新型車比較・ライバル車対決
更新日:2018.11.24 / 掲載日:2017.11.30
CX-5 vs エクストレイル
パワートレーンのみならず、適応用途でも考えたい2台
SUVと一括りにしているが内容は多様である。原点となるオフローダーは少数派となり、基本設計を乗用車系と共用するライトクロカンあるいはクロスオーバーが主流となった。CX‐5とエクストレイルはミドルサイズのクロスオーバーに属しているが、得意とする適応用途は少し異なる。
CX‐5は全天候型プレミアム&ツーリングカーのキャラが濃く、アウトドアレジャー向けワゴンとしてのユーティリティには関心が低い。エクストレイルはファミリー&レジャー向けのクロスオーバー車。ハイブリッド車は2列シートだが、3列シートもラインナップするキャビンスペースで積載性などのレジャー用途の実用性を考慮した設計である。
走行性能では、CX‐5に搭載される2・2Lディーゼルターボはガソリン4.0L級の最大トルクを誇るが、エクストレイルはガソリン2.0Lを用いたパラレル式ハイブリッド。16・3kg・mのトルクを発生する電動モーターを加えてもCX‐5に及ばない。また、電動パワーアシストは短時間であり、恒常的な余力に繋がらず、実性能では2.0L+αの実力と考えればいい。
パワートレーンの傾向ではCX‐5は高速長距離向け、エクストレイルはタウンユースや短中距離用途に適した特性。もちろん、得意な部分が苦手というわけではない。標準車よりも高価格分の費用対効果を求める部分の違いがディーゼルとハイブリッドにはある。
この両車の比較では安全&運転支援機能も見逃せない。同クラス&同ジャンルをリードする充実した機能はともにセールスポイントのひとつ。全車速型ACCも半自動操舵型LKAも採用されている。ACCと操舵支援型LKAを組み合わせてニッサンでは同一車線自動運転技術と呼んでいるが、作動条件や手放し運転禁止など機能や適応条件は他社のシステムと変わりない。また、大まかな安全運転支援機能は近似であっても、細かな支援システムの違いもあり、それらが使用状況と合致しているかどうかも見極めのポイントだ。
キャビンユーティリティと走行特性は適応用途に大きく影響する部分であり、これらを総合的に判断しなければ総合的な評価は難しい。この2車はプレミアム&ツーリング系とファミリー&レジャー系の代表的なモデルであり、それぞれの特性を正しく理解し、求める用途との相性を量るのが肝要だ。
【CHECK! ドライバビリティ】 フットワーク対決 ~上質な走りが得られるのは?~
悪路ならエクストレイル、日常域ならCX-5がベスト
エクストレイルも一般的なワゴンと比較すると硬めのサスチューンだが、悪路に対応したウェルバランス型。操縦感覚も乗り味も同車格のセダンやワゴンから乗り換えても違和感は少ないだろう。CX-5は高速操安性を重視した設定であり、スポーツモデルというほど硬くはないが、揺り返しの少ない減衰の利いたサスチューニングが特徴。エクストレイルと比較すると重質な味わいもあり、また安定性とライントレース性に優れたハンドリングは高速や山岳での安心感に寄与している。プレミアム感を乗り味に求めるならCX-5が優れている。
高速域を得意とするCX-5。乗り味&燃費ともに上々。
雨天や悪路をものともしない、タフなエクストレイル。
“世界初”技術ハイライト
CX-5【G-ベクタリング コントロール(GVC)】/ハンドル操作に応じて駆動トルクを変化させ、横&前後方向の加速度(G)を統合的にコントロール。4輪接地荷重を最適化し、スムーズで効率的な挙動を実現。
エクストレイル【インテリジェントライドコントロール】/車体の動きを予測し、エンジンとブレーキを制御。微細な振動から大きな揺れまで、さまざまな起伏に対応し、乗り心地と安心感の向上を実現する。
【CHECK! ドライバビリティ】 判定=CX-5(ディーゼル)が「買い!」
【CHECK! 動力性能】 力強さ&パワーフィール対決 ~ハイブリッドかディーゼルか~
低速では互角だが高速でディーゼルが優位!
比較的負荷の低い領域では踏み込みの加速レスポンス等で同排気量ガソリン車以上の余力を感じさせるハイブリッドだが、連続高負荷走行になるほど搭載エンジンの素の性能に近づく。低中速域では軽快な回転感覚とCVTの相乗効果でCX-5より軽やかな加減速感を示すが、速度が高まればエンジンの地力の差が明白。CX-5は高速域でも2000回転以下を維持し、緩加速も登坂も巡航ギヤを維持したままで済ます。高速や山岳路での余力が大きく異なり、レジャー用途での走行環境でメリットが多い。
ここにワザあり!
CX-5【ナチュラル・サウンド・スムーザー】/ディーゼル特有のノック音の原因のひとつに、燃焼に伴って発生するピストン系の振動があるが、これをピストンピンに組み込んだダンパーで打ち消し、ノック音を低減。
エクストレイル【グリルシャッター】/ラジエーター前面にグリルシャッターを設置。高速巡航時などに閉じることで空力を改善。またフロア下の空気の流れを見直し、クラストップ級の空力性能を達成し、燃費が向上。
【CHECK! 動力性能】 判定=エクストレイルハイブリッドが「買い!」
【CHECK! ユーティリティ】 後席&荷室使い勝手対決 ~デザイン優先か実用重視か?~
実用域でエクストレイルが勝利、CX-5は前席優先のしわ寄せアリ
全長はCX-5が4545mm、エクストレイルは約15cm長い4690mmである。この差がそのまま後席居住性の差と考えていい。居住性に影響するホイールベースはほぼ等しいのだが、CX-5は前席を後ろ目に後席を前目にセットしたしわ寄せで後席の居住空間が減少。後席位置は荷室拡大を考慮した結果でもあるが、それでも容量形状共にエクストレイルのほうが勝る。また、エクストレイルのシートなどは防水仕様となり、その他にもアウトドアレジャー用途向けの装備を採用。CX-5にはそういったレジャーワゴンらしい工夫が少ない。
使い勝手に優れるエクストレイル
後席スライド機構
ハンズフリー電動ゲート
防水ラゲッジボード
おもてなしならCX-5
本革シート
後席シートヒーター
BOSEスピーカー
【CHECK! ユーティリティ】 判定=エクストレイルハイブリッドが「買い!」
【CHECK! 先進安全装備】 ドライバーサポート対決 ~遊び疲れのミスをカバーしてくれるのは?~
安全装備数は両者互角。機能面に差異アリ!
両車に共通するのは全車速型ACC、操舵支援型LKA、後方死角車両監視のBSM、後退時接近車両監視のRCTA。標識認識範囲はCX-5の種別が多く、速度制限や一時停止、追い越し禁止等に対応。ただし、エクストレイルは進入禁止限定だが、警告表示だけでなくブザーによる警報機能も付加。その他ではCX-5は視線移動少なくナビや走行状況の確認ができるカラーHUDを、エクストレイルは俯瞰表示全周モニターや電子式のスマートルームミラーなどがある。甲乙付け難い内容だが、標準装着率はCX-5が勝る。
注目! 先進安全装備
CX-5【アクティブ・ドライビング・ディスプレイ】/視線移動が少なく済むHUD(ヘッドアップディスプレイ)。カラー表示で視認性も優れ、かつルート案内等も表示する。
エクストレイル【プロパイロット】/現時点では高度なACCと評価するのが無難。車線維持機能としてはCX-5より優れる。
【CHECK! 先進安全装備】 判定=引き分け
【結論】実用性ならエクストレイル。トータルバランスでCX-5
先進安全装備をフル装着しての価格に大きな開きはなく、キャビン実用性と走行性能のどちらを優先するかである。言うまでもなく、SUVの本質からすればアウトドアレジャー用途適性に優れたエクストレイルだが、走りの万能性を求めるがアウトドア趣味はあまりない。あるいは高いアイポイントを気に入ってSUVを選ぶなら燃料コストと高速走行の余裕、走りと内外装の質感からCX-5だ。ベーシックグレードでも充実した内容だが、必須装備とも言えるACCとLKAが標準のプロアクティブ以上が狙いである。
【これが「買い!」】 MAZDA CX-5 XDプロアクティブ(2WD)

CX-5 XDプロアクティブ(2WD)=300万2400円