新車試乗レポート
更新日:2023.03.29 / 掲載日:2023.02.28

【マツダ CX-60】3.3Lディーゼルと最上級PHEVを乗り比べ

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス
 マツダの新ミッドサイズSUV「CX-60」は、新たな上級車向けラージプラットフォームによるFRレイアウトが大きな特徴だ。これにより長きに渡り、ライトウェイトオープンスポーツカー「ロードスター」以外のFR車の誕生となった。因みに、国内最後の上級FR車は、フラッグシップセダン「センティア」で、2000年で生産及び販売を終了。実に、22年振りの復活となる。

多彩なパワートレインを用意する上級SUV

 そんなCX-60の特徴のひとつが、多彩なパワートレインだ。エントリーとなる自然吸気仕様の2.5L直列4気筒ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」から、マツダお得意の3.3L直列6気筒クリーンディーゼルターボエンジン「SKYACTIV-D 3.3」、同エンジンにモーターを追加し、専用チューニングを施した48Vマイルドハイブリッド仕様の「e-SKYACTIV-D3.3」、2.5L直列4気筒ガソリンエンジンに、高出力モーターと駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載したマツダ初のプラグインハイブリッド(PHEV)の「e-SKYACTIV PHEV」の4タイプが選べる。トランスミッションは、全車8速ATが組み合わされる。

 今回のレポートでは、クリーンディーゼル「SKYACTIV-D 3.3」とプラグインハイブリッド「e-SKYACTIV PHEV」についてお届けする。

3.3L直6ディーゼル+後輪駆動の「XD Lパッケージ」を試乗

 まずはマツダが得意とするクリーンディーゼルから。CX-60が初搭載となる新開発の3.3L直列6気筒DOHC直噴ターボエンジンは、従来のディーゼルフラッグシップの知見を活かし、開発されたもの。3.3Lという排気量は、中途半端に映るかもしれないが、これはマツダがハイパワーディーゼルエンジン向けに理想とする、1シリンダー当たり、0.55Lの排気量としたため。

 これまでのフラッグシップエンジンである「SKYACTIV-D 2.2」は、4気筒なので、2.2Lとなるわけだ。新エンジンは、ノンアシストのピュアエンジン「SKYACTIV-D 3.3」と48Vマイルドハイブリッドエンジン「e-SKYACTIV-D 3.3」がある。マイルドハイブリッド版はモーターアシストによる発進加速の良さや燃費向上が図られ、エンジン性能自体も向上されており、よりパワフルで低燃費であることが魅力となる。しかし、素の「SKYACTIV-D 3.3」も侮れない性能を持つ。何しろ最高出力は231ps/4000~4200rpm、最大トルクは500Nm/1500~3000rpmを誇る。燃費性能だって、19.8km/L(FR)、18.5km/L(4WD)となかなかのもの。マイルドハイブリッドとは、内外装の仕様があるとはいえ、300万円前半からのプライスも魅力的だ。

 因みに、マイルドハイブリッドだと、車両価格が、500万~550円まで引き上げられる。しかし、最も注目すべきは、ピュアエンジン車ならば、4WDだけでなく、FRが選べること。今回の試乗車は、それを実感できる「XD Lパッケージ(FR)」だった。

 FRと4WDの違いは、前輪側の駆動システムが省けるため、それが50㎏の軽量化を生むことにある。しかも前輪側の重量が減るので、走行性能にも変化が生じる。その最大の恩恵は、コーナリングに現れる。フロント重量と駆動力がないことで、よりノーズの入りも良くなり、走りのスポーティさを増す。もっともCX-60の走りは、スポーツ性を意識したものなので、4WDが劣るということは全くない。ただコーナリング時にも、前輪の駆動力を使うので、オンザレールの鋭い走りとなる。FRの持つたおやかな走りとは少し趣が異なるのだ。

 どちらかが優れるというよりも、そこは好みだ。しかし、元々、操作系を重く味付けしているCX-60では、FRの方がステアリングフィールは良く、FRの方が乗りやすいと感じる人もいるだろう。一方で、エンジンについては、モーターアシストのある「e-SKYACTIV-D 3.3」の方が、出だしやエンジンの伸びに勢いがある。

 ただし、そのイメージを変化させるのが、マツダのドライブモード「Mi-Drive」の「スポーツモード」だ。専用チューニングにより、アクセル操作に対するスロットル開度のレスポンスが高められているので、より加速も良くなる。「ノーマルモード」は、燃費と走行性能をバランスさせているというから、ドライブを楽しみたくなるシーンでは、積極的に「スポーツモード」を活用すると良い。因みにロードスターの知見であるコーナリング性能を高める「KPC」は、CX-60にも備わる。よりFRのコーナーが良いと思うのは、その恩恵が強まるからだろう。

フラッグシップモデルに値するPHEVを試乗

CX-60 e-SKYACTIV PHEV

 CX-60のフラッグシップに位置するのが、プラグインハイブリッド「e-SKYACTIV PHEV」だ。2.5Lガソリンエンジンに高出力モーターを組み合わせたものだが、エンジン性能とモーター性能がほぼ同等という、まさにツインエンジンと呼びたくなるモンスターなのだ。それぞれの単体性能を見ていくと、エンジンが、最高出力188ps、最大トルク250Nmとなり、これはエントリーの2.5Lガソリン車「SKYACTIV-G 2.5」と全く同じ。モーター単体が、最高出力175ps、最大トルク270Nmとなり、もちろん、EVモード走行が可能な実力を持つ。搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は17.8kWhとなり、75kmのEV航続距離を備える。充電機能は、200V普通と急速に対応するので、基本的には日常走行を電気で賄うことも可能だ。FRレイアウトなので、モーターはエンジンとトランスミッションの間に収められており、エンジンとミッションの両方にクラッチを備えることで、動力の切替を行う仕組みとなっている。但し、駆動方式は、4WDのみとなる。

CX-60 e-SKYACTIV PHEV

 PHEVは、電池残量がある限り、基本的にはEVモードとなる。但し、アクセルを強く踏み込むとエンジンが瞬時に始動する。エンジンとモーターの融合には違和感もなく、エンジンサウンドだけ。そのサウンドもスポーティにチューニングされているため、心地よくアクセルを積極的に使いたくなるのが、ちょっと悩みどころかもしれない。走りを楽しみたいシーンでは、PHEVでもMi-Driveをスポーツモードにシフト。ハイブリッド走行となり、力が漲る走りとなる。エンジン+モーターによる力強い走りは、日常時のエコカーのイメージとは異なり、刺激的なもの。シリーズでは最も重量級となるPHEVだが、4気筒エンジンとなるため、搭載位置はフロントミッドシップを実現している。このため、コーナリングは、6気筒モデルよりも気持ちよく感じるシーンもあった。ガソリンエンジンの電動車なので、全体的に静粛性も高く、走行振動もディーゼルよりも抑えられており、快適性でも一歩上回る。またV2LとV2Hに対応するだけでなく、AC1500W電源も装備する。価格は高いが、電動化を武器とした強みを日常からレジャーまで感じられるオールマイティな仕様となっている。

まとめ

CX-60 e-SKYACTIV PHEV

 CX-60は、重厚感のあるスタイリングを持つ上級SUVだが、走りに対して硬派な面があり、重い操作系や硬めの足回りなどセッティングにも、マツダ独自の上級SUVのキャラクターが与えられている。この点は、全仕様に共通することなので、検討時は、その乗り味もしっかりと吟味して欲しい。

 ただクロカン系の匂いが強まるSUV市場の中で、街中でも映えるクロスオーバーSUVという価値を守っていることは、大きな魅力だ。個人的には、新プラットフォームの素性が良いだけに、残された2.5Lガソリン車の存在も気になるところ。今やセダンもSUVにシェアを奪われる時代。PHEVは滑らかな走りと静粛性が魅力だが、ちょっと高価だ。その点でも、大人が街中のドライブを楽しむサルーンの役目には、2.5LガソリンのFR車が良いのではないとの予感がある。残念ながら、まだ試乗可能な車両がないため、その検証はお預けとなる。クリーンディーゼル「SKYACTIV-D 3.3」は、電動化時代の今、最後のピュアなハイパワーディーゼルエンジンとなるかもしれない。それだけに、ディーゼルファンには、チェックして欲しい。しかも、それが300万円前半からという値付けは、ファンサービスといって良いだろう。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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