パーツ取付・交換
更新日:2025.07.31 / 掲載日:2018.10.22
タイヤ交換にトルクレンチは必要?おすすめ商品や使い方を丁寧に紹介

タイヤ交換では、ホイールナットを適切な力で締めることが、安全運転を支える重要なポイントです。
ナットの締め付けが弱すぎると走行中にタイヤが外れたり、強すぎるとボルトやナットが破損したりする可能性があります。いずれも重大事故の原因となるため、正確で均一な締め付けが必要です。
そのために使いたいのが「トルクレンチ」という専用工具です。
そこでこの記事では、トルクレンチの必要性や選び方、初心者向けのおすすめ商品、正しい使い方までを丁寧に解説します。安心して作業に取り組めるよう、ぜひ参考にしてください。
1. タイヤ交換に使うトルクレンチとは

タイヤ交換を安全かつ確実に実施するには、ホイールナットを規定トルクで締めることが重要です。その作業に欠かせないのが、トルクレンチという専用工具です。
トルクとは、一言でいうと「ネジを回す力の強さ」のことです。トルクは弱すぎても、強すぎてもいけません。
タイヤ交換時にも、車種ごとに定められた規定トルクで、ホイールナットを締める必要があります。
ここでは、トルクレンチの基礎知識と必要性についてご紹介しましょう。
(1) タイヤ交換用のトルクレンチの基礎知識
トルクレンチとは、ホイールナットを規定トルクで正確に締め付けるための専用工具です。
タイヤ交換に限らず、自転車・バイクの整備や機械の組み立てなど、幅広く使われています。設定したトルクで締め付けできるため、ナットの緩みやボルトの破損を防ぎ、整備の精度を高めてくれます。
ただし、トルクレンチは設定したトルクで締め付ける工具です。ナットを緩めることや、すでに規定トルク以上に締まっているナットには使えません。
(2) トルクレンチは本当に必要?
一部では、「タイヤ交換にトルクレンチはいらない」といった声もありますが、正確にホイールナットを締め付けるためには欠かせない道具です。
なぜなら、ホイールナットの締め付けが強すぎるとボルトが破損、逆に弱すぎると走行中にナットが緩み、タイヤが脱落する危険性があるからです。
実際、国土交通省によれば2002年から2022年までに1,188件の車輪脱落事故が発生しており、とくに冬タイヤへの交換後はトラブルが増えやすくなっています(参照:点検整備不十分・整備作業ミスに起因する事故|国土交通省)。
その多くがトルク管理の不備によるものでした。
このような背景から、整備工場や専門店では作業後にトルクレンチを使って確認するのが通例です。ナットの締めすぎによるボルトの破損や、緩みによる脱輪を防ぐため、複数人によるダブルチェックが徹底されている店舗もあります。
そのため、トルクレンチは「あると便利」ではなく、「安全のために必ず使うべき」道具だといえます。
2. トルクレンチを選ぶうえで重要なポイント3つ
トルクレンチにはさまざまな種類があり、機能や使いやすさも製品によって異なります。
そのため、安全かつスムーズにタイヤ交換するには、車や作業スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
ここでは、トルクレンチを選ぶうえで重要なポイントを3つご紹介します。
(1) トルクレンチの種類から選ぶ
まずは、基本となるトルクレンチの種類について理解しておきましょう。
製品ごとに通知方式や操作性が異なるため、特徴を把握しておくことで選びやすくなります。
① シグナル式トルクレンチ
トルクレンチの代表的なタイプのひとつが「シグナル式トルクレンチ」です。
あらかじめ設定したトルク値に達すると、「カチッ」という音や軽い振動で知らせてくれるため、誰でも簡単に扱えます。
シグナル式には2種類あり、それぞれ以下のような特徴があります。
プレセット型
設定範囲内で自由にトルク値を調整でき、締め付け完了時には音や振動で知らせてくれる
単能型
あらかじめ決まったトルク値に固定されており、誤設定する心配がない
② 直読式トルクレンチ
もうひとつのタイプが「直読式トルクレンチ」です。目盛やディスプレイを見ながら、リアルタイムで締め付けトルクを確認できるのが特徴です。
主な種類として、プレート型・ダイヤル型・デジタル型があります。
プレート型
アナログ目盛りと針でトルク値を読み取るシンプルなタイプ。摩耗が少なく長持ちしやすい
ダイヤル型
ダイヤル式の目盛りと針でトルクを測定する。変形量が少ないため疲れにくく、正確に測定できる
デジタル型
トルク値が液晶表示されるタイプで、初心者にも扱いやすい仕様になっている
(2) トルク値の設定範囲から選ぶ
タイヤ交換に必要なトルクは車種によって異なるため、対応トルク範囲を確認してトルクレンチを選ぶ必要があります。
目安は以下のとおりです。
| 種類 | 推奨トルク値の目安範囲 |
|---|---|
| 軽自動車 | 約80~100N・m |
| 普通自動車 | 約100~120N・m |
適切なトルクで締めることで、ナットの緩みや締めすぎによる事故を防げます。車に合ったトルク値をカバーできる製品を選びましょう。
(3) トルクレンチの使いやすさで選ぶ
トルクレンチを選ぶ際は、「自分にとって使いやすいかどうか」も重要な判断基準になります。
高機能な製品でも、使いづらければ作業しづらく、タイヤ交換に余計な手間がかかる原因になります。
トルクレンチを選ぶ際は、以下のような点をチェックしましょう。
・トルク値の設定がスムーズにできるか
・重量が軽く、作業中に疲れにくいか
・握りやすいグリップで力をかけやすいか
一方、以下のような特徴があると作業効率を損ないます。
・トルクの設定に手間がかかる
・本体が重くて扱いづらい
・手にフィットせず、力が入りにくい
タイヤ交換は季節ごとの履き替えやパンク修理のための脱着など、意外に頻度の高い作業です。無理なく使える1本を選ぶことで、作業効率と安全性が高まります。
3. 初心者におすすめのトルクレンチ5選
初心者におすすめのトルクレンチを5つご紹介します。
これらの製品は、操作が簡単なのに精度が高く、タイヤ交換や日常のメンテナンスに最適です。
(1) SK11|デジタルトルクレンチ SDT4-135

この商品は、デジタル表示で直感的に操作できる高性能トルクレンチです。設定トルクに達するとブザー音とLEDで知らせてくれるため、締めすぎや緩みを防げます。
測定範囲は6.8〜135N・mと普通車のタイヤ交換に最適で、右ネジ・左ネジの両方向に対応。単位換算機能やオートスリープ、ピークホールドモードなども搭載しており、初心者から中級者まで安心して使用できる一本です。
| メーカー | SK11 |
|---|---|
| 種類 | デジタル |
| 測定範囲 | 6.8~135N・m |
(2) TONE|プレセット型トルクレンチ T4HC140

この商品は、自動車のホイールナットに適した締付け専用トルクレンチです。対応トルク範囲は40~140N・mと一般的な普通車にぴったりです。
適度な全長で力をかけやすく、作業時の干渉も抑えられる構造。さらに、ゴミやホコリの侵入を防ぐゴムリングや、安心して使える校正証明書付きで、信頼性も備えています。
| メーカー | TONE |
|---|---|
| 種類 | プレセット |
| 測定範囲 | 40~140N・m |
「プレセット型トルクレンチ T4HC140」の公式販売ページ(Amazon)
(3) 大橋産業|トルクレンチ6pcセット

この商品は、30~180N・mの広い設定範囲に対応する、ホイールナットの締め付け作業に最適なプレセット型トルクレンチです。軽自動車からSUVまで幅広く活用できます。
薄型ディープソケット(17・19・21mm)や150mmエクステンションバーが付属しており、アルミホイール装着時の作業性も良好です。トルク設定のずれを防ぐロック機構や、持ち運びに便利なブローケース付きで、初心者にも扱いやすい設計となっています。
| メーカー | 大橋産業 |
|---|---|
| 種類 | プレセット |
| 測定範囲 | 30~180N・m |
(4) エマーソン|トルクレンチ

この商品は、タイヤ交換に必要な機能を備えたプレセット型トルクレンチです。
40~200N・mのトルク設定が可能で、グリップ下のロックつまみを回すだけで簡単に操作できます。
14/17/19/24mmソケットに加え、薄口ロングソケットやエクステンションバーも付属しており、アルミホイールやオイル交換など幅広い作業に対応します。
高トルクにも耐える頑丈な設計で専用ケース付き、収納や持ち運びも快適です。
| メーカー | エマーソン |
|---|---|
| 種類 | プレセット |
| 測定範囲 | 40~200N・m |
(5) アストロ|1/2DR デジタルトルクレンチ DTQ034

この商品は、設定トルクに達すると音と振動で知らせてくれる高機能モデルです。
正ネジ・逆ネジの両方向に対応し、ピークホールド機能や180°回転可能な操作パネルも搭載。測定器としても使用でき、直読式に近い精度を持ちます。
トルク設定は27.0~210.0N・mと幅広く、12.7mm差込角でさまざまな車種に対応可能です。コンパクトながら実用性が高く、収納ケースも付属しています。
| メーカー | アストロ |
|---|---|
| 種類 | デジタル |
| 測定範囲 | 27.0~210.0N・m |
1/2DR デジタルトルクレンチ DTQ034」の公式ページ
「1/2DR デジタルトルクレンチ DTQ034」の公式販売ページ(Amazon)
4. タイヤ交換でトルクレンチを使う手順

初心者でも安全にトルクレンチを扱えるよう、タイヤ交換時の基本操作と作業の流れをわかりやすく解説します。
(1) トルクレンチの基本操作
まずは、トルクレンチ(プレセット型)の基本的な使い方を確認しましょう。以下の手順で操作します。
1. ロックを解除する
2. 車種に合わせてトルク値を設定する
3. 設定後、再びロックをかける
4. 先端にナットのサイズに合ったソケットを装着する
5. ホイールナットを締め、「カチッ」と音が鳴ったら止める
「カチッ」という音と軽い手ごたえがあれば、設定したトルクに達した合図です。音が鳴ったあとにさらに力をかけると、締めすぎになる恐れがあるため、それ以上は締めないようにしましょう。
(2) トルクレンチの使い方(タイヤ交換の流れ)
基本操作がわかったら、実際の交換手順を確認していきましょう。
なお、作業に自信がない場合は無理せず、整備業者に依頼することを強くおすすめします。
① 車を安全な場所に停車
平坦で交通量の少ない場所を選び、AT車はPレンジ、MT車は1速に入れてサイドブレーキをかけます。この時点でホイールナットを少し緩めておくと、あとの作業がスムーズです。
② ジャッキアップ
車体のジャッキポイントにジャッキをかけて慎重に持ち上げます。ジャッキスタンドを併用すれば、作業中の安定性が高まります。
③ タイヤを取り外す
ホイールナットを外し、タイヤを慎重に取り外します。取り外したナットは無くさないように保管し、安全対策として外したタイヤを車体下に置くと安心です。
④ 新しいタイヤを仮締め
タイヤを装着し、手でナットを取付け、その後クロスレンチなどで軽く仮締めします。本締めは地面に下ろしてからです。
⑤ 車を下ろして本締め
ジャッキをゆっくり下ろし、車体が地面に接地したら、トルクレンチでホイールナットを対角順(クロス)に本締めします。「カチッ」と音が鳴った時点で、設定したトルクでの締め付けが完了です。
なお、タイヤ交換のくわしい手順や必要な道具については、以下の記事でも紹介しています。
5. トルクレンチを使う際の注意点
トルクレンチは精密な工具のため、誤った使い方をすると締め付けミスや故障の原因になります。安全な作業のために、以下のポイントに注意しましょう。
必ず「カチン」という音(手ごたえ)がするまで締める
これは設定トルクに達した合図で、それ以上締めてはいけません。
力任せに何度も締めない
トルクレンチは「正確に締める」ための工具であり、「強く締める」ためのものではありません。
ボルトやナットを緩める用途には使わない
精度が狂う原因になります。緩める際は別の工具を使いましょう。
最後の本締めで使う
仮締めをしたあとに、トルクレンチで正しくトルク管理するのが正しい流れです。
使用後は丁寧に保管する
精度を保つため、使用後は設定トルクをゼロに戻し、ケースに入れて湿気の少ない場所で保管してください。
6. タイヤ交換に関することはグーネットピットにお任せください
タイヤ交換では、トルクレンチを正しく使うことが、安全走行において欠かせない作業のひとつです。ナットの締めすぎや緩みは、重大なトラブルの原因になるため、必ず適切なトルクで締め付けましょう。
とはいえ、初めて作業する人や道具に不慣れな人にとっては、作業自体が不安に感じるでしょう。そんなときは、プロの整備士に任せるのが一番安心です。
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