新車試乗レポート
更新日:2023.09.07 / 掲載日:2023.09.02

【レクサス UX300e】電気自動車の実力を実車でテスト!【2023年改良新型】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 

 欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急伸。そうした中、近い将来、EV専業へと舵を切ることを決定・発表するブランドも増えている。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回フォーカスするのは先日、商品改良を受けたレクサス「UX300e」。新開発の電池パック採用で航続距離が大幅に伸びたコンパクトEVは、どんな実力を披露してくれるのだろうか?

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レクサス UX300eのプロフィール

レクサス UX300e “version L”

 レクサスで最もコンパクトなSUV「UX」をベースとするEV「UX300e」が誕生したのは2020年10月のこと。個性的なデザインとタウンユースでも使い勝手に優れるボディサイズ、EVならではの上質なドライビングフィールと優れた静粛性などがユーザーから高く評価されてきた。

 そんな、レクサス初のピュアEVであると同時に、レクサスブランドを展開するトヨタ自動車にとっても初となる量産EVとなったUX300eが、先頃、商品改良を受けた。その内容はかなり大がかりだ。

 初期のUX300eは、フロア下に54.4kWhのリチウムイオン電池を搭載。最高出力203ps、最大トルク30.5kgmを発生するモーターでフロントタイヤを駆動し、航続距離はWLTCモードで367kmをマークしていた。

 それに対し、商品改良を受けた新型は、バッテリーパックを一新。電池容量が72.8kWhへと増強され、航続距離は初期モデル比で約40%長い512kmとなるなど、EVとしての基本性能が進化した。

 併せて、走り味の深化にもチャレンジ。従来から標準装備されるリアの“パフォーマンスダンパー”に加え、ボディのスポット溶接打点を20点追加することで、ボディ剛性をさらに強化している。

 また、バッテリーパックをフロア下に配置したEVならではの低重心パッケージの基本性能をさらに引き上げるべく、テストコースで徹底的な走り込みを実施。電動パワーステアリングやショックアブソーバーを最適化し、すっきりと奥深い走り味を実現したという。

 エクステリアデザインに変更はないが、インテリアではコックピットの使い勝手向上が図られている。

 マルチメディアシステムを操作/表示するディスプレイは、大型化&高解像度化を図るとともにタッチ操作に対応。併せて、インパネやコンソール周辺の形状とスイッチレイアウトが最適化されたほか、コンソール前方に充電用USB-Cコネクターを2個新設するなど、利便性を向上させている。

 ちなみに、全長4495mm、全幅1840mm、全高1540mm、ホイールベース2640mmというコンパクトなボディサイズは不変。機械式立体駐車場にも収まる全高ゆえ、都市部での取り回しも苦にならない。

  • ■グレード構成&価格
  • ・「“version L”」(685万円)
  • ・「“version C”」(630万円)
  • ■電費データ
  • ◎交流電力量消費率
  • ・WLTCモード:141Wh/km
  •  >>>市街地モード:125Wh/km
  •  >>>郊外モード:133Wh/km
  •  >>>高速道路モード:155Wh/km
  • ◎一充電走行距離
  • ・WLTCモード:512km

【高速道路】バッテリー容量が増えても電費には影響なし

 2035年にBEV専売ブランドとなる予定のレクサスだが、最初の市販BEVは2020年発売のUX300e。

 エンジン車/ハイブリッドカーのUXをBEV化したもので、バッテリー容量は54.4kWh。当時、CセグメントのコンバートBEVとしてはまずまずだったが、2023年のマイナーチェンジで一気に72.8kWhまで増量。一充電走行距離は367kmから512kmとなり、実用性の一つの目安といわれる500kmを超えた。

 今回は、そのマイナーチェンジ後のモデルをテストし、以前のデータと比較してみたい。
 高速道路電費は
制限速度100km/h区間のその1が5.5km/kWh、その4が6.3km/kWh、
制限速度70km/h区間のその2が7.3km/kWh、その3が6.5km/kWh。
 以前にテストしたマイナーチェンジ前のモデルの高速電費は
制限速度100km/h区間のその1が6.5km/kWh、その4が5.8km/kWh、
制限速度70km/h区間のその2が7.4km/kWh、その3が7.0km/kWh。
 バッテリー増量で車両重量はマイナーチェンジ前に比べて20kg増の1820kgで、WLTCモード電費は140Wh/km(7.14km/kWh)から141Wh/km(7.09km/kWh)へとわずかに下がったが、高速道路の実電費はほとんどかわらない。

 以前のテストは、その1で交通量が多くて平均速度が下がって電費が有利に、その4は逆に交通量が少なくて制限速度付近で走り続けられた。今回のテストはその1とその4の状況が、ちょうど逆で平均はほぼ同じということになった。

【ワインディング】改良前よりも回生効率が改善されている

 

 約13kmの距離で高低差が963mと大きな箱根ターンパイクはどのBEVでも登りは激しく電力消費する。

 ここでの電費は1.7km/kWhで、以前のマイナーチェンジ前のモデルとまったく同じだった。

 ちなみに外気温は以前が23〜25℃、今回が27.5〜30℃でコンディションはそれほどかわりない。下りでは電費計からの計算で3.7kWhを回生したことになる。

 以前のテストは2.55kWhだったので、それなりに差がついた。モーターは同じもので、コンディションにも差がないので、差の理由はわからないが、もしかしたらバッテリー容量が大きいほど電気が入りやすい影響があるのかもしれない。

 いずれにせよ、回生量はこれまでのEVテストの平均的な数値ではある。

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】道路情報の影響か、電費データは振るわなかった

 一般道での電費は以前のマイナーチェンジ前のモデルが5.9km/kWhと優秀だったのに対して、今回は4.1km/kWhと今ひとつ奮わなかった。

 ストップ&ゴーの多い一般道は重量差の影響が大きいが、20kg程度ならそれほど大きな差になるとは思えない。

 一般道は信号のタイミングや周囲の交通の流れの影響を受けやすいので、データも変動しやすい。その影響だろう。とはいえ、1820kgの車両重量ならば5km/kWh程度は期待したいところだ。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】充電効率の改善を確認。航続距離も伸びて実用的になった

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 スタート時の走行可能距離428km。そこから158km走行した復路・海老名サービスエリアに到着したときには走行可能距離244kmになっていたが、出力40kWの急速充電器を30分使用して15.6kWhが充電され、走行可能距離353kmに回復した。

 充電開始直後の出力は36.5kWで、終了間際は23kWまで絞られた。以前は14.4kWhだったので少しだけいい数字ではある。同じ充電器でも19kW入るモデルもあるので、もう少し期待したいところだ。

 レクサスのBEVはいまだにバッテリー残量を%表示していないので不便だ。トヨタbZ4Xは改良で表示されるようになったが、UXのメーターだと難しいのかもしれない。

センタートンネルがあり、足元は少々狭いが、シート座面高さ・長さは適切

レクサス UX300eはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 バッテリーを増量し、一充電走行距離が500km以上に伸びたことでかなり実用性はあがっただろう。

 マイナーチェンジ前のモデルでは実際の航続距離を250kmぐらいに見積もる必要があり、ロングドライブでは使いづらかったが、ニューモデルならば400kmぐらいが見込めてだいぶいい。

 重量増によっての走りへの影響はほとんど見られず、BEVらしい低重心感と綺麗な曲がり方が魅力。レクサスのBEVもどんどんと進化していくだろうが、初号機にもきちんと手を入れてきたことには好感が持てる。

  • レクサス UX300e “version L”
  • ■全長×全幅×全高
  • :4495×1840×1540mm
  • ■ホイールベース:2640mm
  • ■車両重量:1820kg
  • ■バッテリー総電力量:72.8kWh
  • ■モーター最高出力:203ps
  • ■モーター最大トルク:30.5kgm
  • ■サスペンション前/後:ストラット/ダブルウイッシュボーン
  • ■ブレーキ前後:Vディスク
  • ■タイヤ前後:225/50R18
  • 取材車オプション
  • 三眼フルLEDヘッドランプ(ロー・ハイビーム)&LEDフロントターンシグナルランプ+アダプティブハイビームシステム[AHS]+ヘッドランプクリーナー+寒冷地仕様(LEDリヤフォグランプ・ウインドシールドデアイサー等)、ブラインドスポットモニター[BSM]+パーキングサポートブレーキ(前後方静止物+後方接近車両)[PKSB]+パノラミックビューモニター(床下透過表示機能付)、デジタルキー、おくだけ充電、ルーフレール、カラーヘッドアップディスプレイ
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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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