとめ

エクストレイルのドライブモード切り替えスイッチ

 最後に、新型エクストレイルの実力を引き出すちょっとしたコツをお伝えしよう。

 それは、ドライブモードを積極的に活用すること。日産の開発エンジニアによれば、ドライブモード「AUTO」は一度スリップを検知すると自動的に内部で「SNOW」モードに切り替わるが、「e4ORCE」の4WD走行は燃費への悪影響が少ないため、外気温が低い時期は、「SNOW」モードを普段から積極的に使ってもらいたいという。こうした操作がやりやすいように、ドライブモードの切り替えスイッチも、センターコンソールの手が届きやすい場所に配置されている。

 なお、ドライ路面のワインディング路でも意外なことに「SNOW」モードがおススメなのだとか。これは、前輪内側のグリップを積極的に使うようになるため。そう、新型エクストレイルの4WDは、雪道だけでなくドライ路面でも走りに貢献する。さすがGT-Rを磨き続けている日産ならではの作りこみだ。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ