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更新日:2021.11.26 / 掲載日:2021.11.05
マツダのCo-Pilot Conceptを体験する【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●マツダ
マツダが2022年から導入を始めるラージ商品群で展開する「MAZDA Co-Pilot Concept(マツダ・コ・パイロット・コンセプト)」。自動運転技術を用いた次世代型の安全装備だが、飛行機の副操縦士であるCo-Pilotと名付けたのは「いつもそばで見守ってくれる、頼れるあなたのパートナー(理解者)」という意味を込めたのだという。そもそもマツダの自動運転技術に対する考え方は、他とは違っていて、クルマは走って楽しむものであり、あくまで人間中心。ドライバーの走る歓びを最大限に引き出すクルマ造りを貫いたうえでCo-Pilot Conceptが見守り、万が一のときには自動運転技術で安心・安全をサポートするというものだ。
2022年に「1.0」を2025年にはさらに高機能な「2.0」を市場投入する予定

交通事故による死亡重傷者は年々減っているが、その一方で居眠りや疾患などに関する事故は増加傾向にあり、対策が求められている。Co-Pilot Conceptはドライバーの状態を検知し続け、正常に運転しているときには、裏で仮想運転しつつ、ドライバーが運転を続けられないなど異常を検知したら、即座にシステムが運転して安全に停止する。たとえば世界初の自動運転レベル3を実現したホンダ・レジェンドではシステム稼働中に何らかの要因でドライバー側へ運転を移そうとしたときに、ドライバーが応えなかったら、減速して安全に停止する機能があるが、Co-Pilot Conceptは常時ドライバーの状態を検知し、高速道路でも一般道でも異常があればシステムが稼働するという点が違う。
今回はテストコースで体験試乗。高速周回路を80km/hで運転しながら、突然意識を失った想定で助手席側に倒れ込んだ。ステアリングやペダルの操作も放棄した状態だ。
すると約3秒後には「ドライバーの異常を検知しました」とメーターやディスプレイに表示され、音声では「ドライバーの異常を検知したので安全な場所に移動します」と流れ始めた。それと同時に、外部へ異常を伝えるため、ホーンを鳴らし、ハザードを点滅させる。車速は高速道路の最低速度である50km/hで移動しながら車線変更、さらに非常停止帯へ停車し、ドアロックを解錠した。「車線変更します」「減速します」「安全な場所に移動します」「ヘルプネットに接続します。外に出る時は周りにご注意ください」などのアナウンスもディスプレイ表示や音声でなされるが、これはCo-Pilot Conceptのシステムがどのように働いているかを同乗者に伝えることで慌てないようにするため。音声は頼りがいのあって落ち着いている男性のものとなっていた。
一般道の想定ではワインディングロードを60km/hで走りながら、やはり助手席側に倒れ込むと同じようにCo-Pilot Conceptが立ち上がる。約60秒間のうちに安全な場所を探して停止するということで、今回はやはり非常停止帯にとまった。
Co-Pilot Concept は2022年から展開が始まる1.0と2025年展開予定の2.0がある。2.0 ではダイナミックマップ(3次元高精度地図データ)を搭載し、センサー類も多いので(試乗した試作車は既販のものに加えてえカメラ12個が追加されている)、安全な場所を地図データから探して、非常停止帯退避までできるが、1.0では既販ベースのアップデートなので同一車線での停止および路肩への退避にとどまる。
また、1.0ではドライバーの異常を検知しているが、2.0では異常の予兆を検知するよう開発が進められている。人間をとことん研究することで走る歓びを高めようとしてきたマツダは、自動運転技術を用いた安全装備でもそれを貫くわけだ。

執筆者プロフィール:石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】は週刊連載です。どうぞお楽しみに!