新車試乗レポート
更新日:2023.11.06 / 掲載日:2023.11.06

【BMW iX5ハイドロジェン】水素を燃料にする未来のBMW

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 東京モーターショー改めジャパンモビリティショーのBMWのプレスブリーフィングでは本国から来日した取締役会会長のオリバー・ツィプセ氏が登壇した。氏は学生時代を日本で過ごし一時期はデンソーに籍を置き、配偶者は日本人。個人的に日本の文化と深い繋がりを感じるという知日家・親日家でもある。2019年から同職に就き、不安定な情勢のなかでも堅調な業績を達成するとともに電動化でもリーダシップを奮った。プレスブリーフィングでは「この10年間、トヨタとのパートナーシップの恩恵を享受しています。水素を燃料とする分野においてはiX5ハイドロジェンによる公道実験を開始しました」。

トヨタとのパートナーシップで実現した水素燃料電池車が日本に上陸

BMW iX5ハイドロジェン

 BMWとトヨタは2011年から環境技術での提携に合意し、2013年には提携を拡大して正式契約。2019年に発売されたGRスープラは一つの目に見える成果で、こちらはBMWの技術がトヨタに提供されたカタチだが、FCEV(水素燃料電池車)に関しては先行してるトヨタの技術がBMWに提供される。2020年代後半にFCEVを市場投入する予定となっており、それに先駆けた実験車両がiX5ハイドロジェン。約100台を製作して公道での実験を開始しているが、日本にも3台が持ち込まれ、9月から走り始めた。

興味深いのはトヨタMIRAIよりも強力な駆動用モーター

BMW X5とiX5ハイドロジェンを並べて。水素燃料電池車は、水素から電力を作り出し、モーターで駆動する

 水素燃料電池のセルはトヨタから調達し、BMW側でFCスタックに組み立てられる。興味深いのは、パワーソースの大元となるFCスタックはトヨタMIRAIが128kW(174PS)なのに対して125kW(170PS)とほぼ同等なのだが、駆動用モーターはMIRAIが134kW(182PS)のところ295kW(401PS)と大幅に大きいことだ。

 FCEVは、燃料タンクの水素と大気中の酸素をFCスタックで化学反応させて発電し、それで駆動用モーターを動かすのが基本構造。それに加えてエンジンのハイブリッドカーと同じく回生エネルギーを蓄えるバッファ的な役割として、駆動用バッテリーを搭載している。MIRAIの場合、アクセルを全開にしたときには134kWのモーターを回すためには128kWのFCスタックだけでは足りず、バッテリーに蓄えた電気を持ち出して6kW分を補う。シリーズ・ハイブリッドと似た考え方だ。BMWは駆け抜ける歓びを大切にすること、日本よりも速度域の高い欧州の高速道路での加速力を得るために、バッテリーは特別に開発した高出力タイプで170kW(231PS)ものパワーを誇る。FCスタックの125kWとプラスしてちょうどモーターの295kWとなる計算だ。

0-100km/h加速は6秒以下とされておりMIRAIの9秒を大きく上回る。

 もちろんバッテリーの電力がなくなれば295kWでモーターを回すことはできなくなるが、公道で全開加速を続けるのはせいぜい数秒といったところなので、パワーダウンして困るということはなさそうだ。もしもFCスタックが発電する125kWだけになっても普通に走る分には問題ないだろう。

 ただし、燃料消費率はMIRAIのほうがずっといい。車両重量の違いもあるが、MIRAIは燃料タンク容量が5.6kgで一充填走行距離が750~850kmなのに対して、iX5ハイドロジェンは燃料タンク容量6kgで一充填走行距離は500km程度となっている。

スムーズでじつに快適な走行フィーリングで静粛性も高い

BMW iX5ハイドロジェン

 iX5ハイドロジェンを走らせた印象は、あたりまえだがBEVとほとんど同様でモーターゆえの分厚いトルクで走り出しから頼もしく、スムーズでじつに快適だ。FCEVはアクセルを踏み込むと空気を吸い込むので、強い加速時などには吸気音がするものだが、iX5ハイドロジェンではほとんどそれが聞こえず、静粛性でもBEV並だ。

 ためしにアクセルを踏み込んでみると、さすがは0-100km/h加速6秒以下を誇るだけあってかなりの速さだ。あっという間に制限速度に達するので、普通のシチュエーションではバッテリーの電力を使い切ることはまずないだろうということも確認できた。

 感動的なのはベースのX5のシャシー性能が素晴らしく、モーター駆動との組み合わせでさらに強調された感があることだ。BMWらしく、少し引き締まってはいるものの、しなやかさを合わせもつのでゴツゴツするなど不快なことはまったくない。ハンドリングは正確性が高く、ドライバーの思い通りにコーナーを駆け抜けていける。操縦安定性と快適性、それにドライビングの楽しさが高い次元でバランスしているのだ。

 ちなみに車両重量は、資料によるとPHEV以上BEV以下とされているが、車検証で確認すると2470kgだった。3.0L直列6気筒ガソリンターボを搭載するPHEVのX5 xDrive50e M Sportは2500kgなのでiX5ハイドロジェンはPHEV以下ともいえるが、4WDではなくRWDなのでその分を考慮すれば、PHEVと同等かそれ以上といったところだろう。3.0L直列6気筒ディーゼルのX5 xDrive35dは2370kg、4.4L V型8気筒ガソリンターボのX5 M60i xDriveは2390kgで、エンジン車との差は少ない。X5ベースのBEVはまだないが、おそらく2600kg前後にはなるだろう。

 FCEVの大きなメリットの一つが充填時間の短さで、2つの70Mpaの燃料タンクを満タンにするのに3~4分ぐらいしかかからない。今回は40%程度まで減った状態から100%にしたが3分程度だった。

自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 いま現在は日本の水素ステーションは170箇所弱で、十分に足りているとまでは言えないものの、いかんせんFCEVの販売台数が少ないので、それでもインフラ過多で営業日や営業時間を短くして対応している状態。いざ、FCEVを購入しても、水素ステーションの営業を確認しながら計画的に充填する必要はあるが、首都圏などならば実用可能といったところだろう。BEVに対してFCEVは大型車ほどメリットがいきるとあって、バスやトラックなどでは早い普及が見込まれているので、それが実現すれば乗用車も使いやすくなるはずだ。

 いずれにせよ、BMWはFCEVでも走りがいいのはたしか。そう遠くない将来の市販化に期待したいところだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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