輸入車
更新日:2023.12.05 / 掲載日:2023.12.05
BMWの今がわかる! プレミアムSUV「Xシリーズ」を徹底検証
写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2024年1月号「羨望の的となるプレミアムSUVを徹底検証! Xシリーズを知ればBMWのいまがわかる!」記事の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
現在のBMWがどのような魅力を持ち、どのような装備や性能を備えるのか。ブランドの現在地を語るときに、注目すべき存在となるのがSUVモデルのXシリーズ。X1からX7、そして電気自動車やハイパフォーマンスモデルまで、最新BMWのエッセンスが凝縮されたプレミアムSUVを徹底検証する。
Xシリーズ奇数と偶数の違い
Xシリーズにはその後に奇数と付くパターンと偶数が付くパターンがある。これはカタチとキャラの違いで、奇数がデフォルトとなるSUV然としたスタイリングをし、偶数がそのクーペ版となる。よってキャラも奇数に対し偶数はよりスポーティというわけ。もちろん偶数のほうが趣味性が高いので生産台数は少なく希少だ。
[X1]いまのBMWを実感できる全方位最先端なコンパクトモデル
扱いやすいコンパクトなボディに、プレミアムブランドの上質さを凝縮したのがX1。そんな人気モデルがフルモデルチェンジを受けて第3世代となって登場した。
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス、川崎泰輝
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
BMWのXシリーズの中で最も新しいのが今年登場したX1。2009年の初代から数えて3世代目としてフルモデルチェンジした。初代はとても印象的なモデルであった。コンパクトながらエンジン縦置きのRWDを基本形としたため、ロングノーズだったからだ。
2代目からはプラットフォームをMINIと共有し、今回もそうした。効率を考えればこうなるのは必然だ。SUVはもはや派生モデルではなく、デフォルトになっている。その意味で効率のよいパッケージングを採用し、運動性能だけでなく、キャビンを広くして快適性を上げるのも競合対策の重要ポイントとなる。
といった背景で生まれた3代目のキーワードは“モダン”。デザイン、インターフェース、安全装備の面で最新の技術を投入した。インターフェースにおいてはデジタル化が目立つ。曲面でメータークラスターとセンターモニターが一体となったフレームレスの画面はインパクト大だし、突起物を減らしたセンターアームレストは未来的。高級感のあるシートと合わせて、2つ上のクラスに乗っているような気分になる。
そして“モダン”の旗印は、内燃機関を積まないBEVの登場だろう。その名は「iX1 xDrive30」。BMW初の背の高いコンパクトカーバッテリーEVだ。動力源はリチウムイオンバッテリーで、電気モーターを前後アクスルに搭載する四輪駆動モデル。これで新型X1にはガソリンエンジンとディーゼルエンジンと合わせ、3タイプのパワーソースが用意されることとなった。
それじゃ走らせるとどうかだが、これが気持ちがいい。ガソリンエンジンに近いフィーリングで加速する。EV走行特有のトルクの急激な立ち上がりはないから内燃機関から乗り換えてもそれほど違和感はない気がする。それにハンドリングはBMWそのまま。床下にバッテリーを敷き詰めた重ったるさはない。思うに、この動きがすべてをいい方向へ感じさせている気がする。イメージ通りの走りが期待できるのだ。極限までバランスにこだわったに違いない。
感心しながら次に2L直4のガソリンエンジン車に乗ると、やはりこっちがBMWらしさだと再確認させられる。この軽快さとスッキリした走りはやはりBEVとは一線を画す。とはいえ、新型X1の走りは総じて相当いい。基本的なクルマの挙動がいかにもBMWなのだ。
というのが新型X1のファーストインプレッション。BMW然としたマルチパーパスな1台だ。問題は3つのパワーソースからどれを選ぶか。かなり難しい決断になることだろう。
Profile:自動車ジャーナリスト 九島辰也
ファッションや旅にも造詣が深い自動車ジャーナリスト。プライベートでは、アメリカ、ドイツ、イギリスと各国のクルマを乗り継いでいる。
BMW X1のオススメPoint
・BEVを含む3つのパワーソースから選択できる
・モダンなインテリアと最新のインターフェース
・ハンドリング重視のBMWらしい走り
BMW X1 xDrive20d Mスポーツ(7速AT・DCT) ●全長×全幅×全高:4500×1835×1625mm ●ホイールベース:2690mm ●車両重量:1740kg ●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ ●排気量:1995cc ●最高出力:150ps/4000rpm ●最大トルク:36.7kgm/1500-2500rpm ●新車価格:586万円〜786万円(X1 全グレード)
[X2]日本で世界初公開した新型はモダンデザインがさらに進化
先日のジャパンモビリティショーで発表されたのがこの新型X2。デリバリーは2024年以降。まずはガソリン、その後BEVが上陸してくる予定だ。BMWはSUVをSAVと呼ぶがこのクルマはSACとなる。スポーツ・アクティビティ・クーペだ。
[X3]プレミアムミドルクラスの大本命は何を選んでも満足できる優等生
BMWを代表するモデル3シリーズと同じナンバーを与えられたX3。それはつまり、X3がBMWらしい魅力を高濃度で備えることを示している。
写真●澤田和久、内藤敬仁、BMW
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
かつて日本の輸入車業界を席巻したBMWの3シリーズ。E30型は当時“六本木カローラ”なんて揶揄されたほど売れたクルマだ。でもってその流れはE36、E46型、そして現代のG20へと続く。どのモデルも乗っている人も多かったし、憧れた人も多かった。
そして現在、そのポジションはX3へと受け継がれている。背の高いクルマ最盛期において、かつての3シリーズのようにBMWのドル箱的存在になっているようだ。
現行型は2017年にリリースされた3世代目で、2021年にマイナーチェンジを受けた。フロントマスクは現行ラインアップとの整合性をとるためにキドニーグリルが左右一体構造にし、空力をよくしたバンパーと最新のヘッドライトユニットを装着している。これだけで見事に印象をガラリと変えたから立派だ。新鮮さが際立つ。
パワーソースは2L直4ターボのガソリンエンジンと2L直4ターボのディーゼルエンジン、それと同排気量の直4ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド、そして純粋な電気自動車であるiX3までが用意される。508㎞(WLTCモード)という航続距離は長距離ドライブまでカバーする本格的なもの。あらゆるユーザーニーズに応える柔軟さを併せ持つのも、3シリーズの伝統を受け継ぐキャラクターだ。
インテリアからも同様のことを察せられる。ダッシュボードのインターフェースが少し前のものだからだ。メータークラスターはフルデジタルではあるものの、センターモニターとは独立している。よって前ページのX2に装着される曲面ガラスでメータークラスターとセンターモニターを一体化したものとは別物というわけだ。コネクティビティ、安全装備、自動運転系補助システムは日々進化しているだけに、ほんの数年の開発時期の違いだけで、見た目からしてだいぶ異なってしまう。
その観点ではモデル末期といえなくないX3だが、クルマの走りに関してはまったくもって問題ない。というかしっかりBMWらしく走ってくれるからうれしくなる。「ガソリン車もディーゼル車もいいが、プラグインハイブリッドのパワフルさも捨てがたい!」というように。
というのが現行X3の概要だが、マイナーチェンジから丸2年経ってもまだ売れ続けている。車格やサイズ感的にも、「小さ過ぎず大き過ぎず」なところがウケている理由だろう。あらゆるシーンを一台でこなすパフォーマンスを持っている。
BMW X3のオススメPoint
・SUV界のベンチマークとしての信頼性の高さ
・モダンながらオーセンティックなデザイン
・プラグインハイブリッドの力強い走り
BMW iX3 Mスポーツ ●全長×全幅×全高:4740×1890×1670mm ●ホイールベース:2865mm ●車両重量:2200kg ●最高出力:286ps/6000rpm ●最大トルク:40.8kgm/0-4500rpm ●新車価格:790万円〜978万円(X3全グレード)
[X4]エレガントなクーペスタイルで都会的な洗練を漂わせる
X3にもクーペスタイルのSAC、X4がラインアップされる。ボディまわりのパーツがX3と異なることで、サイズは若干違う。全長と全幅は拡大されるが、全高は低くなる。エンジンは2L直4ディーゼルと2L直4ガソリンの高出力版を用意。
[X5]あらゆる要望をハイレベルで叶えるSAVコンセプトの先駆者
Xシリーズの最初の1台でもあったX5は、現在でもSAVの中心的存在。上質さ、優れた走行性能、そして先進装備、どれも超一流の能力を備える。
写真●ユニット・コンパス、BMW
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
今年マイナーチェンジしたXシリーズのなかにX5がある。1999年に北米で登場したBMW初のSUV(彼ら的にはSAV)で、世界中で爆発的にヒットしたモデルだ。アメリカや中国といった巨大市場で人気なだけに、Xシリーズのトップセラーになっている。現行型は2019年から販売をスタートした四代目で、そこに手が入った。
目立つのはやはりフロントマスク。ここにBMW初採用の矢印型デイライト機能を持つLEDヘッドライトを搭載した。そしてバンパーを巨大化し、印象を新しくする。さらに言えば、今回プラグインハイブリッドに暗闇で光るアイコニックグローキドニーグリルを取り付けている。パワーソースの違いを出すのにいいアイデアとなるだろう。
インテリアでは12.3インチのメーターと14.9インチのコントロールディスプレイを一体化した湾曲したディスプレイが目を引く。フルモデルチェンジした新型X1と同じロジックのモノだ。が、そこはクラスの上がるX5だけに高級感を強く醸し出している。突起物がほとんどないダッシュボードとセンターコンソールはベントレーなどのウルトララグジュアリーブランドに近い仕上がりだ。
今回はラインアップの再構成にも注目したい。というのも、主軸となっていたディーゼルエンジンをラインアップから外したからだ。ヨーロッパではディーゼルエンジンの生産を縮小しているのでその影響と思われる。よってエントリーモデルは3L直6ターボのガソリンエンジンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドとなる。出力はトータルで489馬力だから十分だ。そしてその上に4.4LV8ツインターボ+マイルドハイブリッドの530馬力バージョンが控えている。もはやスーパーカーレベルのパワー。でもってトップエンドには同じパワーユニットで出力を625馬力に上げたX5 Mコンペティションが用意される。Mモデルはハンパない。こちらはグリルまわりが個性的に化粧されるので、見た目の印象はガラリと変わる。まぁ、価格も2000万円級となるが。
というように、X5にはハイパフォーマンスを強調したモデルが目立つ。Xシリーズのなかでも上のクラスにはそこが要求されるようだ。単にサイズが大きくなるのではなく、高いレベルの走りを提供する。その証拠に4WD、4WS、セルフレベリング付きエアサスペンションなどがスタンダードモデルに標準装備される。その辺のこだわりはさすがBMWといったところだ。
BMW X5のオススメPoint
・BMWが提供する高いパフォーマンスを味わえる
・インテリアの高級感はもはやウルトララグジュアリー級
・最強兵器「M」がラインアップされる
BMW X5 xDrive50e Mスポーツ(8速AT) ●全長×全幅×全高:4935×2005×1770mm ●ホイールベース:2975mm ●車両重量:2500kg ●エンジン:直6DOHCターボ ●排気量:2997cc ●エンジン最高出力:313ps/5500rpm ●エンジン最大トルク:45.9kgm/1750-4700rpm ●モーター最高出力:197ps/7000rpm ●モーター最大トルク:28.6kgm/100-5500rpm ●新車価格:1260万円〜1520万円(X5全グレード)
[X6]艶やかさと強さが共存するスポーツ・アクティビティ・クーペ
BMWのSACはここから始まった。当初マニアックなSUVクーペをメジャーにしたのはこのX6。新型は4.4LV8ツインターボ+マイルドハイブリッドの530psと、同ユニットを“M”が手がけたX6 Mコンペティションの625psの2モデルで展開する。