車の最新技術
更新日:2026.06.16 / 掲載日:2026.06.16
愛車を一生モノに。旧車を未来へと繋ぐ「エコ延命」最前線!

2026年5月27日から29日までパシフィコ横浜で行われた「人とくるまのテクノロジー展2026」は注目EVのほか、自動車に関わるさまざまな最新技術が紹介されました。今年は中古車市場を大きく変えてくれそうなテクノロジーも多く公開されていましたので、現地で話を聞いてきました。
第3弾は、旧車のパーツを復刻したり、エコ燃料でガソリン車を長く乗っていけるものにするための取り組みをクローズアップ。今乗っているクルマにずっと乗りたい、憧れていたクルマにこれから乗りたい、という願望を叶えてくれるかもしれません。
HKSが取り組む旧車パーツ復刻への取り組み

最新車両向けのパーツ供給のイメージが強いHKSですが、同展の会場では旧車向けのパーツの展示とその取り組みの紹介をしていました。
具体的には310型サニー用(レース仕様)の削り出しトランスミッション構成部品やカムシャフト、クランクシャフトなどを公開。同社とグループ企業の日生工業では、クラシックカー精密加工技術を活かし、入手困難となった旧型車部品の製作を近年、積極的に製造。旧型車を大切に乗り継ぐことも“エコ”のひとつと捉え、「図面は残っているが製造手段がない」「当時の加工設備が現存しない」といった課題に対し、最新の5軸複合旋盤によるワンチャック同時加工など、先進の加工設備と技術で部品をリバイバルしています。

単純に純正品を復活させるというのはもちろんのこと、チタンなどの素材を使い、より高性能なヘリテージパーツも作ることも可能で、その技術を活かして、JCCA(日本クラシックカー協会)のレースでも活躍しています。
スタッフに話を聞くと、「ネオクラブームもあって、3年くらい前から復刻部品の注目が高まってきました。R32.33.34型のスカイラインGT-RやJA11型ジムニー用のパーツが人気なほか、トヨタ86も中古車市場で価格がこなれてきたことから、購入してカスタムを楽しむ人が増え、需要が増えてきました」と言います。

また、部品を復刻する際の苦労を尋ねると「例えばマフラーを復刻しようとする時、図面などがあれば良いのですが、そうでないと実際の車両から型を起こすのですが、元となる車両が古いと、台数がなかったり、個体による状態のバラつき、ねじれがあったり、レストアされていたりなど、正確なマスターを作るのが難しい」と話してくれました。
このほか同グループのブースでは、現在開発中であるシリーズ方式PHEVにおける協調制御装置や最新のサスペンション技術なども紹介されていました。
バイオエタノール活用でガソリン車をエコに走らせる下地作り
近年、急速に電動化が進む自動車業界ですが、古いクルマをずっと乗り続けるのも1つのエコのかたち。また、一気に全てを電動車に置き換えることも不可能であることから、ガソリン車の環境負荷を減らそうと考えられた1つの方法がバイオエタノールを添加したガソリンです。
バイオエタノールとはサトウキビやトウモロコシなどから作られた燃料用エタノールで、植物が成長過程で吸収した二酸化炭素を再放出するだけであるため、理論的にはカーボンニュートラルであるとされています。
海外の多くの国では一般的となってきたバイオエタノールを添加したガソリンですが、日本は2028年度に沖縄で先行導入、2030年度に全国供給が開始される予定になっています。

そこで、注目したいのがアトセンスのブースに展示されていた「燃料ブレンダ」と「エア駆動式燃料圧送装置」です。
燃料ブレンダは2つの種類の燃料を任意の比率で混合するための機械。2008年から多くの使用実績があるという機械ですが、人による混合作業が不要で安全性が確保できるほか、混合比率を細かく設定できるため、混合された燃料を購入する必要がないことなどがメリットです。
基本的に実験室などで使う装置ではありますが、こうした装置があればこそ、研究が効率的に行われ、安全な燃料供給や新燃料に対応したエンジンの開発・改良につながります。それは、現在ガソリン車をお持ちの方やこれから中古のガソリン車を購入しようと考える方に恩恵をもたらしてくれるはずです。
なお、このブレンダは、ガソリンとバイオディーゼルだけでなく、軽油やe-fuel(二酸化炭素と水素から化学反応で作られる人工燃料)などにも対応しており、更なる新しい燃料規格が設けられた際にも役立つ内容となっています。
一方、エア駆動式燃料圧送装置は、電動燃料ポンプに代わるもの。電気を使用しないエア回路で制御し、遠隔でコントロールできるもの。各センサは電気を使用しない光ファイバ仕様です。
エタノールやメタノールなどにも対応した内容で、ゴムや一部の樹脂、金属類など腐食しやすい素材を極力省いて作っているのも特徴です。

こちらも実験用器具ではあるものの、例えば、今後、E10よりも、さらにバイオエタノールの混合割合が多い燃料の普及などを目指すことになった場合、その実験だけでなく、エンジンや燃料タンク回りの部品の開発にも結び付くことも想像されるようなポンプです。

華々しい最新技術だけが未来を支えるとは限らない

「人とくるまのテクノロジー展」は今回も、未来を切り拓くような、これまでに無い最先端技術で快適性や安全性、生産性、環境性能などを高める製品やサービスがズラリと並ぶ展示会でした。
そんな中で見ていくと、HKSのような古いクルマを大切にしようとする取り組みや、アトセンスのようなエコな自動車社会を下支えする製品は華やかではありませんが、現在の自動車ユーザーが直面する課題を解決するのに役立つ重要な内容として、ピックアップしました。
今回の出展社の中には別の技術展示会で、他ではハイテクを使って行っている技術を、ローテクで実現しようとすることで、価格のダウンを実現したという例もありました。
最新の素材や技術を駆使した斬新な展示にばかり目を奪われがちですが、未来の安心や快適、エコを支える技術はもっと、地味で身近なところにあるのかもしれません。
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