新車試乗レポート
更新日:2023.06.29 / 掲載日:2023.06.28
【マツダ MAZDA2】クルマの楽しさを教えてくれる良質なコンパクトカー
文と写真●ユニット・コンパス
乗ってみると、本当に良心的でいいコンパクトカーだと思う。
マイナーチェンジ(2023年商品改良車)をきっかけに、久しぶりにMAZDA2をドライブした素直な感想だ。
贅沢なメカニズムを採用しマツダならではの世界観
軽自動車全盛期とも言える現代において、2BOXタイプのコンパクトカーを選ぶのは、メジャーなことではないのかもしれない。
でも、このクルマのことが気になっているのだったら、迷っていないで、手に入れたほうがいい。幸せというのは、いつも失われてからそのありがたみに気が付くものだから。
というのも、昨今の自動車業界の状況からすると、MAZDA2のようなコンパクトカーは、今後メカやデザインに独自性を持たせることが難しい想像できるからだ。
従来はCO2排出規制のレギュレーションが企業別平均だったため、CO2排出量が少ないコンパクトカーの存在はメーカーにとっても大切だった。しかし2035年には新車すべてが排ガスを出さないゼロエミッション車となることが義務付けられつつある今、利幅の少ないコンパクトカーは、ビジネス的にハイリスク・ローリターン。安全装備の義務化でコスト増が避けられないことを考えれば、次世代コンパクトカーは部品点数を少なくして、内容も極力シンプルにせざるを得ない。おそらく、新興国向けの商品を国内にも導入することになるだろう。
4気筒エンジン、ディーゼル、マニュアルトランスミッション……もはやこうしたメカのスペックでクルマを選ぶユーザーは少数派かもしれない。しかし、こうしたメカにメリットや優れた点がなければ、もともとマツダが採用する理由がない。コンパクトカーであっても、いやコンパクトカーだからこそ、マツダならではのクルマづくりを体験してほしい。そんな願いのこもったクルマだ。
2023年の改良で登場した新グレード「15BD」
新グレード「15BD」は、従来の「スマートエディションII」や「プロアクティブ」に相当するエントリーグレードにあたる。ガソリンとディーゼルのどちらも選択可能となっているが、試乗車はガソリン車だった。
改良型MAZDA2のポイントは、最大198通りから自分好みの1台に仕立て上げられるところにある。
スケートボードのブランクデッキ(無地の板)からインスパイアされたネーミングからわかるとおり、カスタマイズのベースというニュアンスが込められており、新色「エアストリームブルーメタリック」と「エアログレーメタリック」を含む11色のボディカラー&グリルパネル&ホイールカバー、3色のインパネが追加料金なしで選択可能。さらにメーカーオプションとしてブラックまたはホワイトのルーフフィルムも用意する。
カタログスペックとしては少々地味なガソリン車だが、乗ってみると良いクルマだ。
動きが軽やかで、コンパクトカーに期待する意のまま感が強いのだ。街中をヒラリヒラリと動き回っていると、自然と顔がほころんでくる。
その印象を生み出すのが1.5L直4ガソリンエンジン。このエンジンは2021年に改良を受けたものだが、現在のレベルで見ても非常に完成度が高い。燃料代高騰のいま、レギュラーガソリンという経済性も嬉しい。
アクセルを踏み込むと比較的高回転域まで積極的に使うセッティングだが、それがあまり気にならない。ノイズの抜けがよく、耳触りではないからだろう。
クルマを操っている実感も強く、免許取り立ての初心者から色々なクルマを乗り継いできたクルマ好きまで幅広く楽しませてくれるはずだ。
国産コンパクトカー唯一のディーゼル搭載モデル「XD」
もう1台試乗できたのが「XD SPORT+」。こちらは国産コンパクトで唯一の選択肢となるユニークなモデルだ。
ディーゼルのメリットは豊かなトルクにある。トルクに余裕があると、加速がよくなるため、クルマから頼もしい印象を受けるはずだ。誤解されやすいのだが、加速がいいといっても、停止状態からの発進加速がスポーツカーのように鋭いということではない。むしろそれを期待すると肩透かしを食うだろう。
このディーゼルエンジンが輝くのは走っていて、「もうちょっと速度を出したい」とドライバーが判断して、アクセルをグッと踏み込んだとき。たとえば高速道路の合流やクルージングからの追い越しなどがわかりやすい。運転が好きなひとでなくても、ガソリン車との違いはすぐにわかるだろう。
停車中に車外に出るとディーゼル車特有の音はする。でも、走行中になるとほとんど気にならない。むしろ高速道路などスピードレンジが高くなると、ディーゼル車の方が静かで快適な時間が多かった。
ただし、ディーゼルが上級モデルかと言えば、そうでもない。街中で使うことが多いユーザーなら、ガソリン車の方が軽快。ロングドライブや人や荷物を乗せた状態でもグイグイ走りたいというニーズに応えてくれるのがMAZDA2のディーゼルなのだ。
まとめ
燃費だけで比べたらハイブリッド車には敵わないし、背の高いモデルよりも車内空間は広くない。MAZDA2は、そうした採点方式よりも、見た目を気に入って選ぶようなクルマだろう。でも、ルックスで選んでもユーザーをガッカリさせない作りの良さがある。
仕事の道具ではないのだから、理屈だけのクルマ選びはつまらない。MAZDA2を選ぶカーライフはきっと豊かだし、運転も楽しい。そこには太鼓判が押せる。