新型車比較・ライバル車対決
更新日:2020.04.21 / 掲載日:2017.12.04
スイフトスポーツ vs デミオ
街乗りからツーリングまで、ある意味“頂上決戦”だ
エコ性能で内燃機系をリードするのがダウンサイジングターボとクリーンディーゼル。もっともディーゼルはターボと組み合わせてこそなので、ターボが“エコ”をリードしているわけだ。
どちらも低回転から広範囲で太いトルクを発生する。こうした特性を最大限に活かすには回転を上げず細かく変速し、早く巡航ギヤにシフト。多段ATとの相性がよく、また高速巡航に適している。
スイフトスポーツもデミオXD系も得意な走行パターンは共通しているが、中高回転域のエンジンフィールは違っている。デミオはディーゼルとしては伸びやかな高回転特性だが、軽く切れ味良く回るスイフトと比較すると重々しく感じられる。つまり、その名のとおりスイフトはスポーツモデルとしての高性能も備えているのだ。
スイフトはグレードコンセプトからしてサス設定も高速向けなのは当然。デミオは標準的なスモールカーだが、マツダの走りへのこだわりもあって、高速や山岳路での扱いやすさや安心感を重視。ともにスモールカーの標準的用途となる街乗りに寄せた低中速の乗り心地や軽い運転感覚ではない。硬めの乗り心地だが不快感はなく、車格に比べて質感が高い。コンパクトな車体と相まって街乗りにも使いやすいが、タウンカーとしてはコスパが悪い。ツーリング性能があってこそ、魅力倍増なのだ。
走行性能面で車格を超えた高速ツーリング適性を備える両車だが、もうひとつ重要な長所がある。運転支援機能である。両車ともにACCを採用しているのだ。
両車ともに全車速型ではなく、低速では使えないが、渋滞を除けば高速道路全域で使える。車線維持支援は警報に留まるデミオに対してスイフトは操舵アシスト付きLKAを採用。ただし、後方死角車両検知のBSM等の細かな運転支援機能はデミオが充実。スモールクラスと言えども上級クラスの水準を上回る運転支援機能がある。
例えばリタイヤ世代のように日常用途の頻度が高いから扱いやすい小さなクルマにダウンサイジング。でも、レジャー等の高速長距離で疲れるようなクルマは嫌。そう考えるユーザーにとって、この2車は条件をクリアしている。
デザインも含めてテイスト面では異なる2車だが、ツーリング適性は200万円クラスのモデルとは思えないレベル。ちょっと大袈裟な言い方をすれば、タウン&ツーリングの頂上決戦である。
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得意なレンジは異なるが、車格感ならデミオに軍配
最大トルクはデミオが勝るが、車重はスイフトが軽い。トルク/重量比はスイフトの勝ち。ただし、最大トルク発生回転数はスイフトが1000回転高く、100km/h巡航時の回転数もスイフトの2200回転に対してデミオは1800回転を下回る。加速性能ではスイフトが優れるが、どっしりした力強さでデミオに及ばない。こういった走行感覚の違いはフットワークにも当てはまり、スイフトはよく言えば軽やかだが、デミオに比べると細かな揺れが多い。落ち着きと力感あるいは走りの車格感を求めるならデミオが適している。
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監視機能ならデミオだが、スイフトの操舵支援が優秀
交通量の多い高速道路での強い味方・ACC機能に目立った違いはない。デミオの車線維持支援は区分線を踏むくらいのタイミングでブブブッという警報音を出す。車線逸脱警報としては標準的だ。スイフトのLKAはデミオより少し早いタイミングで自動修正操舵が介入。中央に引き戻すと言うより進行方向を揃えるような修正で違和感も少ない。手放し運転は厳禁だが何気に手を添えるような感じで車線を維持してくれる。隣接車線監視のBSMがないのはスイフトのハンデだが、それでも長距離の運転支援は一枚上手の出来だ。

スイフトスポーツ/オプションの単眼カメラ+レーザーレーダーはワイパー作動域におさめられ、雨天などの悪条件下での確実性を向上させている。

デミオ/側方から後方も監視することによって、死角からの車両接近や後退時のブレーキ支援を行う。ただし、操舵支援機能は搭載しない。
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小物入れや荷室が充実、街中の走りもいいスイフト
運転席周りの小物入れはスイフトが充実。荷室は若干デミオが広いが、後席格納時の大きな物の積みやすさはスイフト。ただし、どちらも余裕はない。街中での走りの心地よさはスイフト。デミオも悪くないが、低中速域の加減速の繰り返しでは軽快なエンジンフィールと低くクロスしたギヤレシオのスイフトのほうが馴染みやすい運転感覚である。狭い場所での取り回しに影響する車体周辺モニターは両車とも俯瞰式全周モニターを設定。表示機能に大きな隔たりはなく、コンパクトサイズと相まって狭い場所でも安心だ。

スイフトスポーツ/モーターサイクルのような2眼メーターデザインに非真円形状のステアリング、アルミ製スポーツペダル、そして赤の差し色などにより、派手すぎないスポーティ感を演出。

デミオ/視界の中央に回転計とHUD(ヘッドアップディスプレー)を配置。視線移動を抑えるシンプルなレイアウトだ。写真の赤内装は特別仕様「ノーブルクリムゾン」のもの。

スイフトスポーツ/前席はセミバケットシート。「スポーツ」を名乗りはするが、他のスイフトと同等のユーティリティを確保。オプション装備は先進安全装備関連のみであり、内装は単一設定だ。

デミオ/こちらは複数のコーディネートを設定。基本カラーは写真のピュアホワイトとブラックの2色、グレードにより仕上げも異なる。ほかに真っ赤な内装の特別使用車もある。

両車ともに荷室容量は車体サイズなりで、後席はダイブダウン機構などを持たない単純な6:4分割可倒式だ。開口部の設計などにより、スイフトの方が積み降ろしがやや楽。
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【結論】デミオの走りもいいが、装備とコスパでスイフト
高速長距離を前提に動力性能や操安性を評価するなら、デミオが優れている。巡航回転数の低さやどっしりと落ち着きのあるフットワークが決め手である。また、距離と燃料価格の両面でデミオの燃費はスイフトを圧倒する。しかし、車線維持支援が警報のみなのがウイークポイント。直進の据わりで勝っていても、操舵アシスト付き車線維持を行うスイフトのほうが気楽。同等の装備を揃えると多少安価なこともあり、スイフトを推す。ミッションは扱いのイージーさだけでなく、巡航回転数の低さからもATがいい。
【これが「買い!」】 SUZUKI スイフトスポーツ標準仕様+セーフティパッケージ(6AT)

スイフトスポーツ標準仕様+セーフティパッケージ(6AT)=199万2600円