新車試乗レポート
更新日:2020.06.23 / 掲載日:2019.01.21

【試乗レポート トヨタ マークX GRMN】限定350台! 希少なMT車の実力を試す

文●九島辰也 写真●トヨタ

 なかなかユニークなプロジェクトではないだろうか。1980年代や90年代ならまだしも、SUV全盛の21世紀において、「FRセダンをマニュアルで走らせる!」というモデルの開発が真剣に行われている。それはこのマークX GRMN。サーキット走行を見越したクルマだ。
 この辺の情報に明るい方ならご存知だろうが、マークX GRMNは2015年にもリリースされたことがある。限定100台で。もちろん、すぐに売り切れたが、それは希少性が高いとともにマーケットの小ささを表しているのは確かだろう。
 だが、2019年見事復活した。1月11日から注文を開始、3月11日から全国のGRガレージで発売される。価格は513万円で限定350台。はたして4年という月日の流れはクルマをどれだけ進化させることができたのか。GRレーシング活躍する昨今だけに興味は募る。

新旧比較でわかった新型GRMNの本気具合

 そんな新旧2モデルを同時に試乗できる機会を得た。しかも、場所は千葉にある袖ヶ浦フォレストレースウェイ。つまり、サーキットである。
 では進化の中身だが、まずはボディ剛性を高めている。ドア開口部を中心にスポット溶接打点を追加し、それを具現化した。その数全252箇所に及ぶというから恐れ入る。この恩恵は大きそうだ。しかもレクサスの主力車種をも手がける元町工場での生産というところからも本気さがうかがえる。

 続いてリアデファレンシャルギア比の最適化、それとエンジンとトランスミッションのマッチングをよる高めるため出力制御特性もチューニングし直した。よりクイックな反応を求めるためだ。リヤデフのセッティングは意図してワインディングに合わせたそうだ。
 サスペンションもそう。新開発のショックアブソーバーを採用。スイングバルブ付きのそれはレクサスESに搭載されるものと同じだそうだ。コストがかかっていることが想像できる。タイヤは前後19インチで、リアは扁平率“35”というロープロファイル、ホイールは鍛造のアルミホイールを装着する。

 エクステリアではフロントバンパー、4本出しマフラー、リヤスポイラーなどがボディを飾る。といってもやりすぎ感はなく、それなりに迫力を高めるといったレベルにおさまる。カーボンルーフパネルはオプション。金額は27万円也。

レーシーかつ上質。しっとりした味付けのサスで乗り心地も上等

 では、実際に走らせるとどうなのか。
 結論から言うと、その差は歴然。2015年モデルはオールドスクールな日本的レーシングカーのチューニングで作られているように思えた。つまり、それは足まわりを硬めるのが優先され、それによりコーナーでの限界値は高くなるものの、乗り心地はひどくつねに上下の振動が発生する。
 これに対し新型はスタート直後からクルマの挙動が違う。絶対的な加速はあるものの足はしっとりしていてどの場面でも乗り心地がいい。ヘアピンでの安定感は高く、ドライバーは自分の運転技量が上がった気にもなれるだろう。そのときのマニュアルトランスミッションの操作もそう。ストロークはそれほど変わらないが、スイスイと動かしやすい。2シータースポーツカーではないので、このくらいでかなりスポーティさは感じられるはずだ。

 新型の挙動は欧州車のそれと似ている。複合コーナーやバンピーな路面からのコーナリングで、腕づくでステアリングを抑え込む!なんてことなく、スッとコーナーを駆ることができる。そのときもサスペンションストロークがしっかり効いて、タイヤが跳ねることはない。言ってしまえば、レーシーかつ上質だ。
 とはいえ走り終わると、今となっては2015年モデルの挙動が懐かしくも感じられた。ピットレーンへ戻ってきたとき、「走り終えた」と言う充実感を得たのはこちら。耐久では疲れそうだが、スプリントなら楽しめるかもしれない。

実力を確実に高めているトヨタのスポーツ車開発

 といったところが今回のショートインプレ。新型は乗れば乗るほど懐の深さを体感できそうな気がする。
 それにしても、ここ数年のトヨタ車の走りはこれまでとは違う。その背景にはカンパニー制度から生まれたGRカンパニーの仕事があるに違いない。考えてみれば、2015年モデルはGRカンパニーができる前の産物だ。つまり、その差はあってしかるべき。今や社内オフィシャルのハイパフォーマンスを求める専任チームが存在するのだから。しかも毎年人員はどんどん増えているそうだ。

 となると、今後のトヨタ車のスポーツ系の走りは期待できそうだ。ル・マン24時間レース、WRCの実績がそれを物語っているのは、いうまでもない。


トヨタ マークX GRMN(6速MT)


全長×全幅×全高 4795×1795×1420mm
ホイールベース 2850mm
車両重量 1560kg
エンジン V6気筒DOHC
総排気量 3456cc
最高出力 318ps/6400rpm
最大トルク 38.7kgm/4800rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前/後 235/40R19・255/35R19

販売価格 513万円(GRMNのみ)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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