輸入車
更新日:2025.12.05 / 掲載日:2025.12.05
最新モデルも話題!BMW 3シリーズが描くスポーツセダンの理想の姿とは

写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2026年1月号「ドライバーを虜にするBMWの過去・現在・未来【いつまでもBMWに夢中!】」記事の内容です)
いつの時代もユーザーはワガママだ。理想は高く、二律背反する要素を期待する。たとえば、毎日気がねなく使える実用性と俊敏で意のままに操れる運動性能といった具合に。そうしたクルマが好きで運転が好きなドライバーのワガママを叶えてくれるのがBMWというブランドだ。BMWには、他のブランドであれば2台必要なところを、1台でまかなってしまうオールマイティさがある。だから我々は、ずっと、いつまでもBMWに夢中なのだ。
最新モデルは、2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー「10ベストカー」に選出

大胆かつ緻密に作り込まれたスタイリングが印象的な4ドアクーペ。パッケージ効率が高く、スタイルから想像する以上の実用性を確保しているのも魅力。最新の車載OSにより高度な知能化を実現した。
50周年を迎えたスポーツセダンの傑作【なぜ3シリーズは特別なのか】

写真●石井昌道 写真●ユニット・コンパス、BMW
スポーツセダンに求める要素すべてが高次元
初代モデルの登場から50周年を迎えた3シリーズ。BMWの中核モデルであり、世界中の自動車メーカーからベンチマークとされるスポーツセダンの代名詞だ。その魅力を問われれば、BMWならではの駆け抜ける歓びがコンパクトなボディに濃縮されていること、快活でスポーティなデザイン、それでいて日常使いでは快適に過ごせるバランスのよさ、という至極当然でイメージどおりの回答に尽きる。それを50年にわたり一貫して貫きとおし、セダン離れが叫ばれて久しい日本市場でも人気に衰えが見られないことが、3シリーズを特別な存在たらしめているのだ。
BMWとてトレンドとは無縁ではなく、今ではSUVが販売台数の約1/3を占めるようになったが、それでも輸入車販売ランキングでトップ10をはずすことはない。現行のG20もモデル末期になってきているが、2023年も2024年も6位。BMWのなかではトップであることも多いのだ。
個人的な3シリーズとの付き合いは2代目のE30から始まった。1993年当時、それまで乗っていたマツダ ロードスターでは荷物があまり載らなくて買い替えを決意。FRでコンパクトながらユーティリティに優れるモデルを検討したところ目にとまったのがE30だった。あまりお金がなかったので中古で探していたのだが、2ドアセダンの320i Mテクニックの5速MTが見つかって即決。2Lと小排気量ながら直列6気筒であるスモール6の、えも言われぬスムーズかつキレのある吹き上がりが感動的で、それをMTで味わえる快感はもちろんのこと、スポーティでありながら乗り心地は望外によく、ロングドライブで疲れない特性、ボディサイズのわりにラゲッジルームが広々としていて荷物をたっぷりと積み込める利便性の高さなど、すべてのバランスがいい。非日常的な刺激を日常のなかで味わえるというスポーツセダンの理想の姿だった。
Profile:モータージャーナリスト 石井昌道
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。ワンメイク・レース等へ参戦しドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。エコドライブの研究、および一般ドライバーへ普及させる活動も行う。
3シリーズの魅力
[その1]駆け抜ける歓びを体現する優れた走行性能

ステアリング操作に対してどこまでも忠実なことが、駆け抜ける歓びの最たるものだと述べたが、パワートレインの優れたドライバビリティも見逃せない。特にF30から採用されたZFとの共同開発による8速ATは優れもので、Dレンジのままでもシフトスケジュールは完璧といってよく、ドライバーの意志を汲み取ってくれる。エントリーモデルの2Lガソリンなどでも低回転から有効なトルクでじつに扱いやすいのだ。
[その2]見るだけで気分がアガる洗練されたスポーツデザイン

F30はシャープでエッジの効いたキャラクターラインが特徴的ながら、G20では一変してクリーン&シンプルな面構成になるなど時代によっての違いはあるが、歴代で共通しているのは基本的なフォルムが美しく、存在感があること。真上から見たときのカタチは、単なる長方形ではなくバレル型と呼ばれ、樽のようなカタチをしているのがポイントだ。
[その3]スポーティさと快適性の完全なバランス

高速道路での移動が多く、バカンス時期にはフル乗車・フル積載でロングドライブに出かけるという欧州的なカーライフが背景にあるからだろうが、3シリーズはスポーティながら利便性が高く、乗り心地が快適なのも美点。相反する要素を高い次元でバランスさせるのが腕の見せどころで、どのモデルに乗っても満足度が高い。最高の相棒となってくれるはずだ。
その後の歴代モデルも、やや快適志向寄りであったり、逆にスポーティさが強調されたりと、多少の揺らぎはあったものの、スポーツセダンの理想形であることにかわりはなく現行モデルまで貫きとおしている。

駆け抜ける歓びをもう少し深掘りすると、ドライバーのステアリング操作に対して忠実で、どこまでも裏切ることがない、ということが真骨頂だ。国内外のさまざまなモデルをテストコースに持ち込んで緊急回避テストなどをする機会を持っているが、ウエット路面に100km/hで進入し、40Rの曲率のカーブを曲がりながら急ブレーキで止まるというウエット旋回ブレーキで、3シリーズはいつも見事なまでのライントレース性を見せる。

このテストでは、メーカーや車種によって考え方の違いが表れ、日本車の多くは決してスピンしないように振る舞い弱アンダーステアに終始する。たしかにスピンはしないが、ラインははらんでいってしまい、リアルワールドでは壁にぶつかったり崖から落ちることがあるかもしれない。また、ドライバーにとっては自分の思いどおりに動いてくれないことが不安だ。3シリーズは安定性も優秀なのだが、それ以上にステアリングの効きを最優先していて、多少はテールが滑り気味になってでもドライバーの意思に忠実であろうとする。だからこそ、どんなときでも信頼感があり、一体感が高いのだ。
これは3シリーズ自身が、3シリーズを選んでくれたドライバーを信頼してくれている証でもある。だからユーザーはその関係性に特別なものを感じざるを得ず、付き合いが長くなっていくのだ。
History of the 3 Series
E21

上級車レベルのメカニズムをコンパクトなボディに凝縮した初代3シリーズ。世界累計136万台を販売する大ヒットモデルとなった。
E30

高性能を主張するツインライトが印象的。ワゴンタイプのツーリングやM3など近代3シリーズの基礎を作り上げた。
E36

スポーツセダンとしての魅力を磨き上げ現代的なスタイリングで包み込んだ傑作。日本でも大ヒットモデルとなった。
E46

3シリーズとしての特徴はそのままに、上質なラグジュアリーカーとしてのキャラクターを手に入れたモデル。
E90

21世紀に登場した3シリーズとして装備や機能が大幅に進化。コントロールシステム「iDrive」を採用した最初の世代。
F30

ダイナミックかつ上質なスタイリングが特徴。シリーズ初のハイブリッド仕様が登場するなどパワートレインも進化。
G20

F30よりひとまわり大きな車体ながらも、軽量素材や設計の工夫で運動性能はさらに進化。自動運転技術も採用した。
最新モデルをつねにテストするモータージャーナリスト石井昌道氏がプライベートカーに3シリーズを選んだ理由

高速主体なら1給油で1000kmを走行可能
秀逸な欧州のクリーンディーゼルを日本でも乗ってみたいと思っていたところ、2012年にデビューしたF30に320dが導入されると聞いてすぐに購入を決断した。
自分は燃費オタク的な一面もあって、それまではトヨタ プリウスとホンダ インサイトを乗り継いでいたが、320dは最大トルク38・7kgmで日本のハイブリッドカーに比べると段違いに頼もしい走りながら、実用燃費は16〜17km/Lほどで燃料コストはほぼ同等。高速道路主体ならば1タンクで1000kmは余裕の航続距離もずぼらな性格にとってはありがたいかぎりだ。

電子制御可変ダンパーをオプションで選択したこともあって、乗り心地は想像以上に快適で、ロングドライブは得意科目。全幅1800mmの使いやすいボディサイズながら、後席もラゲッジルームも十分以上の広さ。もちろんハンドリングも素晴らしく、身体に馴染みすぎて気が付けば13年、14万kmも乗ってしまった。 現行のG20はステアリングの正確性がさらに高まっていて進化を感じるが、バランスのよさやまとまりのあるエクステリアデザインなどではF30も負けていないと今でも思っている。トラブルは車輪速センサーが1つ故障したのみ。いい個体に巡り会ったのかもしれないが、信頼性も抜群に高いのだ。そろそろ買い替え時ではあるものの、もう少し付き合っていこうと思っている。

高効率と性能を両立させたディーゼル搭載モデル

F30が搭載する2L直4ディーゼルターボエンジンは、6気筒ガソリンエンジンに匹敵する力強い走りと4気筒ガソリンエンジンをしのぐ低燃費を両立させることを目標に開発された。アドブルーを使うことなく、当時の環境規制をクリアしたクリーンなエンジンだ。
日本各地を取材で走り走行距離は14万kmオーバー!

モータージャーナリストの仕事は、各地で実施される試乗会に参加するため走行距離が伸びがち。長時間、長距離運転する時間が多いからこそ、運転が楽しく経済性にも優れるクルマが必要になる。そういった観点からも3シリーズは素晴らしい選択で非常に満足している。
ライタープロフィール
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。