新車試乗レポート
更新日:2022.04.01 / 掲載日:2021.11.23
ワゴンR スマイル「イイトコ取りした最新Kカーの実力は?」
スライドドアを武器に超激戦区で勝負を挑むワゴンRスマイルだが、タウンカーとしてバランスの良い走りを持つことも判明した。
想定されるライバルモデルとの関係も踏まえて、その魅力をじっくり確認してみよう。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
パッケージ良し! 価格良し! 走り良し!
最新設計がもたらす
走りにも見所あり
フロントマスクの印象が異なるが、構造的にはスペーシアを低全高化したモデルと考えれば分かりやすい。ボンネット高及びベルトライン高はスペーシアに等しく、屋根を90mm下げている。その分だけ室内高も小さくなる。もっとも、スーパーハイト軽の室内高は停車時の室内作業、嵩のある荷物の積載性などの特別な要求がなければ、メリットは開放感や見晴らしなど。スペーシアと比べて80mm低下したとはいえ、スマイルの室内高は1330mm。悠々のヘッドルームに高い視点がもたらす見晴らしはミニバンを思わせる。ユーティリティを確保しながら上手にリサイズしたわけだ。
とは言え、低全高化だけではニューモデルとしては物足りない。そんな想いに応えてくれるのが、見た目からは想像できない確かな走行性能を手に入れたことだ。
パワートレーンはNAとマイルドハイブリッドの2本立てだが、注目はマイルドハイブリッド車。電動パワーアシストを巧みに用いて巡航ギヤ比維持や緩加速時の回転上昇の抑制を行い、スペック以上の余力感を演出する。急加速や高速域では少々物足りなさも否めないが、このクラスの軽自動車としては十分な動力性能だ。
さらにもう一つ、フットワークの良さにも驚かされる。高速直進の据わりやロールの収束感がいい。目地や補修跡の乗り越え突き上げはちょっと硬めだが、車軸周りの剛性を上げた印象がある。ロールの入りなどサスストロークの動き出しは滑らかだが、ストロークスピードも抑制されている。車線変更時の切り返しでも、ロールの揺れ返しは少なく、コーナリング中の挙動も安定している。軽自動車内での評価だが、挙動全般に据わりが効いた印象が強まっている。
ブッシュも含めたサスチューニングがもたらした落ち着きと推測できるが、結果的に低全高化の期待値に見合った乗り味や操安性の改善を実感することができる。
ターボの設定がないのが
本当に残念に思う
スライドドアとハイト軽のキャビンユーティリティを融合させて、ファミリー色の濃いスーパーハイト軽と異なるタウン&レジャー志向のユーザーに向けたモデルなのは間違いないが、煮詰められた走行性能からしてもダウンサイザーは強く意識しているようだ。
ただ、パワートレーンがNA仕様だけというのは不満を感じてしまう。マイルドハイブリッド車には全車速型ACCもOP設定しているが、動力性能面ではタウンカーの側面が強い。そういう意味では高速走行も視野に入れたダウンサイザーには厳しい一面もあるだろう。タウン&レジャーでのポテンシャルが高いモデルだけに、ターボ車が非設定ということは本当に残念に思ってしまう。
SUZUKI ワゴンRスマイル
●価格帯:129万6900~171万6000円
気になるライバルとの関係は?
DAIHATSU ムーヴキャンバス
真っ向勝負を挑む
ライバル筆頭モデル
パッケージングはタントのロールーフ仕様ともいえるが、センターピラーレス構造ではなく標準的なスライドドアを採用する。全高/室内高ともにスマイルよりも多少低いが後席機能などのユーティリティはほぼ互角。パワートレーンはNA仕様のみだが、電動化を進めたスマイルと比較すると燃費とドライバビリティで劣る。安全&運転支援機能でスマイルには設定されているACCが選べないのも残念な部分だ。
SUZUKI ワゴンR
走りも使い勝手も
スマイルには少し及ばない
ハイト系パッケージングのキャビンスペースを活かした実用性と車格感を演出するミニバン的な内外装を採用。使い勝手もデザインも癖がなく、汎用性が高い。スマイルと実用面で最も差が付くのはリヤドア関連の使い勝手。狭い場所での乗降性はスライドドアに劣る。また、スマイルには設定されるACCは非採用だ。走行性能面ではターボのラインナップがアドバンテージだが、細かな振動騒音を含む走りの質感ではスマイルには及ばない。
SUZUKI スペーシア
パッケージも走りも優等生
幅広い走行状況で活躍できる
スマイルを評価する時に最も悩ましい存在がスペーシアである。ターボ車もA㏄設定グレードもラインナップ。サスチューンはスマイルよりもタウンユース向けの印象を受けるが和みの乗り味は魅力的。同等グレードなら価格も大差ない。全高が制限されなければスペーシアでいい。ただ、本文で述べたとおり乗り味の質感や高速域での安心感はスマイルに分がある。また、WLTCモード燃費でも上回る。距離を延ばすならスマイルが少し有利だ。
ライタープロフィール
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。