新車試乗レポート
更新日:2023.12.24 / 掲載日:2023.08.29
オン/オフ楽しめる個性派ブランド「JEEP」の歴史と狙い目モデル
一昔前は、荒野をねじ伏せる覇者としてマニア的な人気に留まっていたジープだが、2010年代に登場した新世代モデルたちのヒットもあって立ち位置が一変。いまや幅広いユーザー層からも注目を集めるブランドになっている。今回はそんなジープのこれまでの成長の過程と、狙い目のオススメモデルを紹介しよう。
●文:まるも亜希子/月刊自家用車編集部
「オフ」はもちろん「オン」でも楽しめる! 『JEEP』愛すべき個性派のススメ
世界中で愛され続ける偉大なオフローダーブランド
米軍の軍用車をルーツとして、1941年から80年以上にわたり、本格4×4のSUV専門メーカーとして歩んできたジープ。その歴史は、「どこへでも行ける。何でもできる。」というスピリットを載せて、誰もが胸に秘める冒険心を掘り起こし、夢に向かう勇気を湧きあがらせ、たとえ目の前の道が険しくとも乗り越えていけることを、多くの人々に証明してきた歴史でもある。
日本では、ほぼ骨格だけの四角いボディにオーバーフェンダー、ガッシリとしたオフロードタイヤを履くようなワイルドでシンプルなSUVがジープの代名詞的存在となっているが、実際には1960年代から乗用を意識した都会的な要素を取り入れたデザインのジープが登場している。ただし、伝統のラダーフレームやリジッドアクスルといったメカニズムをはじめ、丸型ヘッドライト、7スロットグリル、台形オーバーフェンダーやクロムシェル型のボンネットフードといった、アイコン的な要素は現代にしっかりと受け継がれている。
4×4性能は日々進化を遂げており、米国のネバダ州から険しい山脈を超えてカリフォルニア州へと続く全長22マイルの「ルコビコントレイル」と呼ばれる道で、最も過酷といえる試験を繰り返し、クリアしたモデルは「トレイル・レイテッド」のバッジが与えられる。スイッチを押すだけでリヤ/フロントまたはリヤのみをロックし、欲しいところに駆動力を集中できるトゥルロックなど、たとえ路面に接地していない車輪があっても、悪路から脱出できるように考慮されているのがジープの4×4だ。
また、川を渡ったり岩場を登ったりと、想像を絶する地形を越えることになっても、車体の底部にあるトランスミッションなど大事な部分を損傷しないために、対地障害角をしっかり確保しつつ、スキッドプレートなどで頑丈に保護したり、いかなる路面でも水平感覚が取りやすく、車両感覚が狂いにくいよう、奥行きがなく切り立ったスクエアなフロントウインドウを採用していたりと、全方位でタフな走破性もジープが一貫して実現しているところだ。
現行ラインナップにも卓越した個性は受け継がれる
こうした、伝統を守りながら進化を続けていく凛とした姿勢は、いかにもタフなエクステリアの魅力と相まって、ファンを増やし続ける要因となっている。
そんなジープが日本で最も支持を得ているのが、1987年に誕生したラングラー。当初は2ドア/4人乗りモデルが主流で、オフロード走行に本物を求めるマニアックな人たちに好まれる傾向があったが、ジープの世界観に憧れ、「いつかは」と心に秘めていたファンは多かったのだろう。
2007年に4ドア/5人乗りモデルが登場すると、人気はじわじわと上昇。2010年代に入って世界的なSUVブームが訪れると、いわゆる外観だけタフで走破性はオンロード重視というクロスオーバー系が続々と登場する中、ラングラーが放つ本物感は輝きを増し、現在では日本はアメリカに次いで2番目に、ラングラーが売れる国となっている。
もちろん、その流れの中にはラングラーよりもさらに都会的なデザインと、乗用としての快適性や、取り回し性能をアップしたチェロキー/グランドチェロキー、ジープ初のコンパクトSUVとなるパトリオットやコンパスといったモデルの躍進がある。2015年にはついに、ジープが初めてつくったスモールSUVであるレネゲードが登場。タウンユースがメインの人や、クルマをファッションとして捉えている人など、これまでのジープユーザーとは別の人たちにも強くアピールするモデルとなっている。
というのも、レネゲードのデザインはとてもユニークで、遊び心が満載。たとえばテールランプはアメリカ軍が使用する「ジェリ缶」のマークである“X”がモチーフになっていたり、給油口を開けると蜘蛛の巣が張っているようなでデザインの演出があったり、インテリアでもメーターの端っこに泥が跳ねたような塗装があるなど、見ているだけでもワクワクする。日常の中でも冒険心を掻き立ててくれるようなデザインが、ジープの世界への間口を広げてくれたことは間違いない。
そして現在、ジープではレネゲードをはじめラングラーやグランドチェロキーなど、外部充電ができてモーターのみの走行ができるPHEVが続々と登場している。ジープのスピリットはそのままに、より環境にも配慮したモデルたちが、今後も私たちを魅了し続けてくれるにちがいない。
JEEP レネゲード
小さくても本格メカを搭載
乗る人を選ばない新世代ジープ
全長が約4.2mのスモールSUVとして、アメリカでデザインされ、イタリアで生産されるジープのエントリーモデルがレネゲードだ。メカニズムは当時の同じFCA傘下のブランド、フィアット・500Xと共用となっているが、その乗り味はまったく別のキャラクターに仕上がっている。
レネゲードには本格的なオフロード走行向けのトレイルホークがあり、スモールクラス唯一のリヤアクスル分離機構や、ローレンジのパワートランスファーユニットを搭載するなど、ジープの名に恥じない4×4性能を実現しているのが大きな魅力だ。
そしてデザインには数々の遊び心が散りばめられ、テールランプにジェリ缶をモチーフとした「X」があったり、7スロットグリルと丸型ヘッドランプのアイコンがあちこちに隠れているなど、乗るたびに楽しい気分にさせてくれる。運転に不慣れな人でも安心して乗れるよう、視界の良さや水平の取りやすさ、安全装備なども充実。この手のクルマは初めてというユーザーにも、安心してオススメすることができる一台だ。
PHEVの「4xe」を主力モデルに拡大中!
近年、ジープが力を入れているのが電動化戦略。主要モデルにPHEVモデルを積極導入するほか、2030年までにアメリカの新車販売の50%、ヨーロッパで販売する100%の製品をバッテリーエレクトリック(BEV)にすることも明言している。
JEEP グランドチェロキー
名車「ワゴニア」を彷彿させる
ジープのフラッグシップモデル
ジープファミリーの中では都会派でありながら、いざとなれば本物の走破性を発揮できるラグジュアリーSUVという唯一無二の存在であるグランドチェロキー。
2022年に登場した最新型は、ラグジュアリーSUVの始祖とも言われる1960年代の初代ワゴニアからヒントを得たデザインながら、パワートレーンの冷却状況に応じてフラップを自動制御するアクティブグリルシャッターを採用するなど、新世代の技術も盛り込まれている。
ボディサイズは全長5.2mとなり、2列シート5人乗りと3列シート6人/7人乗りをラインナップ。5人乗りに2ℓ直4ターボ、6/7人乗りに3.5ℓV6エンジンを搭載し、5人乗りにはPHEVとなる「4xe」もある。
室内はゆったりとして快適で、とくに3列目シートの実用性がかなり高いことも、このモデルならではの強み。ラゲッジスペースも広く、パークモードにするとフロアが低くなるなど、日常からアウトドアレジャーまで使いやすくなる工夫も見どころ。実用SUVとしても高い資質を持つことも魅力だ。
JEEP ラングラー
古き佳き時代のジープを彷彿させるリアル・オフローダーの傑作
2018年秋に11年ぶりにフルモデルチェンジして登場した最新型のラングラーは、全長約4.8mでデザインはキープコンセプトのまま、燃費性能アップ、先進安全装備の充実、室内快適性アップをすべて実現。最小回転半径は6.2mにまで小さくなり、街中での取り回しのしやすさと、高速道路での静粛性や乗り心地も進化している。
とはいえ、本物のオフロード性能は譲れないところで、4×4性能はマニュアルで切り替える伝統的なパートタイムに加えて、自動的に前後輪の駆動力を切り替えるフルタイム方式を採用。ラングラー史上最高の走破性を手にしている。昔ながらのタフでワイルドな魅力もまったく犠牲になっておらず、「フリーダムトップ」と呼ばれる3ピースのモジュラーハードトップは、従来より簡単に取り外しができ、手軽にオープンエアが楽しめるのもいいところ。現在のジープのラインナップの中では一番スパルタンなモデルで、ジープが培った伝統の重みを実感できる稀有な存在といえよう。
JEEP コマンダー
3列シート・7人乗りをコンセプトに開発されたミッドサイズSUV。コンパスの少し上のモデルとなる。国内向けの現行型は2021年にデビューした2代目モデルで、パワーユニットは2ℓ直4ターボを搭載。
JEEP コンパス
2017年にデビューした現行型(2代目)は、レネゲードのコンポーネンツを活用。ホイールベースを拡大したロングストレッチ仕様といえるSUVで、後席まわりの快適性が強化されている。
JEEP グラディエーター
ラングラーとコンポーネンツを共有するピックアップトラック。ロックトラックフルタイム4×4システムを採用するなど走る道を選ばないタフネスさも大きな特徴だ。国内仕様車は2021年に導入を開始している。