新車試乗レポート
更新日:2022.11.29 / 掲載日:2022.11.11

トヨタ新型クラウンクロスオーバー グレード選びのコツはパワートレインの理解にあり!

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス
 全面刷新というより、生まれ変わったといった方がしっくりくるかもしれない。新クラウンシリーズの第一弾として登場したクラウンクロスオーバー。その出だしは順風満帆で、これから街角で見返る機会も増えてくるだろう。

 その姿は、一見、個性的な都会派クロスオーバーだが、構造的には独立したトランクを備えたセダンであることが大きな特徴だ。つまり、ほかのクロスオーバーや5ドアサルーンのように、キャビンとラゲッジスペースが繋がってないため、リヤまわりのボディ剛性の高さが持ち味となっている。その強みを活かしたフラッグシップグレードとなるのが、「RS」だ。ちなみに、先代同様に、「ロイヤルサルーン」の略ではなく、「ランナバウトスポーツ」であり、かつてのアスリートの系譜となるグレードだ。ただグレードによるビジュアルの差別化は少なく、21インチアルミホイールが専用デザインとなることやリヤテールのエンブレムが漆黒メッキとなる程度だ。最大の違いは、その心臓部にある。

新型クラウンのキャラクター性を見極めるカギはパワートレインにあり!

新開発の2.4Lターボエンジンの「デュアルブーストハイブリッドシステム」

 新型クラウンクロスオーバーのパワーユニットは、大きく二つに分かれる。全車ハイブリッド4WD「E-Four」であることは共通だが、前輪を受け持つハイブリッドパワートレインが異なり、トヨタスタンダードの2.5Lエンジン仕様の「THSⅡ」と新開発の2.4Lターボエンジンの「デュアルブーストハイブリッドシステム」があり、RS系には、後者が搭載されている。

 搭載される2.4L直列4気筒DOHC直噴ターボエンジンは、最高出力272馬力、最大トルク46.9kgmを発揮するパワフルなもの。さらにリヤには、「eAxle」と呼ぶ高性能化したリヤ用モーター駆動システムを搭載。後輪モーターは、THSシステムと比べ最高出力が約1.5倍となる59kW(80.2馬力)、最大トルクが約1.4倍の169Nmとなる。最も分かりやすいシステム最高出力を見てみると、THSⅡが172kW(234馬力)に対して、257kW(349馬力)と劇的に異なる。さらに指定燃料もTHSⅡは経済的なレギュラーガソリンだが、デュアルブーストハイブリッドシステムはハイオクガソリンなのだ。つまり新世代のスポーツハイブリッドシステムと捉えて良いだろう。

2.5Lエンジン仕様の「THSⅡ」

 エンジンだけでなく、ハイブリッドシステムもまったく異なる。THSⅡはシリーズパラレル式だが、デュアルブーストハイブリッドシステムはパラレル式となる。あえてトヨタのハイブリッド車のメインであるTHS系とは異なるシステムが構築された背景を要約すると、コンパクトかつ高性能なシステムを実現させることがねらい。さらにエンジンとモーターのそれぞれの強みを活かすことで、発進から加速初期ではモーターのレスポンスの良さを活かし、中速から高速域では、ターボエンジンによる加速の伸びの良さを味わえるようにしている。さら6速ATを組み合わせているので、パドルシフトによるダウンシフトによりエンジンブレーキが使えるのも強みだ。またeAxleには、THSⅡの「E-Four」と異なり、モーター機構の冷却を水冷式とするなど、性能をフルも引き出せる体制が取られているのも大きな特徴だ。有段ギアやeAxleの優位性は、このほかにもあり、今後の展開が楽しみなシステムといえる。ちなみにパワフルなフロントパワートレインとなるため、前輪駆動化は不可となり、4WDがマストとのこと。

「RS」はフラッグシップにふさわしいストレスフリーの走り

新型クラウンクロスオーバー RS

 RSを連れ出したのは、伊豆から箱根にかけてのワインディングが中心。全長4930㎜の巨大なボディでは、タイトなワインディングは不得意かと思いきや、鋭いコーナリングを見せる。これは細やかな4輪の駆動力制御に加え、DRCと呼ぶ後輪操舵システムの働きによるもの。ドライバーがコーナリング中に狙ったラインを駆け抜けられるように、クルマが助けてくれているわけだ。このようなシチュエーションでは、6速ATとの組み合わせも強みとなる。パドルシフトを積極的に使うことで、エンジンブレーキを使ったり、次の加速に向けて低いギアをキープしたりできるからだ。349馬力もあるシステム出力をフル引き出して走るのは、公道では難しい。それでも長く続く上り坂を、約1900㎏のボディを軽々と加速させてくれるシーンでも、新ハイブリッドの偉大さは実感できる。様々なシーンでストレスフリーなのは、フラッグシップグレードの証ともいえよう。

磨き上げられた「THSⅡ」は燃費性能に優れ、レギュラーガソリン仕様と経済的

新型クラウンクロスオーバー 2.5Lハイブリッド車

 今回、2.4Lターボハイブリッド車となる「RS」に乗ってみて、2.5Lハイブリッド車の良さも再認識できた。日本の道路事情では満足できるスペックを備え、2.4Lターボハイブリッド車と比べると、燃費も圧倒的に良い。なにしろ、WLTCモードだと、2.4Lターボハイブリッド車が15.7km/Lに対して、2.5Lハイブリッド車は、22.4km/Lと優秀。しかも燃料はレギュラーだ。クラウンらしい快適さを楽しみたいなら、2.5Lハイブリッド車で十分満足できるだろう。ただし、タイヤは19インチの方がベター。21インチと比べると、ロードノイズや路面からの衝撃も抑えてくれ、断然良い。ワインディングにも持ち出しても、十分楽しめ、軽快な走りで楽しませてくれる。ポイントは、THSⅡを磨き上げたことで、各部が洗練されており、回生ブレーキも強化されていること。これは走りの武器にもなりそうだ。

まとめ

 新ハイブリッドを武器に持つ「RS」は、かつて走り屋だった人に向けた走りのクロスオーバーであり、その期待に十分応えてくれるだろう。ただ誤解してはならないのは、ドライバーズクロスオーバーのキャラクターは、2.5Lハイブリッド車も受け継ぐこと。新型が目指したのは、オーナーカーのためのドライバーズサルーンであり、かつての後席の快適性が魅力であったロイヤルサルーンの系譜は、他のモデルで色濃く表現されるに違いない。クラウンシリーズの展開にも期待が膨らんだ、クラウンクロスオーバーとのひとときであった。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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