車の最新技術
更新日:2025.03.11 / 掲載日:2025.03.11

CX-60の足まわりはどのように変わったか【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●マツダ

 2022年に鳴り物入りでデビューしたCX-60。

 世の趨勢がBEVシフトへ向かい、エンジンの開発は凍結され、プラットフォームもBEV中心になっていくなかで、縦置きエンジンのFRベース・プラットフォーム、直列6気筒エンジンを新規開発。それ以外にも燃費性能を高めるためにトルクコンバーターをクラッチにかえた8速AT、48VMHEV(マイルドハイブリッド)、プラグインハイブリッドなど多くを一気に開発してきた。

マツダ CX-60 XD SP

 3.3Lの直列6気筒エンジンは単体で550Nmもの大トルクを発生し、2t近いボディを力強く加速させるが、WLTCモード燃費は20km/hを超えるという効率の高さはすごい。

 ロードスター以外では長らく造ってこなかったFRベース・プラットフォームは、ドライバーズカーへのマツダのこだわりがあって、クルマ好きはとくに応援したくなるモデルだ。

 だが、最初にリリースされ、本命のモデルでもあるXD HYBRIDはいざ走らせてみると評価は芳しくなかった。

 燃費はいいものの、走行中のコースティングからエンジン再始動→クラッチ締結のときにショックがでる。程度は軽くても巡航走行中に不意におとずれるショックは不快なものだった。

 それ以上に課題となったのがシャシー性能。低速域ではゴツゴツとした硬さが目立つ。それがスポーティさを追いすぎてのものなら、少しのセッティング変更で引き戻すこともできるのだろうが、凹凸などからある程度以上の入力を受けると上下動の収まりが悪いバウンシングが出やすいことから、そういった問題ではないことも見受けられた。

 また、限界的な走りではオーバーステアが出やすいこともあった。その後のMHEVのないXDや25Sなどではスタビライザーレスやピロボールからブッシュへの換装などの施策がとられ、少しずつ課題を克服。

 そして2025年2月に発売となったマイナーチェンジ・モデルでは大幅な改良が施された。CX-60のマイナーチェンジと並行して開発され、一足先にデビューしたCX-80はバウンシングの傾向がまだ見られたが、新型CX-60は公道で乗る限りはほぼ課題を克服したと言える。

意欲的なメカニズムを採用しているCX-60のシャシー設計。市場の声を聞き、改良を重ねることで完成度を高めている

 シャシーでの変更は多岐にわたる。

 フロントのナックルポイントを変更し、サスペンションがストロークしていくときのトーアウト量を増やしてオーバーステア対策。さらにダンパーの減衰力を変更している。

 リアはスタビライザーを外し、スプリングレートを下げてダンパー減衰力は高める方向へ。フロントも含めて減衰力はおもに伸び側を高めている。また、バンプストッパーを短くすることでストローク量を増やした。クロスメンバーのブッシュは入力の角を丸めつつしっかりと受け止める方向へ特性変更を行った。

 低速域でのゴツゴツと硬い乗り心地の多くはリアスタビライザーが効きすぎていたからのようだ。

 車両重量が重く、背の高いSUVではロール剛性を高めるためにスタビライザーが有効だが、左右が連結されているため、路面が悪いところでは左右のサスペンションがスムーズにストロークできず、ボディが横方向に揺さぶられやすくなる。そこでスタビライザーレスとして素直に動くようになったから、乗り心地もスムーズになったのだ。

CX-60 XDハイブリッド トレッカー

 スプリングレートを下げたことも効いているだろう。ロール剛性は落ちる方向だが、ダンパーを締め上げることで帳尻を合わせている。

 3列シートのCX-80はファミリーカーとしてゆったりとした乗り味にしていること、より車両重量が重いことなどで、バウンシングが出やすいが、CX-60はドライバーズカーに寄せたセッティングとなっているので、それなりのペースで走らせてもボディが無用に上下することがなく、FRベースらしいスポーティな走りが堪能できる。

 走行負荷が高まり限界に近づくにつれてバウンシングする傾向はまだ残ってはいるものの、約2年でここまで改良されたことは喜ばしい。

 ジオメトリーや接地性変化についてマツダ独自の考え方をふんだんに注ぎ込んだFRベース・プラットフォームは、まだまだ伸びしろがあるはず。今後も改良の手を休めることはないだろう。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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