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更新日:2024.12.24 / 掲載日:2024.12.24

プレリュードの試乗で実感したe:HEVでの操る喜び【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●ホンダ

 2040年にEV、FCEVの販売比率100%を目指すホンダだが、当面はハイブリッドのe:HEVが主力のパワートレーンであり、間断なく開発を進めている。今回は次世代型のe:HEV、ミッドサイズのプラットフォーム、電動4WDユニット、そしてHonda S+ Shiftを搭載した次期プレリュードのワークショップに参加してきた。

Honda e:HEV Biz&Tech Workshop

 e:HEVはエンジンが発電に徹してモーターが駆動するシリーズハイブリッドをベースに、エンジンが得意とする高速巡航時にはエンジンが直接駆動するモードを備えることで世界最高効率を目指したシステム。コンパクトカー用の1.5Lとミッドサイズ用の2.0Lと2つのエンジンを使い分けている。

 2023年のe:HEV搭載車の販売台数は65万代だが2030年までに年間130万台を目指す。生産効率の向上とコスト低減にも取り組み、1台あたりの収益性はは2023年が2018年の1.5倍、2027年以降の次世代型では2倍が目標となっている。

 次世代型は1.5Lと2.0Lのエンジンをともに新規開発。その他フロントドライブユニット、統合型冷却システムも新規開発され、次世代型ミッドサイズのプラットフォームと組み合わせた場合は10%以上の燃費性能向上が見込めるという。

 エンジンは厳しさを増す排ガス規制に対応しながら出力を落とすことなく、しかも全領域でストイキ(理論空燃比)を達成するそうだ。1.5Lは現行に比べて目玉と呼ばれる高効率領域を現行に対して40%以上拡大、2.0Lは2018年モデルに比べて30%拡大するという。バッテリーやモーター、電力変換などでも高効率化が図られることで燃費改善および走る楽しさを向上させる。

ホンダが公開した次世代のe:HEVシステム

 e:HEV車の4WDはこれまでプロペラシャフトを用いたメカニカル式だったが、電動に切り替えていく。リア駆動用のモーターは50kW級でフロントの駆動力と同等とまではいかないものの、滑りやすい路面での発進用であるいわゆる生活4WDの域を超え、加減速やコーナリングでの姿勢安定にも用いられる。メカニカル式では一つのモーターの出力を前後に振り分けていたが、電動式ではリアモーターの出力が加わるのでパフォーマンスも上乗せされることになる。

 e:HEVは操る喜びの拡大にも取り組んでいるが、次期プレリュードに先行搭載されるのがHonda S+ Shiftだ。2020年発売のフィットから、車速とエンジン回転数が連動してあたかも有段ギア車のようなフィーリングになるリニアシフトコントロールを採用しているが、これをさらに進化させ、ASC(アクティブサウンドコントロール)とも組み合わせる。

電動4WDユニット搭載車では、コーナーでの安定性や旋回力も向上している

 次期型e:HEVと電動4WDユニットを搭載した開発車両のヴェゼルと現行ヴェゼルを乗り比べたところ、コーナーでの安定性および旋回力が高まっていることを確認できた。とくにタイトコーナー立ち上がりでアクセルを踏み込んでいったときにリアにも強い駆動力がかかって素早く旋回していけるのが気持ちいい。50kW級なので速度があがっていくと効きが実感できなくなっていくだろうが、日常域では有効だろう。

 今回もっとも楽しめたのがプレリュード・プロトタイプだ。

 Honda S+ Shiftはリニアシフトコントロールと同じように疑似的なシフトアップ・ダウンをするが、それが全領域に広がるとともに、シフトショックまで再現している。コンフォート、GT、スポーツとドライブモードが設定され、さらにS+のボタンが別にある。

 そのボタンを押して走らせるとエンジン音がASCで増幅されて迫力のあるサウンドになるとともに、アクセルを踏み込んでいけばDCT(デュアルクラッチトランスミッション)のように心地いいシフトフィーリングになる。ブレーキングで減速していけばシフトダウンもブリッピングを伴いながら自動的に行われる。パドルによる任意のシフトチェンジも可能だ。

プレリュード・プロトタイプ

 e:HEVで操る喜びを拡大しようとしたときに壁となるのが、ある程度以上の負荷がかかっているときにアクセルオンしても、望んだ出力が出てくるまでに時間がかかることだ。

 モーターの電力はエンジン発電と駆動用バッテリーから供給されるが、後者はバッファ的なものでそれほど容量がない。だから一定以上の出力が求められたときにはエンジン発電が必要になるのだが、エンジン回転があがらないと大出力が出せないので、そのタイムラグがスポーツドライビングでは気になるのだ。

 これは自分も2020~2023年までフィットe:HEVで、2023年からシビックe:HEVで参戦しているJoy耐というレースで痛感しているもので、レースカーはアクセルオフでもエンジン回転数を高めに保つことで解決している。

 ただし、燃費にもフィーリングにも良くはないので市販車では実現不可能かと思っていたが、プレリュードではスポーツモードを選択すると、レースカーほどではないもののある程度のエンジン回転数を保つよう設定されていた。

 その恩恵は小さくなく、比較用に試乗した現行シビックe:HEVではコーナー立ち上がりでアクセルを踏み込んでもなかなか望んだ加速が得られずにヤキモキさせられたところ、プレリュードは素早い加速をみせた。FFでそれなりにパワーがある場合、イン側が空転しがちだがブレーキ制御によって防がれていてトラクションも強力だ。

 じつはJoy耐の活動はプレリュードの開発陣とコラボレーションしていてスタディの場でもあったのだが、レースカーで得られたノウハウが市販車に応用されたのだ。

プレリュード・プロトタイプ

 FFのスポーツカー、スポーティーカーとしてはシビック・タイプRがもっとも上位にあるが、モーター駆動のレスポンスと大トルクが得られるプレリュードは、タイプR以上に強烈な立ち上がるをみせる場面もある。さらに、フロントサスペンションはタイプRと同様のデュアルアクシスストラットとなっているので旋回能力も高く、想像以上に操る喜びは高かった。2025年初頭の東京オートサロンで発表される予定で、市販車に乗れる日も近いはずだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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