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更新日:2024.09.09 / 掲載日:2024.09.09

内燃機関をアップデートするマセラティNettuno【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●マセラティ

 スーパースポーツでもBEVやPHEVといった電動化は進んでいる。電気モーターの強力なトルクを用いれば、0-100km/h加速2.0秒以下といった超絶なパフォーマンスが可能で、重量配分が良好かつ電子制御の力を発揮すればシャシー性能も大幅な向上が見込める。パフォーマンスを追うのであれば、エンジン車では到底実現不可能な世界にいけるのだ。

マセラティ製V6 Nettuno エンジン

 だがその一方で、エンジンは官能性に不可欠だというのも共通する認識なのだろう。だからこそ、今のご時世でもエンジンを新規開発するスーパースポーツ・ブランドも少なくない。フェラーリ 12チリンドリやランボルギーニ レヴェルトの12気筒エンジンなどが記憶に新しいところだが、マセラティも電動化とともにNettuno(ネットゥーノ)と呼ばれる3.0LV6ツインターボ・エンジンを新規開発し、まずは2020年にMC20へ、続いてグラントゥーリズモ、グレカーレへ搭載してきた。

 12気筒エンジンほどのインパクトはないかもしれないが、NettunoはF1やWECで用いられるプレチャンバー燃焼システムを市販車へ初採用したハイテクなエンジンだ。

 以前のマセラティはフェラーリからエンジン供給を受けていたが、フェラーリが旧FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)から独立してエンジン供給をストップすることを表明。新規開発のNettunoは100%マセラティ、100%メイド・イン・モデナを謳う。

 ガソリン・エンジンにとって急速燃焼は効率を高める永遠のテーマ。素早く燃焼させることが可能になればなるほど、ピストン上死点に近いところまで点火を遅らせることができて燃焼効率が高まるからだ。そのため空気と燃料がよく混ざるようにダンブル流(縦渦)を工夫するなどが一般的な手法だが、プレチャンバーは副燃焼室を設けてその中で混合気に点火すると、小さな穴から主燃焼室へジェット噴射して一気に燃焼。燃焼効率が大幅にあがるので燃料流量制限が設けられた現代F1でキーテクノロジーとなったわけだ。

 Nettunoのプレチャンバー燃焼は直噴方式だが、ポート方式も備え点火プラグはそれぞれに用意される。プレチャンバー燃焼は低負荷領域が得意ではないので、一般的な走行ではポート方式で走らせるのだ。

Nettunoエンジンのテクニカルイラストレーション。特徴的な副燃焼室の位置関係がよくわかる

 最高出力と最大トルクは搭載モデルによって異なっている。MC20は唯一のドライサンプ方式で630PS/730Nm、グラントゥーリズモ・トロフェオは550PS/650Nm、グラントゥーリズモ・モデナは490PS/600Nm、グレカーレ・トロフェオは530PS/620Nm。グラントゥーリズモのトロフェオはスポーティさを追求し、モデナは扱いやすさを加えて違いをだしているようだ。

 ポート噴射方式から直噴方式のプレチャンバー燃焼への切り替えは、アクセルをグッと踏み込んでおよそ6000rpmを超えたあたりと言われるが、ドライバーが感知できるような感覚はない。低回転域からレスポンスが良くて豊富なトルクがあり、6000rpm以上では回転上昇の勢いが増してスムーズにトップエンドまで回っていく、ひたすらに良く出来たスポーツエンジンといった印象だ。サウンドは以前のV8のように甲高くむせび泣くようなものではなく、重低音主体だが、いかにも効率良く仕事をこなしているような迫力がある。エンジンの最新テクノロジーを味わう新鮮な喜びがあるのだ。

マセラティ グラントゥーリズモ

 マセラティはプレチャンバー燃焼をおもにパフォーマンスアップに採用したが、リーンバーン(超希薄燃焼)にも有効なシステムで、燃費改善を突き詰めるために他のメーカーも開発中とも聞く。市販化されるかどうかは未知数だが、本格的なBEVシフトが少し後ろ倒しになりそうな気配が出てきているから、より一般的なモデルに採用されることがあるのかもしれない。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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