自動車保険には「ローン一体型」という支払方法もあります。これは、車のローンと保険料の支払いを一括して行えるものです。

支出管理がしやすく、まとめて手続きができる上に保険料を節約する効果なども期待できます。一方で、契約内容の変更や繰り上げ返済をする際の手続きが大変だったり、途中解約すると違約金が発生したりするといったデメリットもあります。

この記事では、ローン一体型の自動車保険の特徴とメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。

自動車保険の一種「ローン一体型」とは?

自動車保険の一種「ローン一体型」とは?
ローン一体型の自動車保険は、特定の自動車販売店から車を購入した際、月々のローンの返済と毎月の自動車保険料の支払いをまとめた形で契約できる保険のことです。

ただ返済額が合計されるだけではなく、さまざまなメリットがあります。特徴的なのは、車両保険を使ってもすぐには保険料が上がらないことや、更新手続きが一般の自動車保険と比べて簡単なことです。

しかし、手続きに手間がかかるといったデメリットもあるので、双方を比較しながら検討する必要があります。

ローン一体型自動車保険について

ローン一体型自動車保険について
ローン一体型の自動車保険は、毎月の自動車ローンの返済額と自動車保険料の2つの支払内容が一緒になったものです。

まずは、その補償内容や契約が可能な対象者、保険期間や注意点などの特徴を見ていきましょう。

ローン一体型自動車保険とは何ですか?
ローン一体型自動車保険は、自動車保険の保険料とローンの支払いを一体化させたものです。通常、自動車保険とローンの契約やその内容変更手続きは完全に別物ですが、一緒にすることで金額を平準化できる点などがメリットです。
ローンと自動車保険の支払いが一体化

ローン一体型の自動車保険は、ローンの支払いと保険料の支払いが一体化したものです。より厳密に言えば、ローン契約に保険料の支払いが組み込まれる形です。

これはクレジット契約を扱っているディーラーと、特定の保険会社が提携することで可能となります。そのため、そのディーラーを通して車を購入した人しか利用できません。

利用するメリットは、ローン支払いと保険料が一緒になっているのに加えて、契約期間は定額なので資金管理がしやすい点が挙げられます。

補償内容は?

ローン一体型の自動車保険の補償内容やその水準は、一般的な自動車保険とほとんど変わりません。

ディーラーが提携している保険会社の数に応じて様々なプランを選ぶことができるので、自分に合った内容のものを選択するといいでしょう。

もともとこのタイプの自動車保険は、新車を購入し、ローンを完済するまで乗り換えずに長期間使い続けたい人向けです。そのため、長期間の契約を視野に入れた補償内容を設定するのがおすすめです。

契約対象者・契約者は?

ローン一体型の自動車保険を契約できるのは、クレジット契約で車を購入した契約者に限られます。その契約先の業者に対して、ローンの返済と保険料の支払いを毎月行うことになります。

より厳密な言い方をすれば、主に車を運転する「記名被保険者」にあたる人と、ローンを契約する「契約者」は同一人物でなければいけません。

例えば、親が子のために車を購入して、ローンの契約者と実際の車の使用者が異なるような場合は、ローン一体型の自動車保険は組めないことになります。

また、主に車を運転する記名被保険者がクレジット契約ができないことが原因で、ローン一体型の自動車保険に加入できないこともあり得ます。

契約者が他のローンを複数利用していたりすると、返済に不安があると見なされてクレジット契約を拒まれることがあります。こうなると、代わりに家族などがクレジット契約を組むということもできません。そのため、ローンと自動車保険の支払いについては、別の方法を考える必要があるでしょう。

契約期間(保険期間)は?

ローン一体型の自動車保険の契約期間(つまり保険期間)は、契約した車両のローンを完済するまでの期間内に限られます。

例えば、3年でローン返済を終える計画になっていれば、契約期間は3年以内となるでしょう。

多くの場合、保険期間は2~5年の範囲内となっています。その期間内でのローン返済計画を立てて同時にローン一体型の自動車保険の契約を結ぶことで、より効率よく毎月の支払額を管理することが可能となります。

支払方法は?

先述した通り、ローン一体型の自動車保険は特定のディーラーから車を購入する場合に加入できます。そのため、毎月の保険料(+ローン返済額)の支払方法も、そのディーラーの取り決めに従って設定することになります。

基本的にはクレジット契約になるので、利息分を含めて銀行口座からの引き落としとなるか、あるいはディーラー独自のクレジット返済となるでしょう。

なお、このタイプの保険では、ボーナス併用などのシステムは存在しません。

契約の一例

ローン一体型の自動車保険の契約の例を見ていきましょう。

例えば、ローンを3年で完済するという内容で契約したら、保険契約も最低2年、最長3年の範囲内で結ぶことになります。前述した通り、この保険の契約期間は2~5年の範囲内というのが一般的だからです。

ここで3年契約を選択すれば、次の保険の満期・更新は3年後となり、その時点でローンも完済するでしょう。そのため、その後はローン一体型ではなく、自動車保険を単体で契約することになります。

その他の注意点

この他にも、ローン一体型の自動車保険の利用に際して押さえておきたい注意点がいくつかあります。

まず契約と納車日の関係です。同保険を契約した場合、契約の開始期日は納車日となるので、そこを起点として満期日までのことを考えていく必要があります。

満期日には、いくつかの条件をクリアすることで、引き続きローン一体型の自動車保険を契約することができるでしょう。その条件は契約先の会社によって異なる可能性もあるのであくまでも一例ですが、おおむね以下のような内容になります。

まず、契約しているローン一体型の自動車保険の払い込みが終わった段階で、クレジット支払いの残り回数が24回以上であることです。また、契約中の保険の満期日を、次の契約の始期日とすることも必要です。

次に、契約している車を引き続き次回も契約の対象とすることなども挙げられます。

条件と言っても特に難しいことはなく、契約者側でよほど大きな変更がなければ問題なく契約継続できるでしょう。

ローン一体型の自動車保険のメリットについて

ローン一体型の自動車保険のメリットについて
ここまでで、ローン一体型自動車保険の補償内容や、実際に契約した場合の契約期間などを見てきました。

次に、それらを踏まえた上でローン一体型の自動車保険を利用するメリットについて解説しましょう。

ローン一体型の自動車保険のメリットは何ですか?
ローン一体型の自動車保険にはいくつかのメリットがあります。保険とローンの各種手続きの煩雑さが軽減されること、支払う金額も一緒になるので管理しやすいこと、事故を起こしても保険料が下がらないことなどがあります。
保険料が安くなる

ローン一体型の自動車保険は、一般的な自動車保険よりも若干保険料が安くなるケースが多くあります。

もちろん極端に安くなるわけではありませんし、契約内容によって多少の差はあるでしょう。

また、そのように安いのは最初の契約期間に限られ、次の更新を迎えるとそれまでと比べて割高になることが多いです。その時にはローン返済が終了しているというケースも多いので、契約内容を再考するいいタイミングになるでしょう。

毎月の支払額を管理しやすい

ローンの支払いと保険料の支払いが一緒になるので、毎月の引き落とし金額の管理がしやすいのもローン一体型の自動車保険のメリットです。

例えば、口座から引き落とされる場合、通常ならローンの返済と保険料の支払いで通帳に2行ずつ記載されるのに対し、この保険は1行で済むことになります。

さらに、1年に一度保険料が変動する一般的な自動車保険と異なり、保険料の変動は数年おきです。長期間に効率的な資金管理が可能となるのも、大きなメリットと言えます。

自動車保険の更新手続きがいらない

一般的な自動車保険の場合、1年ごとに満期が訪れるので、その度に更新手続きが必要です。実際には契約書にサインをするだけなどにとどまりますが、場合によっては更新によって保険料が上がることもあります。

ローン一体型の自動車保険の場合、契約期間は2年以上なので、更新手続きは少なくとも2年ごとになります。また、最初の手続きでも保険会社に足を運んでローンとは別に契約手続きをする必要がありません。こうした手続きの簡便さもメリットと言えるでしょう。

事故を起こしても保険料が上がらない

ローン一体型の自動車保険は、事故を起こして保険を使ったとしても、契約期間内は保険料が上がらないというメリットがあります。

通常の自動車保険の場合、事故を起こすと等級が下がって翌年度から保険料が値上がりしますが、そういったデメリットがありません。

また、通常の自動車保険は1年に一度更新されるので、その間に事故を起こしていたり、交通違反などで免許証の色がゴールドからブルーなどに変わったりすると、保険料が上がります。また、一度等級が下がって保険料が値上がりすると、元の水準に戻るまで時間を要します。

一方ローン一体型の自動車保険は、更新時期が数年に1度であるため月々の保険料は一定額のままです。

初めて自動車を購入する人や増車する人の場合、最初は等級に応じた割引率も低めになることから保険料も高めに感じられるものです。しかし、ローン一体型の自動車保険は、長期の保険料も平準化できるという特徴があります。

相談がしやすい

ローン一体型の自動車保険は、ローンと保険の契約内容について相談したい場合、車を購入したディーラーなどの販売店に相談窓口が一本化されます。とても分かりやすいため、利用者にとっては大きなメリットでしょう。

一般的な自動車保険の場合、保険契約を結ぶ保険会社と、ローンの契約を結ぶ会社は異なるので相談窓口も別です。しかし、ローン一体型の自動車保険なら、ローン、保険、さらに車の点検整備までワンストップサービスで相談することが可能です。

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ローン一体型の自動車保険のデメリットについて

ローン一体型の自動車保険のデメリットについて
ここからは、ローン一体型の自動車保険のデメリットについて解説していきます。

利用する際は、メリットとデメリットを比較して検討するようにしましょう。

ローン一体型の自動車保険のデメリットは何ですか?
ローン一体型の自動車保険のデメリットは、ローンを繰り上げ返済したり、契約内容を変更したりする際に手間がかかることや途中解約をすると違約金が発生すること、事故による修理費用は高額になりがちなことなどがあります。
「通販型」よりは保険料が高い

ローン一体型の自動車保険の保険料は、通常の保険料よりは安いと言えます。しかし、いわゆる通販型と呼ばれる自動車保険と比較すると、高めになってしまうので注意が必要です。

通販型の自動車保険はダイレクト型とも呼ばれ、代理店を介さずに直接保険会社とやり取りして保険の手続きができるというものです。例えば、保険商品の申込手続きを書類の郵送だけで済ませたり、インターネットや電話で保険会社へ直接アクセスして見積もりあるいは契約などができたりします。

このタイプの自動車保険は代理店を仲介しないことから、通常の自動車保険と比べて保険料を低く抑えられるというメリットがあります。

ローン一体型の自動車保険の保険料は代理店型と同じくらいで、通販型よりは高いと言えるでしょう。

通販型自動車保険は割引制度も多く、テレビCMの影響で認知度も高いですが、契約にはある程度の保険の知識を必要とすることもあります。そのため、保険商品を選ぶ時は保険料の安さだけを基準にせず、慎重に判断するようにしましょう。

修理費用は高額になる

ローン一体型の自動車保険は、ディーラーから車を購入する際に契約することになります。そのため、事故などで車が故障し、保険を利用して修理するという場合は、そのディーラーに依頼することになるでしょう。

しかし、ディーラーでの車の修理費用は高額になることが多いです。なぜならディーラーで行える作業は基本的に部品交換や整備にとどまり、自動車事故でダメージを負った箇所の板金などの修理は行えないからです。

ディーラーではこうした場合は提携している修理工場へ依頼することになるので、当然そこには中間マージンが発生し、その分が修理費用に上乗せされることになります。これが、ディーラーに依頼した場合の修理費用が高くなる理由です。

もちろん保険が利用できるなら、多少高額でも気にする必要はないでしょう。しかし、細かく考えるなら保険料と補償内容、そして実際の修理費用とのバランスを考えて、自分に合っているかどうかを判断すべきです。

内容変更の手続きに手間がかかる

ローンや保険の契約は、契約者側で何かしらの変更点があったら店舗に問い合わせて変更手続きを行う必要があります。しかし、ローン一体型の自動車保険は、このような場合の手続きに手間がかかることが多いです。

その理由は、ローン一体型の自動車保険は通常の自動車保険とは異なり、保険契約者がディーラー側、被保険者は車のオーナーという関係になっているからです。そして契約内容や補償内容を変更するためには、保険契約者の意思確認が必要となります。

つまり、ローン一体型の自動車保険の契約内容などを変更する場合は、車の持ち主の一存では手続きが完了しないこととなります。契約者であるディーラー側に一度「お伺い」を立てて、承認を得た上でないと進めることはできません。

例えば、契約期間中に子供も車を運転するようになり、運転者条件や年齢条件を変更する必要が生じたりすると、保険料にも変動が生じます。このような場合は手続きに手間がかかるので、早めにディーラーへ相談する必要があります。

繰り上げ返済すると不利になることも

自動車ローンは、資金に余裕がある場合「繰り上げ返済」といってローンの残債をまとめて支払うことができます。しかし、自動車保険と一体になっているローン契約の場合、この繰り上げ返済をするとトータルで見た場合に不利になることがあります。

なぜなら、ローンを繰り上げ返済することで、一体となっていた保険も契約内容の見直しが行われる可能性があるからです。

例えば、それまでに車両保険で車を修理していた場合などは、その後の保険料が上がることも考えられます。

途中解約は出費がかさむことも

ローン一体型の自動車保険のデメリットの中でも特に注意が必要なのが、違約金の存在です。もしも契約期間中に中途解約すると、残った契約期間の保険料の一括支払いと、違約金などを請求されることがあります。

まとまったお金が手に入り、残ったローンを一括で支払う場合でも同様です。ローン一体型なので、ローン契約の繰り上げ返済による中途解約は同時に保険も一度解約することになり、前述の通り残りの保険料と違約金の支払いが必要になるのです。

そのため、普通の方法で自動車を購入した場合のように「ローンの残債を埋めて車を売却し、新しい車を買う」という形での買い替えもできません。

車が好きで頻繁に乗り換えたいという方は、ローン一体型の自動車保険は不向きと言えるでしょう。

そもそも、自動車保険の保険料は長く契約すれば安くなっていきます。ローン一体型の自動車保険は、契約期間を長くする代わりに期間中の保険料額を平準化し最初に払う分を後払いする形になっているので、途中解約すれば後払いするはずだった分も支払わなければならなくなるのです。

まとめ

①ローン一体型の自動車保険とは、ローンと自動車保険料の支払いが一体化したもの
② 販売店ごとに取り扱っているので、その販売店で車を購入した場合に限り利用することができる
③安い保険料で加入できる、事故を起こしても保険料が上がらないなどのメリットがある
④保険の更新手続きが不要で、保険・ローンの相談窓口は一本化される
⑤デメリットは、契約内容の変更手続きに手間がかかることと途中解約や車の修理時は出費がかさむこと

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