新車試乗レポート
更新日:2022.05.23 / 掲載日:2022.05.06

マツダ・CX-60先取り試乗!

マツダ・CX-60に搭載されるラージ商品群技術の、欧州仕様プロトタイプのテストコースクローズドインプレッションをお届けしよう。今回はe-SKYACTIV PHEVとマイルドハイブリッド付き3.3ℓディーゼルのe-SKYACTIV Dに試乗。その驚きの進化に迫る!

●文:山本シンヤ ●写真:マツダ(株)

遂にプロトタイプに乗った! マツダ・ラージ商品群の素性とは!?

発売までにマツダらしさを
プラスした走りへの進化に期待!

 マツダのラージ商品群第1弾となる「CX-60」が日本で正式発表。すでに発売中のスモール商品群と共にマツダの将来を担う重要なプロダクトとなるが、一足先にプロトタイプに試乗してきた。
 まずは注目の直列6気筒3.3ℓディーゼルターボ(254PS/550Nm)+48Vマイルドハイブリッド(12.4kW/153Nm)
からだ。
 走り始めはスペックほどのトルク感はないが、2000rpmを超える辺りからグッと力が湧き出てくる。そこから高回転まで軽快さはないが滑らかに回るフィーリングは重厚でジェントル。サウンドはディーゼルのビートは感じないと言えば嘘になるが、濁音が圧倒的に少ない音質なのでノイジーではなく逆に心地よさも感じる。
 減速時のエンジン停止やEV走行(ごく僅かだが)も可能だが、肝心のモーターアシストはあまり恩恵は感じられず……。個人的には1000〜2000rpm付近はもう少し積極的にアシストさせたほうが実用域のドライバビリティはより高まると思った。
 直列4気筒2.5ℓNA(191PS/261Nm)+プライグインハイブリッド(129kW/270Nm)はどうか?
 MIドライブ・ノーマルではバッテリー残量がある時は基本EV走行だが、ドーピング的な力強さはなくドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく印象。EV航続距離は61〜63㎞だが、街中走行中心なら”ほぼEV”として使えるはず。
 アクセル開度が増えるとエンジンは始動するがモーターとエンジンの連携もスムーズだ。ただ「システム出力327PS/500Nmを感じられるか」と言われると…。あくまでもパワートレーンは黒子で粛々と走ると言った感じである。
 しかし、MIドライブ・スポーツを選ぶとキャラクターは激変。PHEVにもかかわらずエンジンは常時始動状態でメーターも赤基調で専用表示(エネルギーメーター→タコメーター)に変更されるなど、やる気満々だ。
 アクセルをグッと踏み込むと思わず「おーっ、速い」と声に出てしまうくらいの加速力で、システム出力を実感。ただ、電動車に多い瞬時に力が湧き出るような力強さではなく、電動ターボのような伸びのある力強さで、かなり内燃機関寄りのフィーリングである。
 どちらのパワートレーンもトルクコンバーターレスで動力伝達にクラッチ機構を組み合わせた8速ATを組み合わせるが、共通しているのは「滑らかなDCT」のようなフィーリングとアクセルを踏んだ時のダイレクト感、そしてシフト時の小気味よさ。実は渋滞時のようにゆっくりと走るシーンでは僅かに駆動の繋がりなどにギクシャク感が残ったが、そこは開発陣も認識しており市販時までには解決してくれるはずだ。
 フットワークはどうだったのか? 今回は新規開発と言うことで慣性重量配分/エネルギーコントロールボディ/サスペンション最適設計など、飛び道具には頼らない基本に忠実に造り込まれたボディ/シャシーになっている。
 その印象はノーズの素直な入り方、前後バランスの良さ、駆動のかかり方と言った縦置きFRレイアウトの長所はもちろん、足の動きやロールのさせ方、4つのタイヤの働かせ方といったコーナリング時の一連のクルマの動きがとにかく自然。例えるなら体の筋肉の緊張が解け、楽に動くようになったようなスムーズさだ。決してシャープではなく穏やかな動きながらも一体感が高い走りは、もはやクロスオーバーを超えて、プレミアムセダンに近いレベル。
 ちなみに鼻先に若干重さを感じるが軽快で素直な動きのディーゼル、ドシッと構えるが意外とフットワークが軽いPHEVと、素性の違いのよる差は若干感じたものの、走りの方向性に違いはない。
 乗り心地は比較的フラットな路面が多かったので断定はできないが、路面のアタリの良さやザラザラ/ビリビリ感の少なさ、更に「シュッ」と抑え込むのではなく「スッ」と入力を逃がすような吸収のさせ方など、バネ上の姿勢変化がより少なく、体全体のブレも少ないように感じた。この辺りはハンドリングと同じで、より無理なく、より自然な足の動き、クルマの挙動になっている証拠だ。
 そろそろ結論に行こう。このようにCX-60の基本素性の良さは、世界のクロスオーバーの中でもトップレベルに位置すると思っている。ただ、現状は「澄んだ水」のような感じでマツダらしい「味」を感じるかと言われると……。正式発売までまだ時間があるので、澄んだ水を活かした「美味しい出汁」のようなクルマに仕上がっていることを期待したい。

欧州仕様プロトタイプ e-SKYACTIV PHEV

電動ターボのような伸びのある力強さで、走りの愉しさを忘れないPHEV

■主要諸元(欧州仕様プロトタイプ e-SKYACTIV PHEV) ●全長×全幅×全高(㎜):4740×1890×1691 ●ホイールベース(㎜):2870 ●トレッド前/後(㎜):1637/1637 ●パワートレーン:2488㏄直4DOHC(191PS/261Nm)+電機駆動モーター(129kW/270Nm)※システム総出力(327PS/500Nm) ●駆動方式:4WD ●トランスミッション:8速AT ●燃料タンク容量:58ℓ(ガソリン) ●サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン/フルマルチリンク ●ブレーキ:前/ベンチレーテッドディスク、後/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:235/50R20 ●最高速度(㎞/h):200 ●0-100㎞/h(秒):5.8 ●EV走行航続距離(㎞):61〜63
車体右側後方に配置されるPHEVシステムの給電コネクター。欧州仕様プロトタイプはAC普通充電のみ。おそらく日本仕様も変わらないはず。コネクターカバーは車格を考えると、写真のキャップ式ではなく、カバー式の方が好ましく感じた。
CX-5やCX-8に搭載している2.5ℓ直4エンジンをベースに吸排気チューンを行い、大きなモーターと17.8kWhのバッテリーと組み合わせたe-SKYACTIV PHEV。EV走行距離は欧州仕様プロトタイプで61〜63㎞。
e-SKYACTIV PHEVはバッテリーを床下に配置することで、低重心化を達成。ラゲッジスペースにも余計な張り出しがなく、ガソリン車と同等のスペースが確保されている。
なんと自社開発の新開発トルコンレス8速AT。トルコンをクラッチに置き換えることでエンジンやモーターのトルクをダイレクトに伝え、MT車のようなリズミカルな変速を実現している。
全グレードで各部のボディ剛性を見直し、操作に対して遅れなく動きを正しく感じ取れるように剛性要素の繋がりを全体でスムーズ化。他にもステアリングフィードバックやボディ・シートフィードバックも進化させている。
走行中まるでスポーツカーのようなエンジンサウンドを奏でる2.5ℓ直4エンジン+モーターのe-SKYACTIV PHEV。モーター走行からエンジンパワーが加わる瞬間にトルク感のある音に切り替わる。
大きなセンタートンネルが特徴のインテリア。大型FRベースSUVらしい造形で、どっしりとした座り心地が特徴。「PREMIUM SPORTS」グレードと思われる本革シート仕様。厚みのある形状でホールド感が高い。

欧州仕様プロトタイプ e-SKYACTIV D

低回転からグッと力が湧き出し、滑らかに回る3.3ℓe-SKYACTIV D

■主要諸元(欧州仕様プロトタイプe-SKYACTIV D) ●全長×全幅×全高(㎜):4740×1890×1691 ●ホイールベース(㎜):2870 ●トレッド前/後(㎜):1637/1637 ●パワートレーン:3283㏄直6DOHCディーゼルターボ(254PS/550Nm)+電気駆動モーター(12.4kW/153Nm) ●駆動方式:4WD ●トランスミッション:8速AT ●燃料タンク容量:58ℓ(軽油) ●サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン/フルマルチリンク ●ブレーキ:前/ベンチレーテッドディスク、後/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ:235/50R20 ●最高速度(㎞/h):180 ●0-100㎞/h(秒):7.3 ※最高出力と最大トルクは日本仕様社内測定値。
欧州向けには3.0ℓ直6e-SKYACTIV Xエンジンがラインナップされているが、日本向けはPHEV、3.3ℓ直6ディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッド、3.3ℓ直6ディーゼルエンジン、2.5ℓ直4ガソリンエンジンの4タイプをラインナップ。
縦置きFRレイアウトを採用した理由は、エンジン/モーター/トランスミッションを同軸上に搭載することで、さまざまなエンジンとモーターの組み合わせが可能な点としている。
マツダ初の後輪駆動ベース電子制御多板クラッチ式AWDを採用。低μ路走行はもちろん、高速走行やワインディング走行のハンドリング性能もこれまでの前輪駆動ベースと比較し、大幅に向上している。欧州向けにはなんとFR仕様もあり。
スポーツカーのようにタイトでもなく、本格クロカンのように緩さもない、適度にタイトなコックピット。1890㎜の車幅を感じさせない、優れた着座姿勢をとることができる。
内装と同じく、アルミホイールもオーソドックスなデザインの10本スポーク。それでもタイヤサイズは235/50R20。20インチというサイズのタイヤを履くが、ドタバタした感覚はなく、フラットな乗り心地を実現していた。
従来の2.2ℓから3.3ℓへの排気量拡大とリーン燃焼可能な運転領域を拡大することで、高出力と低燃費を両立したディーゼルエンジン。6気筒エンジンながら4気筒並みの重量でハンドリング性能の向上にも貢献。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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