新型車比較・ライバル車対決
更新日:2023.10.04 / 掲載日:2023.09.25
家族がうれしいベストミニバン【2023年】おすすめグレード徹底解説!
日本のファミリーユーザーから圧倒的な人気を集める「ミニバン」。すでに登場から30年以上の歴史を積み重ねているだけに、近年は選択肢も豊富。選び甲斐があるカテゴリーといえる。今回はそんなミニバンの有力モデルの魅力と、おのおののベストグレードに注目してみたい。
文:渡辺陽一郎
家族が嬉しい1台を選ぼう! ミニバンBEST BUYガイド
〜ノア&ヴォクシー/セレナ/ステップワゴン/アルファード&ヴェルファイア/エルグランド/デリカD:5/シエンタ/フリード〜

多人数乗車もこなせる万能車
人気があるのも当たり前
クルマには複数のカテゴリーがあり、日本ではミニバンの人気が高い。最近はSUVの販売比率も増えたが、ミニバンも小型/普通乗用車の30%弱を占めている。
ミニバンが人気を得た背景には、複数の理由がある。まずは大半の車種が全高を1700㎜以上に設定して、3列のシートを備えることだ。6名以上で乗車できて、3列目を格納すれば、4名で乗って自転車なども積める。後席のドアはスライド式だから乗降性も良い。ミニバンは大勢乗せてたくさん積む実用性によって人気を高めた。今回は、そんなミニバンの選び方を考えたい。
ミニバンを買う時にまず行うべきは、自分に合ったサイズを選ぶことだ。ミニバンは、全長が4400㎜以下でエンジン排気量が1.5ℓ以下のコンパクトクラス、全長が4600〜4800㎜でエンジン排気量が2ℓ以下のミドルクラス、全長が4800㎜以上でエンジン排気量が2ℓを超えるLクラスに分類される。
当然、価格もサイズに応じて変わり、コンパクトミニバンの売れ筋価格帯は230〜270万円、ミドルクラスは300〜370万円、Lクラスは400〜700万円だ。大半の車種にガソリンモデルとハイブリッドモデルが用意され、コンパクトミニバンの買い得グレードは、ガソリンモデルが230万円前後でハイブリッドモデルは260〜270万円になる。ミドルミニバンは、ガソリンモデルの買い得グレードが300〜340万円でハイブリッドモデルは340〜370万円だ。Lクラスミニバンはガソリンモデルが400〜550万円、ハイブリッドモデルは600〜700万円になる。
設計が新しいモデルが揃う
ミドルクラスは実力車ばかり
ミニバンは人気のカテゴリーだから、ライバル同士の競争も激しく、比較的狭い価格帯に買い得グレードが集中する。ミニバンを買う時は、前述のようにサイズを選び、次は買い得グレードの集まる価格帯から、自分に合った車種とグレードを絞り込むのがいい。
コンパクトミニバンは車種が少なく、実質的にシエンタとフリードのみだ。しかもフリードは発売から約7年を経過するため、ハイブリッドや安全装備の設計が古い。2024年の中盤以降にフルモデルチェンジを行う可能性も高く、個人的にはメカニズムが刷新される次期型を待ちたい。そうなるとオススメモデルはシエンタだ。買い得なベストグレードは、ガソリンエンジンを搭載するG・2WDで、1年に1.5万㎞以上を走るようなユーザーはハイブリッドG・2WDも検討したい。
ミドルミニバンは最も販売台数が多いカテゴリー。車種はノア&ヴォクシー、ステップワゴン、セレナとその姉妹車たちだ。いずれも2022年に現行型へフルモデルチェンジされており、どのモデルも設計が新しい。ハイブリッドに力を入れ、エアロパーツを装着したグレードが買い得なことも共通する特徴。ハイブリッドのエアロ仕様なら、数年後に売却する時の査定でも有利になる。
ミドルミニバンは、いずれも性能が高く、高いレベルでまとまっているのだが、強みとなる部分が明確なのでターゲットを絞りやすい。
まず多人数乗車を重視するユーザーなら、3列目シートが最も広く快適で、シートアレンジも豊富なセレナがオススメ。良好な視界による運転のしやすさ、動力性能、走行安定性など走りに関係した性能を優先させるならステップワゴンがベストだ。渋滞時にステアリングホイールから手を離しても運転支援が受けられたり、片手で簡単に格納できる3列目シートなど、安全&快適装備を大切に選ぶなら、ノア&ヴォクシーが有力候補といえる。
Lクラスミニバンは2023年に発売されたアルファード&ヴェルファイアの人気が際立つ。今は上級グレードのみを販売するが、設計が新しいためにオススメしやすい。エルグランドは発売から13年を経過して、選ぶ価値も下がった。意外に注目されるのがデリカD:5だ。発売は2007年だが、2019年にフルモデルチェンジ並みの大幅改良を行ったことで魅力を大きく高めている。しかもデリカD:5は、以前から悪路走破力がミニバンとしては最も高く、SUVにも劣らない実力を持つ。ほかのミニバンとは明確に異なるデザインと機能を備えるため、中古車価格も高く、高値で売却できることからデリカD:5を何台も乗り継ぐユーザーも多い。
なおミニバンの購入に際しては、自分に合ったサイズのライバル同士を比較試乗したい。その時は家族全員で乗ると良い。お父さんが運転するなら、2列目や3列目シートの乗り心地を子どもに確認してもらう。試乗したら感想を家族で話し合って、購入する車種を決めたい。家族みんなで選んだミニバンなら、長く大切に使えるだろう。それはエコロジーにも繋がる。購入する時から、ミニバンを大いに楽しんで欲しい。
TOYOTA ノア/ヴォクシー

性能と価格のバランスの良さが秀出る
ハイブリッドを中心に選びたい
まず最初に決めたいのはボディタイプ。標準ボディ車か、エアロボディ車かを選ぶのが鉄則。ノアの場合、エアロボディ車の価格は標準ボディ車よりも7~8万円高いが、数年後に売却する時の買取金額でこの差は取り戻せるはず。そんな理由もあって、エアロボディ車を選んだ方がお得といえる。
次はノアか、ヴォクシーかを決めていく。両モデルの違いは主にフロントマスクだが、ノアはヴォクシーに比べて5~7万円安い。この金額差は右側スライドドアの電動機能(6万2700円)などのオプション価格に相当するから、こだわりがなければノアを選んだ方が買い得だ。
次はガソリン車か、ハイブリッド車かを決める。売れ筋グレードで比べると、ハイブリッド車の価格はガソリン車よりも35万円ほど高い。ただハイブリッド車は購入時の税額が約13万円安くなるため、実質的な価格差は22万円に縮まる。レギュラーガソリン価格が160円/ℓなら、だいたい5~6万㎞を走ると、ガソリン車との価格差分を取り戻せる。さらにハイブリッド車は加速が滑らかでノイズも小さい利点がある。走り目線でもガソリン車よりも魅力が多い。
そうなると最終的に購入すべきは、ノアにエアロパーツを装着したハイブリッドのS-G、もしくはS-Zになる。装備機能と価格のバランスを考えると、中級グレードのノア ハイブリッド S-G(2WD)が、最も買い得。割安感もあって購入後の満足度も高いグレードだ。










《ベストグレード》ノア ハイブリッド S-G(2WD)

NISSAN セレナ

価格は少し高めになっても
e-POWERのハイウェイスターVがおトク
パワートレーンとしては、直列4気筒の2ℓガソリン車と、直列3気筒の1.4ℓをベースにしたハイブリッドのe-POWER車がある。まずはこの選択から行うのが鉄則だ。オススメは動力性能でも燃費性能でも秀出ているe-POWER車。売れ筋グレード同士でガソリン車とe-POWER車の価格を比べると、e-POWERはガソリンモデルよりも約41万円高いが、購入時の税額は約13万円安い。この金額を引いた実質的な価格差は28万円だ。レギュラーガソリン価格が160円/ℓなら、約7万㎞ほどを走ると、燃料代の節約で価格差を取り戻せる。
装備機能を含めて買い得感が強いグレードは、e-POWER ハイウェイスターVだ。標準ボディのe-POWER XVよりも18万7000円ほど高いが、エアロパーツやアルミホイールを装着している。ミニバンはエアロ系モデルの方が売却時のリセールは強いので、トータルで見れば最もおトクなグレードだ。







《ベストグレード》e-POWER ハイウェイスターV

HONDA ステップワゴン

エアーは装備面にやや不満あり
満足度は上級仕様のスパーダが上
ステップワゴンは3種類のグレードを用意する。ステップワゴンのキャラを考えると、グレードは内外装を穏やかなデザインに仕上げたエアーが本命だ。だが残念なことにエアーは、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションを装着できないなど、装備に不満を感じてしまう。装備と価格のバランスを考えると、エアロパーツなどを装着しているスパーダが、グレード選びの一番手に来る。
パワーユニットは、直列4気筒の1.5ℓターボと、2ℓハイブリッドのe:HEVがある。e:HEVの価格は1.5ℓターボのスパーダよりも38万3900円高くなるが、e:HEVは購入時に納める税額が安く、実質価格差は約30万円に縮まる。e:HEVは動力性能にも余裕があるため、性能目線でもこちらの方が明らかに上。最上級のe:HEV スパーダ プレミアムラインとの価格差は21万6700円だが、実用機能優先ならばe:HEV スパーダで十分だ。







《ベストグレード》e:HEV スパーダ

TOYOTA アルファード/ヴェルファイア

ヴェルファイアはスポーティが強め
コスパと快適性重視ならアルファード
ヴェルファイアはボディとステアリングの支持剛性を高めるフロントパフォーマンスブレースを装着して、ショックアブソーバーの減衰力も高く、19インチタイヤを装着する。これらの相乗効果で、走行安定性や操舵感覚がアルファードよりも優れており、乗り心地は硬めだ。明らかにヴェルファイアはスポーティ指向を意識したミニバンだ。
また価格と装備に関しても、ヴェルファイアが上級設定。ヴェルファイア ハイブリッド Zプレミアを例に挙げると、本革シート表皮やムーンルーフを標準装着しているため、アルファード ハイブリッド Zよりも価格が70万円高い。本革シートなどは必須の装備ではないから、快適な乗り心地を含めて、幅広いユーザーに適しているのは、アルファードといえる。
そこでベストグレードとしては、アルファード ハイブリッド Zをオススメしたい。ガソリン車のZに比べると80万円高くなるが、ハイブリッドには100V・1500Wの電源コンセントが装着され、購入時の税額も19万4000円安い。そのため実質的な価格差は約56万円に縮まる。レギュラーガソリン価格が160円/ℓなら、9~10万㎞を走ると燃料代の節約で実質価格差を取り戻せる。しかもハイブリッド車はシステム最高出力が250PSと高く、動力性能にも秀でる。それでいてノイズは小さく抑えられる美点もある。価格は高いが、総合力でガソリン車よりも秀でている部分が多いこともハイブリッド車をオススメできる大きな決め手だ。




《ベストグレード》アルファード ハイブリッドZ(2WD)

NISSAN エルグランド

価格優先で選ぶのが正解
V6車もバーゲンプライス
現行エルグランドが発売されたのは2010年だから、既に13年が経過している。選べるパワーユニットは直列4気筒2.5ℓとV型6気筒3.5ℓのNAエンジン車で、ハイブリッド車は用意されていない。さらに安全装備の設計も古い。従って現時点でエルグランドを買うなら、価格の一番安い250ハイウェイスターS(403万8100円)がベストチョイス。上級ミニバンの豪華な雰囲気を比較的リーズナブルに楽しめる。
さらに直接のライバル車となるアルファードと比べると、2.5ℓエンジンを搭載するアルファード Z(540万円)と比べると約140万円も安い。値引きも多く、納期も短い。アルファードやヴェルファイアとは異なるメリットがあるともいえる。
ちなみにアルファードやヴェルファイアでは選べないV型6気筒3.5ℓエンジンが欲しいなら、350ハイウェイスター(482万7900円)が500万円以下で用意されている。
《ベストグレード》250ハイウェイスターS(2WD)

MITSUBISHI デリカ D:5

唯一無二の魅力が宿る異端児
迷わず上級仕様を選ぶべし
デリカD:5のバリエーション構成はシンプルだ。エンジンは直列4気筒2.2ℓディーゼルターボのみとなり、駆動方式も4WDに限られる。以前設定されていたガソリン車や2WDは選べない。グレード構成は、標準ボディ系とフロントマスクなどをアレンジしたアーバンギア系に分けることができ、そこに装備機能で差を付けた複数のグレードが用意される。
デリカD:5がミニバンとSUVの中間的な車種になることを考えると、外観は標準ボディのデザインの方がシンプルで好ましい。ベストグレードは、実用装備のみならず安全装備なども充実している標準モデルの最上級グレードのP。趣味性の高いモデルゆえに、購入後の満足度を優先したい。少し予算的に苦しいならば、両側スライドドアの電動機能など実用装備が充実しているG(410万3000円)を検討してみるのもいい。
《ベストグレード》P

TOYOTA シエンタ

ガソリン車もなかなか優秀
ハイブリッド車じゃなくてもOK
ガソリン車とハイブリッド車の価格差は35万円と、他モデルと比べると抑えられているが、もともとコンパクトミニバンはボディが軽いこともあって、ガソリン車とハイブリッド車の燃費差は他のカテゴリーに比べてそれほどでもない。しかも現行型のガソリン車はダイナミックフォースエンジンに切り替わっているので、燃料消費量は少ない。WLTCモード燃費は18.3㎞/ℓと優れている。そんな理由もあって、オススメとなるのはガソリン車だ。
グレードは1.5G(2WD)が買い得だ。衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットモニター、ドライブレコーダー、両側スライドドアの電動開閉機能などを標準装着しながらも、価格を割安に抑えている。一つ下のXよりも35万円ほど高いが、機能や装備と価格のバランスが取れていて、メーカーオプション装備も豊富に用意されているのも魅力だ。
《ベストグレード》1.5G(7人乗り・2WD)

HONDA フリード

価格重視でガソリン車がオススメ
機能面は実用グレードのGで十分
直列4気筒の1.5ℓガソリン車と、ハイブリッド車が用意される。フリードの発売は2016年だから、今では約7年が経過して、ハイブリッドの世代もやや古く、今のホンダ車に多いe:HEVではなくi-DCDだ。そんな理由もあって、ハイブリッドG(2WD)のWLTCモード燃費は20.9㎞/ℓに留まり、シエンタのハイブリッドG(2WD)の28.2㎞/ℓに比べて見劣りする。
そこで理由もあって、パワーユニットはあえてガソリン車を選んでもいい。ハイブリッド車との価格差はおおよそ30万円だが、価格優先でガソリン車を推したくなる。ちなみに2WDのWLTCモード燃費は17㎞/ℓだ。
買い得グレードは1.5G(6人乗り・2WD)になる。2列目はセパレートタイプのキャプテンシートで、衝突被害軽減ブレーキなどを作動させるホンダセンシング、LEDヘッドランプなどを標準装着。最もベーシックな仕様だが、コスパの良さは際立っている。
《ベストグレード》1.5G(6人乗り2WD)
