新車試乗レポート
更新日:2018.10.17 / 掲載日:2018.02.23
HONDA新型ヴェゼル雪上試乗インプレッション
フロントのバンパーやグリルのデザインをより押し出しの強いものに変更。また、インラインタイプのLEDヘッドライトを採用することで、さらなる先進感を演出している。
今年2月にビッグマイナーチェンジを受けたホンダの人気コンパクトSUV、ヴェゼル。内外装の変更に加え、走りの面、特にハイブリッドモデルが大きな進化を遂げた。今回は雪上試乗でその魅力をチェックしつつ、4WDの性能も体感した。
現在のFFベースの4WD車のシステムでは後輪へのトルク伝達を多板クラッチで制御する方式が一般的であり、電子制御4WDシステムの大半が採用する。ヴェゼルが採用するリアルタイムAWDも多板クラッチ方式。クラッチの締結力に油圧を用いるが、システムの小型化のために油圧ポンプ停止時にも油圧を保持できる封入油圧回路を採用している。
その最新型がヴェゼルのMCで採用されたシステムだ。ハードウェアの構成は変わっていないが、従来はアクセル開度や舵角等に応じたフィードフォワード制御のみで制御していたが、新型ヴェゼルではヨーレート(車両自転角速度)などの走行状況に応じたフィードバック制御を加えることで、操安性も含めた最適な駆動力配分を可能としたのが特徴だ。
操安性の向上と言えばファントゥドライブの話になりそうだが、確かにそういった側面もあるのだが、雪上で試した印象ではカーマニアを喜ばせるのが目的ではない。
この雪上試乗会ではホンダ4WDシステムの代表的なモデルを試乗したが、安心感と制御しやすさを重視した特性では共通していたが、中では最も安定性に優れていたのがこの新型ヴェゼルだった。
4輪がしっかりと接地していても各輪に掛かる摩擦係数がばらつくのが雪上である。そこに加減速やコーナリングの接地荷重の変化が加われば、どのタイヤがどう滑るかは成り行き次第。コーナリング中ならアンダーステアやオーバーで操舵は大忙しだ。
ヴェゼルの雪上走行での操舵は一般路面走行よりは修正操舵の頻度や舵角は増えるものの、大まかな運転感覚は大きく変わらない。操舵量と車体方向変化、あるいは操舵角とコーナリングラインのズレが極めて少ない。4輪のグリップバランスが大きく崩れない。逆に意図的にバランスを崩してコーナリングを作るような運転では小技が利きにくいのだが、その反応の鈍らせ方が実に巧みだ。また、グリップ限界を超えるような速度やアクセル開度ならばVSAやTCSが介入するが、補正度合いも介入時間も短い。
日常用途での雪上走破性だけ狙った4WDを「生活四駆」と呼ぶが、ヴェゼルの雪上走行性能は、日常用途レベルの運転でグリップ限界近くまで安定した性能を発揮する。つまり、安心速度域がそれだけ広く、高性能型生活四駆とでも呼びたくなる走りだ。
ドライバーの余裕は車内雰囲気にも影響する。運転の側面から寛いだ雰囲気を高めるのも新型ヴェゼルの「大人味」なのだろう。
リヤデザインは従来のままで変更点はなし。
インパネ形状に大きな変更はない。メーカーオプションのナビはiPhoneやAndroidなどのスマートフォンをUSBで接続し、音楽再生や通話、マップアプリケーションの操作などを、ナビ画面や音声で行える「Apple CarPlay」および「Android AutoTM」に新たに対応。使い勝手をより高めた。
先進の安全運転支援システム、Honda SENSINGの8機能をガソリンモデル、ハイブリッドモデルの全タイプに標準装備した(これまでは一部オプション)。ミリ波レーダーと単眼カメラによる車両前方の状況認識と、ブレーキ、ステアリングの制御技術が協調し、安心・快適な運転や事故回避を支援。なお、一部タイプではレス仕様も選択できる。
ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」にきめ細かなチューニングを施すことで、よりスムーズでナチュラルな加速フィールを実現したのが今回のマイナーチェンジのポイントの一つ。また、ハイブリッドモデルのブレーキペダルにリンク機構を新採用することで、ブレーキ踏み込み時のペダルの軌跡を最適化し、よりスムーズなブレーキフィールを実現している。