故障や古くなって乗らなくなった車を廃車にしたいという方もいるでしょう。廃車にすることで車にかかる税金や保険料を支払わずに済むため節約につながります。
しかし、廃車の手続き方法や必要書類などを知っておかなければスムーズに手続きができません。
この記事では、廃車手続きの種類や流れ必要書類などを紹介していきます。後半ではケースごとに、どの廃車手続きをしたら良いか、手続きする際の注意点も解説します。
車の廃車手続きはじっくり考えてから決定しよう
車は乗らなくても税金や保険などの維持費で年間数万円の出費がかかります。不要な出費を避けるためには、乗らない車に廃車手続きをして税金や保険の支払いを止めることが必要です。
しかし、廃車にしてしまうとその車は公道で走れなくなります。そのため、病院に行きたい場合など、急な外出をするときにその車を使うことは不可能です。
出費を避けるために安易に廃車手続きをしてしまうと後悔することがあります。車を廃車にしたいときは家族と話し合い、本当に廃車にした方が良いのかじっくり考えてから決めることが大切です。
車の廃車は大きく分けて3種類ある
ここからは、廃車の種類について紹介します。
車を廃車にしたい場合、その手続きは大きく分けて3種類あります。また、廃車後は税金が返還されますが、手続きの種類によって返還される税金は異なります。
永久抹消登録とは、自動車登録を抹消する手続きであり、主に解体した車・災害や盗難により乗れなくなった車に対して行います。永久抹消登録するとその車には永久に乗れず、抹消登録の解除や再登録もできません。
車を解体する場合は、解体後にのみ永久抹消登録が可能で、解体後15日以内の手続きが必要です。
また、永久抹消登録を行うと、すでに納付している自動車税・自動車重量税は還付金制度によって返還されます。返還金額は、自動車税の場合は自動車税を納付してから未経過分、自動車重量税の場合は残りの車検有効期間分です。
返還はその場ではなく、1~3か月後に口座振込または送られてきた送金通知書を銀行や郵便局に提出することで換金できます。
注意点としては、軽自動車に課される軽自動車税は返還されないということです。
一時抹消登録とは、自動車登録を一時的に抹消することであり、主に何かしらの理由で長期間所持している車に乗らない場合に行われます。
一時抹消登録をしているときはその自動車で公道を走れませんが、再び乗ることになった場合は運輸支局で「中古新規登録」を行うことで公道での走行が可能です。
一時抹消登録中は自動車に課される税金の支払い義務はなくなりますが、滞納や保留などすでに発生している税金は支払う必要があります。
また、すでに納付した税金のうち自動車税は未経過分の返還がありますが、重量税や軽自動車税は返還されないため注意が必要です。
解体届出とは、一時抹消登録している車の登録情報を抹消する手続きのことであり、この手続きをするとその車は二度と公道を走れません。
解体届は永久抹消登録と同じく解体後にのみ手続きが可能で、こちらも解体後15日以内に手続きする必要があります。
また、解体届出を行うと、すでに納付した税金のうち重量税のみ残りの車検有効期間に応じて返還されます。(自動車税は一時抹消登録の際に返還されます)
車の解体は業者に依頼することがほとんどですが、3月は自動車税の支払い前で混雑するため注意しましょう。
各廃車手続きの流れと必要書類
ここからは、廃車手続きの流れと必要な書類について紹介します。
廃車手続きは、いずれも運輸支局で行いますが、それぞれ必要な書類と流れが異なります。必要な書類が多いため、しっかりと確認してスムーズな手続きができるようにしましょう。
永久抹消登録に必要な書類は、以下の12点です。
- 自動車検査書
- 印鑑登録証明書
- 所有者の実印
- ナンバープレート
- 身分証明書
- 移動報告番号の控え
- 解体報告記録日の控え
- 金融機関情報(口座番号など)
- 永久抹消登録申請書
- 手数料納付書
- 自動車重量税還付申請書
- 自動車税申告書(地域によって必要)
永久抹消登録するには、まず解体業者に車の解体を依頼し、ナンバープレートと移動報告番号・解体報告記録日が記載されたリサイクル券を受け取ります。
その後、ほかの書類を揃えたら運輸支局の窓口で手数料納付書・永久抹消登録申請書・自動車重量税還付申請書を受け取り記入しましょう。
記入を終えたら窓口でほかの用意した書類と一緒に提出します。
最後に運輸支局内の自動車税事務所で自動車税申告書を受け取り、記入して提出したら終了です。
一時抹消登録に必要な書類は、以下の8点です。
- 自動車検査書
- 印鑑登録証明書
- 所有者の実印
- 身分証
- ナンバープレート
- 金融機関情報
- 一時抹消登録申請書
- 手数料納付書
- 自動車税申告書(地域によって必要)
一時抹消登録の場合でもナンバープレートの提出は必須なため、業者に依頼するか自分で外しましょう。
次に必要な書類を揃えたら運輸支局の窓口で一時抹消登録申請書・手数料納付書を受け取り記入します。
記入を終えたら必要書類と一緒に提出します。
最後に運輸支局内の自動車税務所で自動車税申告書を受け取り、記入して提出したら終了です。
印鑑登録証明書は、永久抹消登録・一時抹消登録のどちらも発行してから3か月以内のもののみ有効なため注意しましょう。
解体届出に必要な書類は、以下のとおりです。
- 登録識別情報等通知書または一時抹消登録証明書
- 身分証明証
- 所有者の実印
- 自動車リサイクル券
- 移動報告番号の控え
- 解体報告記録日の控え
- 金融機関情報
- 手数料納付書
- 解体届出申請書
- 自動車重量税還付申請書
解体届出をするためには、まず解体業者に解体を依頼し、移動報告番号・解体報告記録日が記載されたリサイクル券を受け取ります。ナンバープレートは一時抹消登録の際に返却しているため不要です。
次に必要な書類を揃えたら運輸支局の窓口で手数料納付書・解体届出申請書・自動車重量税還付申請書を受け取り記入します。
記入を終えたら窓口でほかの書類と一緒に提出して終了です。
解体届出では自動車税の返還がないため自動車税事務所に行く必要はありません。
車の廃車手続きには費用がかかる?詳細を解説
ここからは、廃車手続きの際にかかる費用について紹介します。
廃車手続きの際に費用が発生するのは一時抹消登録だけですが、永久抹消登録と解体届出では手続き以外のところで費用が発生しやすい特徴があります。
それぞれ、どの程度の費用が発生するのか確認していきましょう。
一時抹消登録では印紙を購入する際に350円の手数料が必要です。
印紙は運輸支局で購入できるため事前の準備は不要で、手数料納付書とともに納めます。
手数料納付書も運輸支局で入手できる書類です。自動車登録番号・所有者氏名・申請者氏名などを記入し、左下の印紙貼り付け欄に購入した印紙を貼ります。
永久抹消登録と解体届出は手数料が発生しません。ただし、解体する場合は解体業者に依頼することになるため解体費がかかります。
また、故障や一時抹消登録している車など、道路を走れない車はレッカーで移動することになるため、レッカー代が必要です。
さらに、2005年に施行された新車購入時に支払うリサイクル料が未払いの場合は、解体時に支払うことになります。そのため、2005年より前に買った車を解体するときはリサイクル料を支払う必要があるかもしれないので注意しましょう。
営業時間は基本的に午前は8時45分~11時45分まで、午後は13時~16時までです。また、月末と年度末の3月は非常に混み合うため、できるだけ避けた方がよいでしょう。
【永久抹消?一時抹消?】ケースごとにおすすめの手続きを紹介
ここからは、ケースごとにおすすめの廃車手続きを紹介します。
永久抹消登録か、一時抹消登録するかは手続き後にその車に乗るかどうかによって決めましょう。
また、自分は乗らないが数年後に誰かに譲る場合や、乗る予定はあるが期間が空き過ぎる場合などのケースでは、どちらがよいか確認しましょう。
近年では、高齢者が免許を返納することも多くなりました。その際に所有していた車を誰かに譲渡する予定がない場合は、永久抹消登録がおすすめです。
運輸支局まで行く必要はありますが、永久抹消登録することで車にかかる税金の支払い義務がなくなり、場合によっては税金が返還されます。
自分で運輸支局まで行くことが大変な場合は、委任状をインターネットからダウンロードして記入することで、ほかの人に代理で手続きを頼むことが可能です。もしくは、廃車買取業者に依頼することで手間を減らせます。
5年程度の長期の海外転勤で所持している車に乗れなくなる場合は、一時抹消登録がおすすめです。
一時抹消登録は期間が決まっていないため、予定より早く戻って来れた場合や滞在期間が伸びた場合にも対応できます。
しかし、海外転勤中に車を外で保管していると、盗難や災害による破損、劣化などの恐れがあります。そのため、鍵のついたガレージで保管することや家族に預かってもらうなどの対策が必要です。それらが難しい場合は、永久抹消登録をした方が安全でしょう。
自分が新車の購入を検討し、「今の車は大学生の子供が2年後に就職した時に譲ろう」と考えている場合は、一時抹消登録がおすすめです。
一時抹消登録をしなければ車に乗らなくとも、税金・保険料・車検などの費用がかかります。新車の購入でお金がかかることを考えると、面倒に感じたとしても一時抹消登録をして維持費などがかからないようにするべきです。
また、保険料の支払いを止めるには、一時抹消登録をした後に保険会社への連絡が必要なため忘れないようにしましょう。
お気に入りの2人乗りのスポーツカーに、子育てが忙しくて乗れない場合は、一時抹消登録がおすすめです。
2人乗りだと子供を連れて夫婦で出かけることもできず、また排気量が多くなりがちなスポーツカーは、その分自動車税も高くなります。
子供が大きくなり、子育てが落ち着くまでの数年間乗ることが難しい場合は、節約するためにも一時抹消登録をした方がよいでしょう。
また、再び乗ることになったときは中古新規登録の手続きが必要になるので覚えておきましょう。
廃車にまつわる失敗例
ここからは、廃車手続きをした後の失敗例について紹介します。
一時抹消登録をした車は自分で管理することになりますが、放置しておくと車の状態は悪くなるため管理状態に気を付ける必要があります。
また、廃車手続きをした際に交付される書類は大切なので紛失しないように保管しましょう。
一時抹消登録すると「登録識別情報等通知書」が交付されます。
この書類は、一時抹消登録をした後の永久抹消登録、解体届出、中古新規登録、保険の解約、などの手続きをする際に必要です。
登録識別情報等通知書は紛失すると犯罪防止のため再発行ができません。紛失してしまった場合は、警察で遺失届を提出し、必要な書類を集めた後に運輸支局で書類の記入と提出が必要です。
この手続きには必要な書類も多く、かなり手間がかかるため、多くの場合は行政書士に依頼することになります。大切な書類のため、しっかり保管しておきましょう。
中古新規登録を行い、長期間一時抹消登録をした車に乗る場合は注意が必要です。
車は使用しなくとも、メンテナンスしなければ様々な部分が劣化するため、久々に乗ったら故障していて動かないことがあります。
特に気をつけたいのが、バッテリー、エンジン、タイヤ、燃料タンクです。これらのメンテナンスを怠ると、一時抹消登録を解消して乗った際に故障に気づき修理に出すことになりかねません。
結果的に、修理代や部品の交換、レッカー代などでかなりの費用がかかってしまう恐れがあります。
外で車を長期間管理することも避けた方がよいでしょう。
外で車を管理すると強風で飛んでくる砂や石、木などで車体が傷つくことがあります。また、紫外線を長期間浴びることで車の色が褪せてしまうことや、雨風により錆が発生しやすくなります。
室内での保管が難しく、外で車を管理する場合は、車専用のカバーをつけることがおすすめです。カバーをつけることで車体を風や雨から守り、紫外線による塗装の劣化を防げます。
やむをえず外で保管するときは車のカバーを付けることで、車体の色褪せや強風で飛んでくるものからある程度車を守れます。また、定期的にエンジンをかけることやタイヤの空気圧を正常にするといったメンテナンスが必要です。これらのメンテナンスをしないと車の状態はだんだん悪くなります。
廃車手続きをする時の注意点
ここからは、廃車手続きをする時の注意点について紹介します。
廃車手続き以外でかかる費用や、手続き後の保険の解約・中断について理解しておくことが大切です。また、車の所有者名義が自分でない場合、廃車手続きができません。
廃車手続きが面倒な場合は売却することで手間を減らせることも知っておきましょう。
一時抹消登録でナンバーを返却した車、故障などで自走できない車は、解体業者までレッカー車での移動が必要です。
レッカー車は手配する際に費用がかかることがあります。その際は移動距離が長くなればなるほど費用が高くなるでしょう。
レッカー車を手配する方法は2つあります。
1つ目は、レッカー業者に個人で連絡して手配してもらう方法です。この場合、費用の目安は1万円~3万円程度になります。
2つ目は、廃車買取業者に依頼することです。こちらではレッカー代が業者によっては無料になりますが、稀に悪徳業者もいるためネットなどで口コミを見ておくとよいでしょう。
車をローンで契約していて、所有者名義がローン会社の場合は廃車にできません。
ローン契約している車を廃車にしたい場合は、ローンを完済して所有者名義を自分に変更することが必要です。
ただし、所有権が自分にあるマイカーローンでは、ローンの返済が終わっていなくとも廃車の手続きができます。
また、リース契約している車も廃車にできません。もしリース車を手放したい場合は契約会社に解約を申し込む必要があります。
廃車手続きをした後は任意保険の中断・解約の手続きも忘れずに行いましょう。
保険の中断や解約は運輸支局で行う廃車手続きではできないため、保険会社への連絡が必要です。
自賠責保険を解約する場合は、廃車手続きを完了したことを証明する書類が必要ですので用意しておきましょう。
任意保険を中断するか、解約するかは、この先車に乗るかどうかで決めます。中断すると自分の保険の等級が再び契約したときに引き継がれるため、車に乗る予定がある場合は中断を選択するとよいでしょう。
ただし、中断期間は10年と決まっているため期間を過ぎないように注意が必要です。
廃車手続きは用意する書類が多くて手間がかかり、手続きをするために行く運輸支局は平日にしか営業していません。そのため、廃車手続きをする時間がないという方や、面倒だと感じる方は、車の売却も検討しましょう。
買取に出すことで古い車や動かなくなった車でも思わぬ高値がつく場合があります。また、無料でレッカーを手配してもらえることや、手間のかかる書類の記入や運輸支局への提出などのサポートを受けられます。
さらに、自分で解体業車に依頼すると解体費が数万円ほどかかってしまいますが、買い取ってもらえれば、そういった費用もかかりません。
もし車を売却する際は、いくつかの買取業車に見積もりを依頼して比較することで、より高値で売却できるでしょう。