輸入車
更新日:2025.02.04 / 掲載日:2025.02.04

EVシフトは今後どうなる?電動化の“今”とこれからの選択肢【電動化最前線2025】

[ライフスタイルに合った1台を選ぶ]電動化最前線2025

写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年3号「[ライフスタイルに合った1台を選ぶ]電動化最前線2025」記事の内容です)

カーボンニュートラル社会実現のために始まった電動化。一時期は2020年代後半に内燃機関は販売禁止という説もあった。しかし、実際には内燃機関と電気自動車が共存する状況が続きそうだ。今回は、「次はEV」を考えている人から「まだまだエンジン」の人まで幅広い人々に役に立つ、電動化の今をお届けする。

VISUAL MODEL:BMW iX2 ●クーペの美しさ、SUVの多彩な使い勝手、そして電気自動車ならではの先進的な走りを1台で味わえるモデル。総電力量66.5kWhのバッテリーを搭載、一充電走行距離は最大460km(WLTCモード)。新車価格:742万円(iX2のみ)

「EVシフト逆風」、この先どうなる!? 輸入車 電動化の現在地

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ

多くのブランドがカーボンニュートラル実現のため、EVシフトを掲げ電気自動車の普及に邁進してきた。しかし、2024年から大きな逆風が吹いている状況だ。EVシフトは今後どうなるか、自動車ジャーナリストの石井昌道氏が解説する。

EVシフトが想定より進行しなかった理由

 2024年のテスラの世界販売台数は約179万台と対前年比を下まわった。前年は約181万台で微減ではあるものの、10年にわたって順調かつ急速な伸びを示してきたところにブレーキがかかった格好だ。その他の大手自動車メーカーも戦略を見直す動きが目立っている。
 そもそも化石燃料を使うエンジン車からBEVへシフトしていく戦略は、2050年のカーボンニュートラルという大目標へ向けたもので、そこから逆算して考えればすぐにでもBEVの普及を始めなければ間に合わないという理由から進められてきた。国や地域の規制および目標に対して自動車メーカーが合わせ込んだ格好で、肝心のユーザーの購入動機などは二の次。EVシフト初期は、新しいモノやテクノロジーに関心のあるアーリーアダプターが飛びついて順調に伸びたかに見えたが、それも一巡して落ち着いてしまったようだ。ドイツなど国によっては購入補助金が打ち切られたことも普及を阻む要因になっている。
 とはいえ、カーボンニュートラルを無視するわけにはいかず、中・長期的に見ればEVシフトは進めざるを得ない。直線的に右肩上がりになるのではなく、現在のような踊り場をいくつか経ながらも徐々に普及していくというのが大方の見立てだ。
 現在のBEVは、エンジン車用プラットフォームを改変したものが主流。BEV専用モデルもあるが、エンジン車と多くの部品等を共有していて、完全なBEV専用とは言い難い。2025〜2026年あたりには、完全なBEV専用プラットフォームが出てきてEVシフトの第2ステージに入るとみられてきたが、それも一部に限られるようだ。
 というのも、BEV専用と言いながらエンジン車にも転用できるプラットフォームが多い。エンジン車を置き換えるBEVだったところが、BEV優先でエンジン車も造れるというものに変化したのだ。まだまだエンジン車の需要に応えなくてはならないわけで、PHEVやMHEVにも力を入れざるを得ない。
 PHEVはBEVへのつなぎとして最も自然なカタチとして有望とみられてきたが、思うように需要は伸びていない。なんとかユーザーの関心を惹く魅力的な商品を生み出す必要がある。MHEVは既存のエンジン車の燃費およびCO2排出量削減に効くので、たとえばアウディのMHEVプラスのように、その効果を高める技術が今後も進むだろう。
 BEVにとってのキーファクターはバッテリーだ。特に低コスト化が課題だが、実現できれば普及につながる。現在の主流は正極にニッケル、マンガン、コバルトを使う三元系だが、それよりもコストが低いリン酸鉄系を採用する動きが出てきている。リン酸鉄系は技術的にも難しくはないが、中国メーカーが圧倒的なシェアを持って先行しているので、日欧米などが追従しても勝ち技とはなり得ないとも言われる。逆にハイテクで低コスト化のみならず高性能化も見込めるのが全固体電池で、2030年前後に実用化の見込みだ。
 いずれにせよ、バッテリーのブレークスルーが起きて価格が下がり、補助金に頼らずともユーザーが欲しいと思えるBEVが出てきてから本格的なEVシフトが始まるのだろう。

PROFILE:モータージャーナリスト 石井昌道/自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。幅広い知識と取材により、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

BMWは同一モデルにおいて純粋な電気自動車とガソリン車、ディーゼル車を用意する戦略をとる。

輸入車の電動化は以下の3つで構成される

電気自動車

 バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動して走行する電気自動車。走行中に温室効果ガスである二酸化炭素を排出しないゼロエミッションビークルとして、カーボンニュートラルに貢献する。航続距離を伸長するため、発電用エンジンを搭載するモデルも一部存在する。

プラグインハイブリッド

 外部からバッテリーに充電できるハイブリッド車。モーターのみで数十kmから100km程度走行できるため、日常的には電気自動車のように扱えるのが特徴。エンジンにモーターの出力を合わせることで大出力を実現したハイパフォーマンスモデルも存在する。

マイルドハイブリッド

 内燃機関パワートレインにモーターを組み込んだ電動車。アイドリングストップからの復帰や発進加速といったシーンでモーターを利用。モーターが内燃機関の弱点を補うため走行性能や快適性が向上する。バッテリー容量が小さいことから比較的低コストで実現できる。

主なブランド・グループの電動化戦略は?

|メルセデス・ベンツ|市場の動向を受けてエンジンの新開発も再開

 かつて、市場環境が整えば2030年までに100%BEVにする用意があると表明していたが、まさに市場が整っていない=BEVの需要が思うように伸びないことから撤回。2020年代後半にBEVとPHEVの合計が最大50%という計画になった。エンジンの新開発にも取り組むようだ。

|BMW グループ|パワートレインは全方位 車体設計全体で環境対応

 2025年末にはいよいよ新たなBEVシリーズであるノイエクラッセが発売されるが、BMWは以前からBEVに偏らず、MHEV、PHEV、FCEVなど全方位戦略で市場に対応していくことを表明。リサイクル材料の使用比率を上げていくなどの取り組みで、環境負荷を下げるかまえだ。

|フォルクスワーゲン グループ|急進的なEVシフトから計画を後ろ倒しに変更

 ドイツ勢のなかでは最もBEVに前のめりでMEBをはじめ専用プラットフォームを複数開発し、さらには次世代型もプラットフォームや独自の車両OSにも意欲的に取り組んでいたが、市場環境および開発の遅れから、計画は後ろ倒し。当面はMEBの改良型などで凌ぐようだ。

|ステランティス グループ|市場動向を見据えて戦略を一部転換

 2021年には4種類ものBEV専用プラットフォームの開発を表明していたが、需要が伸びないこともあって、同プラットフォームをMHEVやPHEVに転用することも可能だと言い直した。BEV優先というわけだ。電動化戦略は当初よりも後ろ倒しになるが、適宜進めていく予定。

|GM グループ|政策次第ではあるが電動化にも自信アリ

 米国はトランプ大統領次第でBEV政策が変わる可能性があるので難しいが、BEV、PHEV、HEVなど複数の選択肢を提供していく戦略を維持していくと表明している。BEVの需要は直線的右肩上がりではないが、ライバルよりもシェアを広げられると自信ものぞかせている。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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