車の最新技術
更新日:2026.06.12 / 掲載日:2026.06.12
クルマ社会の「人手不足と不安」解消?! 中古車市場や整備現場で期待の近未来テック

2026年5月27日から29日までパシフィコ横浜で行われた「人とくるまのテクノロジー展2026」はホンダ・スーパーワンや日産・アリアなどのEVのほか、自動車に関わるさまざまな最新技術が紹介されました。今年は中古車市場を大きく変えてくれそうなテクノロジーも多く公開されていましたので、現地で話を聞いてきました。
第2弾は、自動車の安全に関わる診断技術に注目。具体的には、安価にリアルタイムで愛車の足回りに異常が無いか検出する技術と、「診断4.0」と呼ばれるメーカーの自動車開発の段階からアフターサービスまで一貫して利用できる総合的な診断技術です。最新テクノロジーによる緻密で的確な診断は、中古車売買の際の指標として期待されるのはもちろん、経験の少ない技術者の支えにもなってくれるため、整備工場などの人手不足解消にも一役買ってくれそうです。
足回りの異常をリアルタイムで検知、ニーラのタイヤ空気圧監視システム

ニーラの提供する間接的タイヤ空気圧監視システム(TPMS)は、開発から販売店、整備工場なですべての工程において、ハードウェアが不要。車両に既に取り付けられているセンサーのみでタイヤモニタリングを行うシステムです。
タイヤの空気圧監視は、日本ではまだ義務化されていませんが、欧米や中国などでは、既に法制化されています。日本でも2023年に北海道で脱輪を原因とした大きな事故が発生したり、JAFのロードサービスのトップ3のうち、2位にタイヤのパンク、3位に脱輪・落込が入っていることを考えると、ドライバーの安全にとって、非常に役立つシステムです。

また、ニーラのTPMSは、緊急性の高い1輪のパンクをタイムリーに検知して警告したり、空気圧やタイヤ溝の残量、ホイールナットの異常を表示するだけでなく、サスペンションやベアリングの状態についても知らせてくれます。
サスペンションやベアリングの状態は一般のユーザーには分かりにくいものですが、これがはっきりと分かることは、運転中の安全に繋がるだけでなく、中古車購入の際にクルマ選びの大きな判断材料になります。
このほか、同システムが普及している欧州においては、センサーから得られる大量の路面データを集め、どの場所がどのような危険な状態になっているかをリアルタイムで配信する取り組みも行っており、安全なルート設計に役立っています。

日本ではこのような間接的TMPSよりも、タイヤのバルブにセンサーを取り付けて計測する直接的TMPSが主流となっていますが、こちらはハードウェアの導入費用や電池交換の手間などがかかるのがネック。タイヤ空気圧の数値が明確に分かるというメリットはありますが、事故防止のために減り具合が分かれば良いというのであれば、コストの抑えられる間接的TMPSの方が合理性が高く、欧米ではこちらが主流になっています。

さて、日本での間接的TMPSを導入したクルマについてですが、現状、日本車では搭載車は基本的にありません。ただ、国産メーカーでも輸出用や海外で生産されたものには付いていますので、例えばこれから逆輸入されるようなモデルには搭載されてくるかもしれません。
輸入車では、2021年以降に生産されたフォルクスワーゲンとアウディのクルマであれば、日本で正規販売されたモデルでも間接的TMPSを搭載しているとのこと。この機能を試してみたいという方は、4年以上が経ち、そろそろ中古車市場でも台数が増えてきているので、両社のクルマから探してみると良いかもしれません。
アフターサービスが劇的に変わる?! 「診断4.0」とは
近年の自動車はさまざまな先進技術が盛り込まれ、熟練の技術や豊富な知識を持った整備士でなくては、対応が難しいケースも増えています。一方で、人口減少などもあり、整備士の数は減少傾向。そんな問題の解消に、役立つかもしれないのが「診断4.0」です。

診断4.0とは、従来のECU単体診断の域を超えて、開発や製造、アフターサービス、リモート診断、OTAなどクルマのライフサイクル全体にわたって診断情報を統合し、活用するアーキテクチャ。標準化されたデータ形式を活用してクラウドやリモート接続することで自動化や効率化、可視化を実現するものです。
人とくるまのテクノロジー展でこの技術を用いたサービスを紹介したウインドヒルは、この診断4.0に沿って、ヴィジュアルODXによる診断データの一元管理やQ‐テスターによるDoIP・リモート診断・ECUフラッシュなどの機能を通じた次世代診断基盤を構築しました。

アフターサービスを中心に見ていくと、「ローコードプログラム」を意識して作られたシステムにより、故障個所や不具合のある部品の画像や整備手順などが分かりやすく視覚的に表示されるため、知識や経験の少ないサービススタッフでも簡単に、間違いなく作業できるようになっています。インターネット経由で診断や再プログラミングができることから、遠隔地のディーラーサポートなども可能になるというメリットがあります。
これらの恩恵によって、買った後の心配が減らせれば、中古車もより買いやすくなるのではないでしょうか。

クラウド上に蓄積された故障コードや診断ログから、特定の車両の部品寿命の予測が行えるようにもなるので、中古車の取引においては残存価値がより的確に推し量れるようにもなります。
ただ、開発からアフターサービスまで一貫したサービスとなるため、ディーラーを中心とする単独メーカーのクルマのみを扱うショップでしか取り扱えないというのが、現状、最大の難点。町の整備工場などの効率化には別のタイプの診断システムの登場、あるいは診断4.0の新たな進化が期待されます。
目に見えにくいパーツも状態が客観的に分かる未来が訪れる?!

会場では、日産がAIドライブ技術を搭載した「次世代ProPILOT」開発試作車(ベース車はアリア)を公開しましたが、最近のクルマはさまざまな先進技術が搭載され、多様なセンサーが取り付けられています。同時にそれらのトラブルを電子的に検知・記録するシステムを備えたクルマも増えてきました。
ただ、この検知システムもすべての種類のトラブルに対応しているわけではなく、センサーの劣化状況を完全に、かつ素早く把握するというのは簡単ではありません。
そんな中、具体的な展示こそなかったものの、とある出展者から、「車検場でセンサーの“健康診断”ができるようなシステムが開発されつつある」との話が聞けました。
これが実用化され、前述のニーラのタイヤ空気圧監視システムなどが合わされば、例えば、診断4.0に対応していない小さな中古車販売店や整備工場でも、手軽にかなり精緻な鑑定ができるようになるはずです。近い将来、どこでクルマを買っても、客観的なデータを元に、間違いのないクルマ選びができる日が来るかもしれません。
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