Kawasakiが作った電動化自転車の可能性【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

車のニュース [2021.11.26 UP]

Kawasakiが作った電動化自転車の可能性【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●郡大二郎

 川崎重工の社内公募制度、ビジネスアイディアチャレンジの第一号案件として選定された電動3輪ビークル「noslisu(ノスリス)」。プロジェクトリーダーの石井宏志氏はkawasakiのモーターサイクル(オートバイ)のエンジニアだったが、より多くの人に自由で気軽なモビリティを提供したいという思いから、kawasakiの技術やノウハウを生かした同モデルを開発したという。

転倒のリスクが少なく、電動アシストまたはフルEVで走行する「ノスリス」

ノスリス

 前2輪とすることで安定性が高く、転倒のリスクが少ないノスリスは、気軽に乗れる電動アシスト自転車仕様(27万円)と、スロットルレバー操作で力強く走ってくれるフルEV仕様(32万円)の2種類を用意。後者は水色ナンバープレートの原付ミニカーで要普通免許。ヘルメットは不要だが、メーカーは着用を強く推奨している。

 2021年5月には、それぞれ50台づつをクラウドファンディングサイト(応援支援サービス「Makuake」)で販売したところ、即日完売と予想以上の反響があったそうだ。

低コストで安定性の高い走りを実現。高齢者の移動手段としても可能性がある

独自のフロントリンク機構により転倒しづらく、空車・乗車状態でも自立する

 実際に試乗させてもらったところ、両車とも安定感が高く、とくに電動アシスト自転車仕様はペダルを漕いで走り始めればアシストが効いて楽に加速していける自然なフィーリング誰にでも乗りこなせそうだという印象だった。一方のフルEV仕様は少しだけ慣れる必要があるものの、特性を知るほどに身体にフィットしていく感覚があって楽しかった。こちらにもペダルは付いていて電気の力を借りなくても走れるのに加えて、モーター以上のパワーで漕いでいけば、モーター走行+αの加速や速度が出せる。電動アシストは人間主体でモーターがアシストなのに対して、フルEV仕様はモーター主体で人間がアシストと逆の立場になるのも面白い。また、フルEVで走らせているけれど、カーブを曲がるときにはペダルを操作したほうが安定感が得られるのも興味深いところだった。

 フロント周りなどを一見すると凝ったメカニズムに思えるが、モーターサイクルでの経験・知見をもとに、コストはあまりかけずに高い操縦性を実現する独自のリーニング機構を採用。ほとんど転倒することはなく、空車、乗車いずれの状態でも自立するので、スタンドなどはなしに駐車することも可能になっている。

11月21日に神戸・旧居留地で開催された「EV:LIFE KOBE(主催:ル・ボラン)」というイベントではノスリスのブースに試乗希望の人が列をなしていた。老若男女とわず興味を惹いていたようだが、高齢の方も乗ってみたいと思う人が多いようだ。

じつは、石井氏は町で出会った高齢者から聞いた「家族のところに駆け付けたいときに一人で気軽に乗れる乗り物がない」という声が開発のきっかけだったとも言う。

 高齢者ドライバーによる自動車の交通事故は社会的な課題ともなっていて、運転免許の自主返納の是非が問われているが、一方で運転を止めてしまうと日々の移動に不自由するだけではなく、老いが一気に進むとも言われている。運転すること自体が健康維持に役立っている面もあるのだ。もちろん、運転に自信がなくなってきたら止めるべきだが、免許返納前にノスリスのフルEV仕様を試してみるのもいいかもしれない。楽に走れて転倒のリスク、重大事故のリスクは少なく、それでいて体幹は鍛えられるし、ペダルを漕いで走らせれば体力・筋力が回復して、自動車の運転ができるまで復活するかもしれない。あるいは自動車がなくても、ノスリスで移動の自由を手に入れられれば、満足度の高い生活を送れることだろう。

 現在のところノスリスは、クラウドファンディングの追加募集や一般販売の予定はないが、要望が多いため一般販売を目指しているという。進展があり次第、公式ホームページ(外部サイトへのリンク)で報告されるとのことだ。

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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