車を所有していると、いつか直面する可能性のある問題が「廃車」です。しかし、いざ廃車を考えるとしても、いつ、どのような基準で、どのような手続きをすればよいのかと頭を抱える人も多いでしょう。
この記事では、廃車を検討するタイミングや基準、手続きの具体的な流れ、還付金について詳しく解説します。
具体的なケースに言及しながら、廃車に関係する疑問や不明点を明らかにしていきますので、廃車のタイミングを見極める参考にしてください。
車を廃車にする明確な基準はない
結論から述べると、車を廃車にすべきタイミングや基準には、法律や厳格なルールが定められているわけではありません。
一般的に廃車のタイミングは、車の走行距離や購入してからの年数、機械の状態などが参考にされますが、これらはあくまで目安です。
最終的には、車の状態や自分の生活スタイルを総合して、慎重に判断しましょう。
そもそも廃車とは?
廃車とは、車を抹消登録して公道を走行できなくした状態のことを指します。
抹消登録とは、車検証から車両情報を削除することで、その方法は「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の2種類があります。
永久抹消登録では、車を完全に解体するため、一度この登録をした車は再び公道を走ることは不可能です。主に車が大きな事故にあったり、修復できないほど劣化したりした場合に行われます。
一時抹消登録は、一時的に車を使用しない場合に行います。そのため、将来的に再登録することで再び公道を走らせることが可能です。
廃車にするタイミングを見極めるポイント
大切に乗っていた車を廃車にするタイミングを見極めることは、予想以上に難しいものです。
ここからは、廃車の時期を決定するために、どのようなポイントにしたがって判断すればよいのかを解説します。
それまで乗っていた車の廃車を検討する最も一般的なケースのひとつが、修理費用が新車や中古車の購入費用よりも高くなる状況です。とくに「全損」と呼ばれるケースがこれに該当します。
全損とは、事故により車が大きなダメージを受け、その修理費用が、同じ車種で同じ状態の車を新たに購入するコストよりも高額になることです。
具体的には、大きな事故や長年の使用による致命的な故障などが考えられます。このような状況では修理に多大な費用がかかるため、新車または中古車を新たに購入した方が経済的な負担が軽くなるといえるでしょう。
走行距離が20万kmを超え、さらに20年以上が経過している車は、廃車のタイミングに達しているといえます。
近年の車は高性能で、走行距離10万km程度では廃車にする必要はないのが一般的です。しかし、走行距離が20万kmを超えると、エンジンやトランスミッションなど主要な部品の摩耗が進行します。
加えて、20年以上経過した車両では各部品の劣化が顕著になり、修理費用の増加も避けられません。
これらの状況を総合的に考えると、走行距離20万km・経過年数20年は、廃車を検討する際の目安といってよいでしょう。
「修復歴あり」とは、車体の骨格部位に交換・修理が施された痕跡がある状態を指します。
骨格部位以外(ドアやボンネットなどの取り外して交換できる部位)の修理をした場合は、修復歴に該当しません。
修復歴があると、将来的にトラブルのリスクが高くなり、買い手が見つかりにくい可能性があるため、査定額が大幅に下がる場合があります。
そのため、修復歴のある車は買取よりも廃車を選択する場合があります。とくに骨格部位の修理・交換は、車の耐久性や安全性への影響が大きいため、慎重に検討すべきです。
古い車を所有していると維持費が高くなるため、廃車にして新たに車を購入した方が長期的には費用の節約になる場合があります。
とくに燃費に関して、古い車は最新の車より格段に劣り、ガソリン代が著しくかさむ傾向があります。古い車と新しい車で、ガソリン代が2倍違うことも珍しくありません。
また、車の年式が13年を超えると、自動車税が15%増加します。さらに車検の際に経年劣化した部品の交換などにも費用がかかるでしょう。
このような高い維持費を払ってまで、自分が所有している車に乗り続ける価値はないと判断したときは、廃車の時期だと考えられます。
車をほとんど使っていない場合や、何年も放置している場合は、早めに廃車を検討することをおすすめします。
使わない車を所有しているだけでも税金がかかり、放置している間に車は劣化し、価値が下落していくためです。
長い期間にわたって使用していない車は、バッテリーの劣化・故障を起こす可能性が非常に高くなります。
また、年式が古いにもかかわらず走行距離が少ない車は、買取業者の査定が厳しくなる可能性もあります。乗らずに放置していることにより、劣化や故障の可能性が高いと判断されてしまうからです。
利用していない車にも維持費がかかり、資産価値は時とともに下落するため、早めの廃車を検討しましょう。
修理しても車が正常に走行できない状態は、廃車を検討する重要なラインです。
外見上は問題がないとしても、走行中に異音が発生したり、安定性に問題が出たりすることは十分に考えられます。とくに、専門の業者により完全な修復は不可能と判断された場合、その車はほぼ確実に廃車対象と考えられるでしょう。
修復歴がある車は中古市場で不人気となり、買取価格が大幅に下がるため、業者は廃車を勧めてくるはずです。修理に出す前に、まずは専門の業者から詳しく説明を受けることをおすすめします。
完全修復が無理で特別な理由がなければ、廃車の選択が賢明です。
車に使われている特定のパーツが製造中止となり、修理が困難である状況も廃車を検討するタイミングです。
年式の古い車に多く見られ、パーツが入手困難である場合は、メンテナンスの大きな障害となります。必要な部品をオーダーメイドで作成する手段もありますが、非常に高額な選択肢となる可能性が高いため、検討は慎重に行いましょう。
どうしてもその車に乗り続けたい場合は、部品を根気強く探したり、オーダーメイドに頼ったりする選択肢も一つです。しかし、多くの場合においては、廃車を選ぶメリットの方が大きいでしょう。
買取店や修理工場で廃車を勧められるケース
同じ車に長く乗り続けている場合、いつか車の寿命が来てしまうことは避けられません。何らかの理由により、買取店や修理工場で廃車を勧められる状況にも直面するでしょう。
ここからは、どのようなケースで廃車を勧められるのか、具体的に解説していきます。
車が大きな事故に遭い、重要な骨組みが大きく破損してしまった場合、修理するよりも廃車を勧められる可能性が非常に高くなります。
骨格部位を大きく損傷してしまった場合、修理をしたとしても完全な状態に戻すことは難しく、その後も運転に支障をきたす恐れがあるためです。
何とか走行できる状態にしたとしても、骨格部位の修理には専門的な技術が必要で、費用も高額になります。その結果、修理するよりも廃車にして新車を購入した方が、安全で経済的な選択となるケースがほとんどです。
車の買い替えを勧めるのは、多くの場合は安全性を考慮してのことだと理解しましょう。
修理工場や買取店は、故障している部位が多かったり、重要部位が大きく損傷している場合や、修理後にすぐ異常が発生する状態だと廃車を勧めます。
専門の技術者が修理不可と判断した車を何とか修理して走行可能な状態にするメリットは少なく、安全上のデメリットが大きすぎるためです。
車の重要部位が損傷・故障している場合、部品を新品に交換する必要があり、費用も高額になります。また、同じ部分が再び故障する可能性が高く、トータルの修理費用もかさんでしまうでしょう。
廃車ではなく修理を選ぶのであれば、安全性と費用について慎重に検討する必要があります。
車検費用は依頼する業者によって異なりますが、整備費用や部品の交換・メンテナンスに多額の費用がかかる場合、業者から廃車を勧められます。
古い車や故障部位が多い車の場合、車検を通す際に修理・交換する部品の点数が多くなり、車を買い替えた方が費用の節約になることは珍しくありません。
古い車の場合は、必要な部品が生産中止や入手困難になっていることもあり、修理に多くの費用と時間がかかってしまいます。
部品の特注が必要な場合は、さらなる費用がかかる可能性もあるため、トータルの費用を考慮して業者は廃車を勧めるのです。
特に、軽自動車は自動車税の月割り精算ができないため、4月1日以降に廃車すると1年分の自動車税がかかってしまいます。
また、3月は新生活に向けた中古車需要が高まる時期であり、買取価格上昇の可能性もあります。手続きが混雑する時期でもあるため、早めに準備しておきましょう。
廃車を決めた後の手続きの流れ
車を廃車することに決めたとして、その後の手続きはどのように進めていけばよいのでしょうか?
ここからは、廃車を決めた後に行うべき手続きの流れについて、初めての方に分かりやすいように具体的に解説していきます。
車の永久抹消登録を行う場合、まずは車を解体に出さなければなりません。
解体作業自体は数日で完了するケースがほとんどですが、事前に業者との打ち合わせや見積もりを取る時間も考慮しておきましょう。解体費用は業者によって異なります。
口コミやレビューなどを参考にし、信頼できる業者を見つけましょう。
永久抹消登録に必要な書類がいくつかあり、事前に準備しておくことで手続きをスムーズに進められます。
以下は必要書類の一例です。
- 車検証
- 印鑑証明書
- 委任状
- 譲渡証明書
- リサイクル券
- ナンバープレート(前後2枚)
- 自賠責保険(車検の有効期間が残っていない場合は不要)
注意すべき点として、車の所有者以外に手続きを代行してもらう場合は、委任状が必要になることです。
これらの書類を全て揃えて運輸支局に提出する必要があります。書類に何らかの不備があると手続きが進まず余計な時間がかかってしまうため、事前に必要書類を完備しておきましょう。
管轄の運輸支局にあるナンバープレート返却窓口で、ナンバープレートの返却を済ませましょう。
返却窓口は通常、平日午前8時45分〜11時45分、午後13時〜16時に開いています。土日や祝日、年末年始は業務を行っていないため注意が必要です。
ナンバープレートを返却した後は、手数料納付書に確認印をもらってください。
ナンバープレートの返却は、廃車手続きの重要なプロセスです。確認印が押された手数料納付書は、その後の手続きで必要になる場合があるため、紛失しないよう保管しておきましょう。なくしてしまうと手続きに時間がかかってしまうため注意が必要です。
廃車手続きに必要な書類を全て揃えたら、運輸支局の窓口に提出します。先述した必要書類を確認し、書類の不備や記入漏れがないように注意しましょう。
書類を窓口に提出した後で、廃車証明書が交付される場合があります。ここで交付される書類は、その後の手続きで必要な可能性が高いため、紛失しないよう厳重に保管してください。
書類提出の際には必ず本人確認が行われます。そのため、身分証明書も忘れずに持参しましょう。
廃車手続き完了後は、先払いしていた自動車税や重量税など、税金の還付が受けられます。
運輸支局の税申請窓口で、必要な申請書類を提出して手続きを行いましょう。税金や保険の種類に応じた必要書類は後述します。
還付金を受け取るまでの期間は、一般的に1か月〜2か月程度ですが、場合によってそれ以上かかる可能性もあります。そのため、必要書類を揃えたら早めに申請を開始しましょう。
自賠責保険や任意保険についても、残存期間があれば一定額が戻ってきます。具体的な手続き方法や金額は保険会社によって異なるため、各社に確認を取ることが重要です。
車を解体しただけで、抹消登録の手続きが済んでいない状態では、車はまだ法的に存在しているとみなされ、税金や保険料の負担が続きます。したがって、無駄な出費を抑えるためにも、車の解体が完了したら運輸支局にて抹消登録を速やかに済ませることが非常に重要です。
廃車の申請完了後に受け取れる還付金
廃車の手続きを済ませた後、自動車税以外にも還付を受けられる場合があります。受け取るのを忘れないためにも、どのような種類の還付金があるのか知っておくことが重要です。
ここからは、廃車手続き完了後に受け取れる還付金について解説します。
自動車税は、毎年4月1日時点における車の所有者に課される地方税です。1年分を一括で納める形式であるため、廃車手続きを完了すると先払いした分が還付されます。
還付申請には、車の抹消登録が完了してから1か月〜2か月後に送られてくる「還付通知書」が必要です。還付通知書を印鑑・身分証明書とともに金融機関に持参することで、還付金を受け取れます。
注意すべき点として、自動車税の還付金額は月割り計算のため、廃車手続きのタイミングが重要です。手続きの時期によって還付金額が変わるため、計画的に手続きを遂行する必要があります。
自動車重量税は、車の重さに応じて課税される国税です。新車登録や車検時に前払いで納付するため、永久抹消登録の際に、先払い分が還付されます。
重量税の還付金を受け取るためには、解体申請をした後で、還付申請書を提出する必要があります。
還付金の額は、前払いした分の税額を車検期間の月数で割って1か月あたりの税金を算出し、その額に残った車検有効期間の月数をかけることで求めることが可能です。
重量税の還付を受けるまでには、2か月〜3か月を見込んでおきましょう。
なお、一時抹消登録の場合には重量税の還付は受けられないため注意が必要です。
車の廃車手続きをした際に、自賠責保険の契約期間が残っている場合、その未経過分の保険料は還付される可能性があります。
前払いした金額を車検期間の月数で割り、未経過の月数をかけた額が還付されます。還付金額は車種と保険の残期間に応じて、月単位で計算されます。
注意すべき点として、自賠責保険の解約と還付金の申請手続きは保険会社に対して行います。廃車手続きを業者に依頼する場合は、自賠責保険の還付金を不正に取得されるケースがあるため、委任状の内容をしっかりと確認しましょう。
任意保険の解約時に受けられる還付金額(解約返戻金)は、加入している保険会社によって異なります。
還付金額は、各社によって独自に定められた「短期率」という割合に基づき計算されるため、事前に加入している保険会社に問い合わせるとよいでしょう。
任意保険の解約による還付を受けるためには、条件が提示されている場合があります。
例えば、契約満了日までの期間が1か月以上残っていることを条件にしているケースが大半です。また、月払いで保険料を支払っている場合には基本的に還付金が発生しないケースもあります。
任意保険の還付の正確な金額は、直接保険会社に問い合わせるのが最も確実です。
自動車税や自賠責保険料については、一時抹消登録をした場合、未使用期間に応じた還付が可能です。任意保険料に関しても、契約内容や保険会社の方針により、還付が発生する可能性があります。
しかし、重量税は解体申請する必要があるため、一時抹消では還付されません。
廃車買取業者に引き取ってもらうのがおすすめ!
廃車を予定しているのであれば、廃車買取業者に依頼するのが最も効率的です。
買取業者は車の引き取りから廃車手続き、還付金の立て替えまでトータルでサポートしてくれます。車の状態がよければ買取のオプションも期待できるため、廃車にかかる手間と費用を削減可能です。
廃車買取業者では、単に車を廃棄するだけでなく、可能な限りの価値を引き出せる利点もあります。自分で廃車の手続きをするよりも短時間で済むため非常に合理的です。