新車試乗レポート
更新日:2025.04.02 / 掲載日:2025.04.02
新型パナメーラは超高級車と911のいいところ取り【ポルシェ】【石井昌道】

文●石井昌道 写真●澤田和久
2009年に初代モデルがデビューしたパナメーラはポルシェ初の4シーター・4ドアセダン。ポルシェならではのスポーティさにくわえて快適性の高さも特徴の一つだった。本国で2023年末に発表された3代目はさらにダイナミックなパフォーマンスを獲得するとともにデジタライズにも力を入れている。
3世代目に進化したポルシェの4ドアセダン

プラットフォームは2代目のMSBを改良したものでボディサイズはほとんどかわらない。フロントマスクはエアインテークが大型化されアグレッシブになるとともに、ボンネットの両端が911のように盛り上がった。サイドビューではウインドーグラフィックが変更され、スポーティさを強調。先代をベースにスポーツセダンらしさを伸ばしたデザインだ。
インテリアはデジタライズが進化するとともに、先代ではセンターで存在感があった大きなシフトレバーが、ステアリングホイール脇の小さなシフトセレクターにとって代わるなどスッキリとした印象となっている。

日本仕様で用意されるのはパナメーラ、パナメーラ4、パナメーラGTSのガソリン車に、パナメーラ4 Eハイブリッド、パナメーラ4S Eハイブリッド、パナメーラ・ターボ Eハイブリッド、パナメーラ・ターボ S Eハイブリッドのハイブリッド車の合計7モデル。今回は素のモデルであるパナメーラに試乗した。
エンジンはV6ターボで353馬力、シャシーの制御技術も進化

エンジンは2.9L V6ターボで最高出力353馬力、最大トルク500Nm。ブースト圧、燃料噴射流量、点火時期などを最適化することで先代に比べると23馬力、50Nmのスープアップが果たされている。シャシーはPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメント・システム)を含むアダプティブ・エアサスペンションが標準装備。ダンパーには新たに2バルブ技術を採用して縮み側と伸び側を独立制御することで快適性とスポーティさの幅をさらに拡大したという。
コックピットからの眺めは911のようになった

コクピットに収まるとボンネットの両脇が盛り上がっていることで眺めが911のよう。ファンにとって嬉しいだけではなく、車両感覚が掴みやすいという機能もある。エンジンスタートはキーシリンダー型ではなく、今となっては一般的なプッシュボタン式、前述のようにシフトセレクターがステアリング脇にあるのが先代との違いとなっている。



街中では超高級車レベルの快適性だが飛ばせばポルシェらしくなる

街中を走り始めるとエンジンは驚くほど静かでジェントルだ。PDKもトルクコンバーター式ATかと勘違いするほどにスムーズで快適なセダンとしての進化を感じさせる。だが、高速道路やワインディングロードでひとたびアクセルを踏み込めば、心地いいスポーツサウンドを奏で始める。決して大音量ではないが、雑味のない音質で、優れたV6ならではのシュンシュンと活発に回転上昇していく様が楽しめる。スポーツモードにすればPDKは鋭さを増し、軽いシフトショックとともに素早くシフトチェンジをみせる。
新しいアダプティブ・エアサスペンションは路面からの入力の角を見事に丸めていて、低速域でのゴツゴツ感はまるでなし。超高級車の乗り味にも近いのだが、速度をあげていったときにポルシェらしさが表れてくる。高速になればなるほど路面に吸い付いていくような感覚が強く、圧倒的な安定感がある。そのときの乗り心地は硬質だが角はないスポーツセダンの理想的なフィーリングだ。超高速でどこまでも突っ走っていけそうな手応えがある。
ワインディングロードでは、ステアリング周りの剛性感の高さと、嫌なフリクション感はないのにずっしりとした重みがあるフィーリングにポルシェらしさを感じる。インフォメーション性も高く、路面とタイヤのグリップ状況が手に取るようにわかる。操舵していけばノーズが正確に動き、思い描いたラインを通っていける。今回の試乗車はFRだが、操縦安定性やトラクション性能も文句なし。もっとパワーがあって4WDのモデルも気になるが、まずはエントリーモデルのパナメーラで素性の高さを知れた。
完成度はさらに高まり、911のようなフィーリングが味わえる
新型パナメーラの快適性とスポーティさは、さらに高い次元でバランスしている。そのうえで、911を連想させるポルシェらしさが濃厚になったのだ。