新車試乗レポート
更新日:2022.08.01 / 掲載日:2022.07.25

【試乗レポート 日産 新型エクストレイル】4WDを進化させた「e-4ORCE」を体験!

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 日産の看板車種のひとつであるミドルサイズSUV「エクストレイル」がフルモデルチェンジを行い、4代目に進化した。エクストレイルは、初代が2000年にデビュー。従来型となる3代目は、2013年12月のデビューなので、9年振りの全面刷新となる。先代では、ガソリン車とハイブリッド車の二本立てであったが、新型では、e-POWER専用車となったことが最大のトピック。既に海外市場では、2020年に姉妹車である「ローグ」がデビュー済みで、日本の方が後発となるが、その最大の理由こそ、e-POWERの搭載にある。同仕様は、グローバルでも展開されるが、発売は日本が世界初だ。

初代を思わせる角ばったデザイン+上質感

日産 エクストレイル

 新スタイルは、ワイドスタンスを強調したタフなもの。直線的なデザインと大径タイヤを収めるワイドフェンダーを強調することでSUVらしいデザインに仕上げている。ただし、質感の高さを感じられるように、2段式ヘッドライトやブラック化された大型Vモーショングリル、メッキモールでメイクアップしたウィンドエリア、安定感のあるリヤスタイルなどを取り入れている。どっしりとした印象を受けるため、ボディは大型化されたように映るが、サイズアップは、全幅のみで、従来型+20mmの1840mmに。ホイールベースも維持しながら、最小回転半径も-0.2mの5.4mに抑え、取り回しの良さも高めている。

かなり上質になったインテリア。3列7人のり仕様も用意

日産 エクストレイル

 インテリアは、いずれも12.3インチのセンターディスプレイとメーターパネルを採用。ヘッドアップディスプレイも、10.8インチと大型化されており、先進感溢れるコクピットとなっている。インテリア自体は、シックな仕上げとなっており、ダッシュボードは直線的かつすっきりとしたデザインに。センターコンソールは、電制シフトの採用をしたことで、下側にも小物入れを新設。上級感の演出としてナッパレザーシートをオプション設定。高触感のフェイクレザー「テイラーフィット」や防水シート仕様など用途に最適なシート選びも提案している。乗車定員は、5人乗りが基本だが、1グレードのみだが、3列7人乗り仕様も設定された。後席のスライド機構は、よりロングスライドとなり、後席とラゲッジスペースの使い勝手の向上を図っている。

最新の「e-POWER」と「e-4ORCE」を採用して燃費と走りを進化させた

日産 エクストレイル

 刷新されたプラットフォームは、アライアンスで共有するミッドサイズ車向けの「CMF C/D」を採用。サスペンションはフロントがストラット、リヤがマルチリンクは同様だが、剛性が高められている。新兵器となるe-POWERは、高性能化を図った第2世代のe-POWERに、日産が独自開発した可変圧縮比のVCターボエンジンを組み合わせたもので、e-POWER最強スペックを誇る。搭載エンジンは、1.5L直列3気筒DOHCターボだが、ピストンにリンク機構を設けることで、通常のエンジンでは固定となる圧縮比の可変を可能としているのが特徴だ。これによりパワーが必要な状況では、低圧縮比に。逆に巡行走行時などは効率を高める高圧縮を行う。圧縮比の変更はリニアかつ自由に行われるため、ドライバーが変化を感じるのは難しいほど。なぜモーター駆動で、エンジンは発電のみのe-POWERに、このようなエンジンが必要になるのかを説明すると、e-POWERは、発電エンジンを搭載する代わりに、駆動用リチウムイオンバッテリーは小型化している。このため、電動車ながら、価格を抑えることが出来るわけだ。そのため、発電エンジンの性能が、モーター出力にも影響を与える。さらにエクストレイルでは、これまでのe-POWERよりも、モータースペックが高い上、2モーターの4WDも用意する。そこでコンパクトなサイズで、高性能と高効率を両立できるVCターボエンジンが相棒に選ばれたのだ。モーター出力だが、フロント150kW(204ps)/330Nmを発揮。4WD車では、リヤに100kW(136ps)/195Nmのモーターが追加される。燃費効率については、FWD車が19.7km/L、4WD車が18.4~18.3km/L(共にWLTC)と公表されている。4WD仕様は、新システムである「e-4ORCE」を採用。これはEVのSUV「アリア」に搭載が予告されるもので、前後のモーターと4輪ブレーキを強調制御することで、走行安定性を高める機能だ。より扱いやすくなるため、日常領域での運転し易さが増すのもポイントだという。まだアリアもFWD車しか発売されていないため、市場投入はエクストレイルが先となる。

さらに進化した「プロパイロット」など運転支援技術

日産 エクストレイル

 従来型より採用される先進機能も強化されており、高速道路同一車線運転支援システム「プロパイロット」にナビ連動機能を加えることで、より道路状況に適した支援が行えるように。また高度駐車支援の「プロパイロットパーキング」や緊急時通報機能「SOSコール」なども採用するなど盛りだくさん内容であり、まさに日産の最新技術が凝縮された一台なのだ。

 新4WD「e-4ORCE」を搭載したエクストレイルに、テストコースでの試乗が叶ったが、電動車らしい加速力は、e-POWER史上最強のもの。モーター出力の向上は、e-POWERでも、エクストレイルの走りを守れることを実感させてくれた。そして、通常走行時は、驚くほど静かで、エンジンの存在を全く感じさせないほど。強めの加速などパワーが必要なシーンでは、エンジン音が高まるため、車内にエンジン音が届くが、そのサウンドはしっかりと聞きごたえのある音にチューニングしており、加速のリニア感をより高めてくれる演出ともなっている。そしてe-4ORCEの恩恵は、想像よりも大きく、コーナーやワインディングでのオンザレールの走りを高めてくれる。ただテストコースは、路面が良いため、通常の電動4WDのe-POWERでも、ノートやオーラの4WDのように気持ちよい走りが得られるだろうが、路面状況が悪いほど、FWD車とだけでなく、通常のe-POWERの4WDとe-4ORCEの差が、しっかりと感じられるというから公道試乗も楽しみだ。

 全体的な質感や機能が向上され、ラゲッジスペースには1500W電源を設けるなど、アクティブギアとしても進化を遂げている新型エクストレイル。最大の悩みは、上昇した価格帯だろう。しかし、アウトドアでエクストレイルを満喫する人ほど、e-4ORCEの恩恵が得られるシーンもあるだろうから、安易に値段優先でFWD車を選ぶべきではないだろう。また3列シート車は、1グレードのみの設定からも分かるように、3列目はエマージェンシー的。従来型同様、いざという時にあれば便利というものと捉えよう。歴代モデルの魅力を受け継ぎながら、少しポジションを高めたエクストレイルは、e-POWERとe-4ORCEを武器に、人気のミッドサイズSUV市場に勝負を挑む。総合的な評価は高まっていると思えるが、エントリー価格が約320万円まで上昇し、初代から受け継いできた身近な相棒として印象は薄まった。ただe-POWERなど高コストのシステムを取り入れていることや近年の資源高を考慮し、ある程度は許容すべきだろう。それを踏まえた上で、歴代同様のコスパの高いSUVに仕上がっていると感じられるかどうかは、じっくりと触れて見てから判断したいと思う。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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