「つながる信号」で自動運転はどう変わるのか【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

車の最新技術 [2021.10.22 UP]

「つながる信号」で自動運転はどう変わるのか【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●SIP自動運転

 当コラムで何度か取り上げてきたSIP自動運転だが、2021年度の東京臨海部実証実験として今秋から、これまでのV2I(Vehicle to Infrastructure=狭域通信)からV2N(Vehicle to Network=公衆広域ネットワーク通信)によるものへと切り替わる。そのうち臨海副都心地域(お台場地域)の信号情報について紹介したい。

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2021年秋から「V2N」の実証実験をお台場で実施

ITS無線機側と信号

 2020年度の東京臨海部実証実験では、信号情報や合流支援情報などをV2Iで配信し、実験車両がそれを受け取って利活用することで有効性や課題をみてきた。

 V2Iはクルマと路側側のインフラによる通信で、路車間通信などとも呼ばれる。信号情報では、信号機に発信機を取り付け、クルマは受信機で情報を受け取っていた。赤か青か黄色かといった信号灯色情報にくわえて、あと何秒で赤から青に変わるなどの残秒数情報も配信。こういった情報がない場合、自動運転車両は人間と同じようにカメラで信号をみて判断するが、大きなトラックや街路樹に遮られたり、逆光や悪天候で見づらいといったこともある。すぐ奥にある近接した信号、あるいは似ている色や光の看板などと混同してしまうことは、人間よりも機械のほうが起きやすい。以前には、信号機が電球からLEDに切り替えられるとカメラで情報処理できずに、自動運転車両の実験ができなくなることなどもあった。自動運転車両が一般道の信号交差点を安全・円滑に通行するには、信号情報は重要なのだ。

 また、自動運転車両を運転席で体験するとわかることなのだが(滅多にできない体験だが)、自分でアクセルやブレーキを操作していないことから、加速や減速の微細な変動などがすごく気になるものでもある。赤信号に対して緩やかに減速していたら青に切り替わったから加速に移るなどという場面ではかなり不快に感じるのだ。こういった信号情報は自動運転車両だけではなく、一般の車両にとっても安全・円滑な通行に寄与するはず。とくに、乗客が立っていることもある路線バスなどでは有効で、実際に採り入れているケースもある。

 東京臨海部実証実験には国内外の自動車メーカー、サプライヤー(自動車部品メーカー)、大学、ベンチャー企業など29の団体が参加。2019年10月から始まった信号情報の実証実験は、コロナの影響による中断期間があったものの、2ヶ月の延長をして2020年2月まで行って、走行距離は約6万5000km。実交通社会への自動運転車両の混流の評価などもしつつ、その有効性は確認できた。

 そして2021年秋からはV2Nによる実証実験が始まる。携帯電話などで広く利用されているLTE回線を使用するので、信号機の発信器など特別なインフラはいらない。信号情報、気象情報、交通規制、道路交通情報等の生成、配信等に係る実証実験であり、拡張性、汎用性という意味では飛躍的に広がるわけだ。信号情報だけではなく、たとえばゲリラ豪雨などの予測情報による早めの備え、緊急車両接近の注意喚起と回避、渋滞車線予測情報によるスムーズな車線変更なども行える。

 SIP自動運転が取り組んでいるダイナミックマップ(高精度3次元地図データ)は、高精度で多くのデータを有する静的地図をベースに、ダイナミック(動的)な情報を重ね合わせていくものであり、V2Nには、ダイナミックマップをよりダイナミック化していく効果もある。

 参加団体は継続と新規をあわせて国内外22機関が決定。11月中旬を目処に実証実験が始まる。V2Nでの懸念は情報に遅延が第一にあげられ、それに対する対応策および有効性の確認、そして社会実装に対して何が必要なのかを分析していくことになる。

 サーバー上にある多彩な情報をいかに利活用していくかのユースケースも検討。サーバー上からクルマ側へ情報をどんどんと送ったほうがいい、あるいはクルマ側から欲しい情報をサーバーにリクエストして引き出したほうがいい、といったプッシュ型プル型の情報発信などの検証もできるだろう。お台場の信号に設置されたV2Iのインフラも残されるので、比較検討も可能。V2Nの実証実験から得られた知見で社会実装が可能になれば、自動運転技術の高度化や交通社会全体の安全性向上、円滑化にも役立つはずだ。

2021年度の実証実験参加者(PDF書類)

2020年度の東京臨海部における実証実験の成果報告書 (PDF書類)

執筆者プロフィール:石井昌道(いしい まさみち)

自動車ジャーナリストの石井昌道氏

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】は週刊連載です。どうぞお楽しみに!

石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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