新車試乗レポート
更新日:2018.10.25 / 掲載日:2018.02.22
最新メカニズム大解剖 MAZDA CX-8

すべての乗員が楽しめる上質SUV
車重増加をターボのサイズアップで帳消しに
CX-8は顔だけ見るとCX-5のストレッチかと思いきや北米用のCX-9をベースとした3列シートのSUV。乗る人すべてが快適に移動できるよう、3列目もオマケでない十分なスペースと座り心地を提供している。CX-9は2.5Lのガソリンターボだが、日本向けのCX-8はディーゼルのみ。ただ車両重量が1.8t前後となりCX-5より200kg程度重くなるので、パワーアップを図りながら車格にふさわしい静粛性も得ている。
エンジンは新設計に近いくらい内部から造り替えられている。シリンダーヘッドは従来の排気マニホールド一体型から別体型にして、現在増えているビルトイン型とは逆方向の変更としている。これは、排ガス浄化の触媒を有効に働かせるために排ガス温度を上げるのが主な狙いだそうだ。また、圧縮比を14.4に設定することで低温始動性を上げることで、従来の排気バルブリフトが廃止されコスト削減。ピストンも段付きエッグシェイプピストンで、燃焼直後の燃焼ガスがシリンダー外壁に触れないようにして、軽負荷域での熱効率を大幅に向上させている。インジェクターもデンソーの高性能タイプi-ARTとなり、より短い時間で多段噴射を行うことで、燃焼音を静かにしている。2ステージターボは、大ターボを可変ベーン式で大容量化して中高回転域の空気量を増加している。
SPEC
CX-8 XD L Package 4WD(型式:3DA-KG2P)
全長×全幅×全高(mm):4900×1840×1730 ホイールベース: 2930mm トレッド(前/後mm):1595 /1600 最低地上高:200mm 車両重量:1900kg 乗車定員:6名(他グレードに7人乗りあり) ●エンジン 型式SH-VPTS 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ 総排気量2.188cc ボア×ストローク(mm):86.0×94.2 圧縮比14.4 最高出力:140kW〈190PS〉/4500rpm 最大トルク:450 N・m〈45.9kgf・m〉/2000rpm コモンレール式燃料噴射 ●トランスミッション:6EC-AT(ロックアップ付き) 変速比(1/2/3/4/5/6//R):3.487 / 1.992 / 1.449 / 1.000 / 0.707 / 0.600// 3.990 最終減速比(前後):4.411/2.928 ●ステアリング方式:ラック&ピニオン サスペンション(前/後):マクファーソンストラット式/マルチリンク式 ブレーキ(前/後)ベンチレーテッドディスク/ディスク 最小回転半径: 5.8m ●使用燃料・タンク容量: 軽油74L ●JC08燃費17.0km/L WTLC燃費15.4km/L 市街地モード(WLTC-L):12.5km/L 郊外モード(WLTC-M):15.3km/L 高速道路モード(WLTC-H):17.5km/L
写真の3列シートはXD Lパッケージの6人乗り仕様で、大容量のセカンドシートコンソールボックスを装備。十分な幅のアームレストがあり車内の小物をまとめるのに便利。
2.2Lディーゼルは新型というくらいの大改良

CX-5と比べエンジンルームでは吸気系配管程度の違いだが、ピストン変更や新設計シリンダーヘッドなど大幅に改良。CX-5比で最高出力11kW(15ps)、最大トルク30N・m(2.9kg f・m)増強されている。
エンジンの主な変更点
・シリンダーヘッド新設計(エキマニ別体)
・排気バルブリフトは廃止
・段付きエッグシェイプピストン
・2ステージの大ターボをVGT化しサイズアップ
・電子制御水温制御
・デンソー製超高応答インジェクター
・燃焼改善で急速多段燃焼
・低張力ピストンリング
従来に比べると、トルクカーブの最大トルク部が尖った三角形状になり、2000rpm以上のトルクも大きく増加。これは、2ステージターボのラージ側の容量が増えて空気量が増加したため。
世界初の鈑金製タービンハウジング
ラージ側ターボは可変ベーン型としてワイドな作動域としている。また、排気タービンハウジングは世界初の鈑金製が使われており、軽量化と熱容量の削減で排気温度をキープし、排ガス浄化性能向上を確保している。
段付きエッグシェイプピストンで燃費向上
新型。デミオの1.5Lディーゼルから導入されている段付きエッグシェイプピストン。燃焼熱を逃さず冷却損失を低減し軽負荷(=温度が低い)燃費を向上。
こちらは従来型。新型はクーリングチャンネル位置が変わり、薄肉で軽量化も行われているようにみえる。
ディーゼルの音作りのこだわりがスゴイ
デンソー製の超高応答i-ARTインジェクターの導入で、短時間の多段噴射を実現。メイン噴射を多段化し、さらにアフター噴射をメイン噴射に近づけて燃焼時間を短縮。
最大6回の近接噴射で上死点付近で連続した燃焼を行い、熱発生量の傾き(燃焼遅れ)を抑制してノック音も静かにする。加速時は音を感じさせる制御とする。
ボディは追突時の安全性をしっかり確保

前面衝突での安全性はもちろん、追突された時の安全性も追求した。公的な安全基準では燃料漏れの規定だけだがマツダは独自基準で最後席の生存空間と非衝突側のリヤドア開け性の確保を確認。
3列目までカーテンエアバッグ

3列目まで覆うカーテンエアバッグを装備。実際の側面衝突で3列目乗員の頭部がDピラートリムに衝突する場合、十分カバーできるのか見た目上ちょっと心配になった。
80km/h 70%オフセット追突でもドア開け可能な強度

リヤのストレートフレーム構造とCピラーの2股構造で被衝突時の荷重をCピラーへ逃がす。3列目シート後方がクラッシャブルゾーンとなる。
CX-9譲りのボディを強化してガッチリしたボディ剛性

Cピラー下にマツダ初の2又構造を採用し、ダンパーからの入力を途切れなくCピラーへ伝達。
フロアパネルは板厚アップで強化。Dピラー付近の吸音材やリヤフェンダー制振材のほか、サスペンションの共振重複を避けて粗粒路のロードノイズを下げている。
トレーラーヒッチも取り付け可能でふらつき制御も導入
750kg以下のキャンピングトレーラーなどをトーイングできる。また、TSA(トレーラースタビリティアシスト)でトレーラーの横揺れを収束させる制御を全車標準装備する。
エアコンは内外気2層式を採用
前席フルオートA/Cは、キャビンの上側に外気、足元に内気を循環させる内外気2層式を国内初採用。フロントウインドウの曇りを防ぎつつ内気使用率を高めて暖房効率向上。
360度モニターを採用
車両の全周が見える360度モニターで狭い場所の取り回しをサポート。ただし、フロントカメラ画像の歪みが目立つなど、画質の改善余地があると感じる。
Test&Impression

前後席間の会話のしやすさが実感できる
3列目のシートの乗降性はミニバンのようにスムーズにはいかないものの、座ってみるとゆったり乗れる。ヘッドクリアランスは座高の高い筆者ではギリギリだが、座り心地がよく走行中でも前席との会話もしやすく、ロードノイズや風切り音、さらにはラゲッジ側からの透過音はしっかり抑えている。2代目CX-5も初代から比べると造りが丁寧になり、内装の隙間をピッチリ詰めているが、CX-8もその手法を受け継ぎ、より静かに仕上げてある。リヤタイヤハウス上になる部分もカップホルダー兼アームレストとなっていて、前側のアーチ部にはくぼみが設けてあって指がかけやすくされているなど降車がスムーズにできるようになっている。ただし3列目はリヤタイヤ付近なので酔う動きではないがバウンスを感じやすい。フットスペースも含めて快適なのは当然ながら2列目となる。
先進装備では、追従クルーズコントロールが全車速対応となっているので高速道路の渋滞で停車した時も、ステアリングのリジュームボタンやアクセルのチョイ踏みで再発進できる。ただし、先行車発進お知らせ機能はついていない。また、今回から採用されている車両周辺の360度モニターだが、フロントカメラの像の歪みやボケが目立つので、もう少し見やすくしてほしいところ。シートは気泡の細かい高減衰ウレタンで振動もよく抑えてあるが、電動パワーシートのスライド音がこのクラスにしては大きめ(ネジのノイズなのかモーターの防振が甘い?)。
大柄に見えるボディも運転はしやすく、Gベクタリングコントロールも貢献していいるのか、コーナリングのグラつきやステアリングの修正が少ないのは、マツダ車のよいところ。ステアリングの中立付近も渋さがなく、直線時の微小な進路修正をする際も力を入れなくてもじわりとスムーズに動かせる。この電動パワステのチューニングもとても好ましく思えた。

発進加速特性
ローでの加速は、ターボの過給よりエンジン回転数の上昇が早いので加速Gのピークは最大トルク点を過ぎた3000rpmになっているが、立ち上がりそのものは滑らかで段付き感は少ない。迫力ある加速ではないが、通常は余裕のある運転ができる。
提供元:オートメカニック