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更新日:2024.08.19 / 掲載日:2024.08.16

カーボンニュートラル燃料深掘り バイオエタノール編【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文●池田直渡 写真●トヨタ、ホンダ

 さて、カーボンニュートラル燃料(CNF)深掘り解説シリーズの第3弾はバイオエタノールである。編集部からはこのシリーズが「いつもよりよく読まれている」と喜んで連絡が入ったので、ちょっと安心した。なにせお勉強的シリーズなので、ちょっと反応が心配だったのだ。

 さて、前回のバイオディーゼル編で、バイオ系燃料全般の説明をした。その際に書いた通り、バイオエタノールとは植物が作った有機物やそれを捕食して育った動物。さらにはそれらを使って作られた食糧の廃棄物など、光合成を起源とする直接間接の有機物を発酵によってアルコールに変換したものである。

 具体的には穀物と糖質作物、あるいは残飯や生ごみ、ごみの混じった下水の汚泥や人や家畜の糞尿などの有機系廃棄物を発酵させて作るアルコールである。

 バイオエタノールの先進国はなんと言ってもブラジルだ。ブラジルでは1970年代からさとうきびを利用したバイオエタノールの生産に取り組み、長らく実績を積み重ねてきた。通常のガソリンに対してエタノールを10%混ぜた燃料をE10、20%混ぜた燃料をE20のように表し、現在ではE100も可能になっている。

トヨタが2018年にブラジルで公開したハイブリッドFFVの試作車両。通常のFFVよりさらなるCO2削減効果が期待される

 すでにブラジルで自動車を販売しているメーカーでは、ほぼ全ての新車で、こうしたエタノール混合燃料への対応を済ませており、E22からE100までの間のどの混合比でも自由に使えるFlexible Fuel Vehicle(フレックスフューエル・FFV)が一般化している。

 それはつまりその日の燃料価格を見ながら、ガソリンを給油してもE100のエタノールを給油しても構わないことを意味する。ちゃんぽんにしてもOKなのだ。一般に熱量の差で、エタノールの方が燃費で30%ほど劣るので、ガソリンよりエタノールが3割以上安ければエタノールを、それより高ければガソリンを選択するわけだ。

 未来の可能性の話を別とすれば、様々なCNFの中で、価格でいますぐガソリンと真っ向勝負ができるのはバイオエタノールだけである。そういう意味では最も現実的なCNFと言うことができるだろう。

 ちなみにFFVと普通のガソリン車の違いは、低温時の燃焼を考慮した圧縮比調整などがあるにはあるが、E50程度までの混合比であればそうした対応すら不要だ。ただし燃料系のゴム配管のみアルコールの作用で硬化するので、ゴムホースの表面コーティングを行わないと燃料漏れの恐れがある。ただし対策技術は確立済みである。ちなみに純ガソリン車との差額は部品代で1万円にも満たないと言う。ただし、これもE20程度までであればコーティングなしのゴム配管のままでも不具合に至らない様子である。

 逆に言えば、純ガソリン車として世界中で販売されているクルマに、E20の燃料をそのまま入れるだけで、CO2を20%削減できることになる。あるいはレトロフィットでゴム配管だけ対策品に交換した上で、販売するガソリンをE50にすればCO2の50%削減ができてしまう。50%削減とは、つまり世の中のクルマの半数をBEVにしたのと同じ削減効果である。

 残りの50%を他の種類のCNF、たとえばe-FUELに置き換えれば、CO2問題は完全解決できる。そんなに色々混ぜて大丈夫なのかという疑問はあって当然だが、そもそも燃料を市販する際にはJISの規格に適合する必要があり、少なくとも性状が極端に違う燃料は販売されない。だからみんな似たようなものなのだ。

 バイオエタノールの今後の課題はバイオ燃料全般の課題とほぼ共通で、人の食糧と競合する第一世代を避け、競合しない第二世代バイオエタノールが望まれる。

 ただし、現実的な話として、とうもろこしや麦などの穀物は確かに人の食糧と直接的に競合するが、これがブラジルでバイオエタノールの主原料になっているサトウキビであれば、飢餓状態にある人にまさか砂糖を大量に与えると言う話でもないので、果たして広義の食糧競合を全部第一世代とすべきかどうかは議論の余地があるだろう。同様の議論はバイオディーゼルにおける植物油にも適合するだろう。

日鉄エンジニアリングはイネ科の一年草ソルガムなど非加食性の原料を使う第二世代バイオエタノールの生産設備を着工。2024年10月の運転開始を予定している

 バイオエタノールの原材料は、基本的に穀物などの澱粉系とさとうきびや甜菜(てんさい:砂糖大根)などの糖質系、さらに廃棄物(汚泥や糞尿、生ごみ、木屑や紙屑、バガスなど)の3種に分けられるのだが、澱粉系を除けば原材料としても良いのではないかと思われる。

 特にさとうきびの絞りカスであるバガスは大量に発生し、放置すればメタンガスを発生させる恐れがある。メタンガスにはCO2の28倍の温室効果があることから、これを発酵させてバイオエタノールとして利用することは極めて環境貢献度が高い。

ホンダも長年バイオエタノールの研究を行ってきた企業のひとつ。独自に開発した藻「Honda DREAMO」は、成長速度が速く大量培養しやすい特徴を持つ。航空機などの燃料に活用すべく開発が続けられる

 また糖質系に分類されるさとうきびは気温の高いエリアで、甜菜は寒いエリアでの栽培に適している。とくに甜菜は国内では十勝エリアやオホーツクエリアなどで生産されており、今後燃料用に増産が進めば北海道の農業振興に寄与する可能性が高い。また加工用であることから、大規模な機械農業にも適しており、非労働集約的農業の可能性が期待される。

池田直渡の5分でわかるクルマ経済
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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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