車の最新技術
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2022.06.30

【BMW iX】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回フォーカスするのは、BMWの「iX」。同ブランドが展開するEVシリーズの新たな旗艦モデルは、果たしてどんな実力を披露してくれるのだろうか?

BMW iXのプロフィール

BMW iX

 2021年11月に日本での発売がスタートしたBMW「iX」は、同ブランドが「i3」以来、7年ぶりに日本市場へ投入したピュアEVだ。

 BMWが“SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)”と呼ぶSUVカテゴリーに属すモデルをベースに、コンセプトやデザイン、パワートレーンなど、すべての領域において次世代を見据えて開発。新しい世代のEVらしく、エクステリアとインテリアのデザインは独創的で、運転支援システムや通信システムも最新フェーズのものが搭載されている。

 そんな「iX」で印象的なのは、やはりフロントマスクだろう。BMWの個性であるキドニーグリルが、従来のモデルと比べて格段に大きくなり、そこにスリムなヘッドライトを組み合わせることで、新時代のEVであることをアピールする。

 一方のリア回りは、ヘッドライトと同様、薄くシャープなコンビネーションランプを採用することで、デザインの統一感を図る一方、エアロダイナミクスを追求したディフューザーやワイドなリアトレッドなどが、存在感を際立たせている。

 新時代の到来を告げるデザインは、インテリアにも導入されている。一体化されたメーターパネルとコントロールディスプレイは、パネルを湾曲させることで操作性や視認性がアップ。加えて、物理スイッチの大半を廃止したり、エアコンの吹き出し口をスリム化したりすることでスマートな印象に仕上げながら、BMW独自の“iDriveコントローラー”を採用するなど、操作性の追求にも抜かりはない。

 加えて、ヘッドレストが一体となったシートや、ゆったりとしたスペースが確保されたリアシート回りなどにより、キャビンの居心地は快適。また、オプションの「ファースト・クラス・パッケージ」装着車には、クリスタル製の電動シート調整スイッチやスタート/ストップボタン、iDriveコントローラーなどが装備されるなど、未来感の演出も忘れてはいない。

「iX」のパワートレインは、フロントとリアのタイヤをそれぞれ駆動するツインモーター方式の4WD。今回の試乗グレード「xDrive50」は、最高出力258ps/最大トルク37.2kgfのモーターでフロントタイヤを、最高出力313ps/最大トルク40.8kgfのモーターでリアタイヤをそれぞれ駆動し、システムトータルでは最高出力523ps、最大トルクは78.0kgfを発生する。

 ちなみに、「xDrive50」に組み合わされるリチウムイオンバッテリーの総電力量は、111.5kWhと大容量。1回の充電で走行できる航続距離は、WLTCモードで650km、交流電力量消費率は同モードで190Wh/kmをマークする。

 さらに「iX」は、EVとしての利便性も追求。最大150kWの急速充電器に対応するほか、40分以内に約80%の充電が完了し、約500kmの走行を可能とするなど、充電に関するネガを払拭している。

■グレード構成&価格

・「xDrive50」(1285万円)

・「xDrive40」(1075万円)

・「M60」(1740万円)

■電費データ

<xDrive40>

◎交流電力量消費率

・WLTCモード:183Wh/km

 >>>市街地モード:180Wh/km

 >>>郊外モード:177Wh/km

 >>>高速道路モード:188Wh/km

◎一充電走行距離

・WLTCモード:450km

<xDrive50>

◎交流電力量消費率

・WLTCモード:190Wh/km

 >>>市街地モード:193Wh/km

 >>>郊外モード:183Wh/km

 >>>高速道路モード:194Wh/km

◎一充電走行距離

・WLTCモード:650km

<M60>

◎交流電力量消費率

・WLTCモード:199Wh/km

 >>>市街地モード:213Wh/km

 >>>郊外モード:195Wh/km

 >>>高速道路モード:198Wh/km

◎一充電走行距離

・WLTCモード:615km

【高速道路】冬場とのデータにかなりの差が出た

 iXのEVテストは2回目となるが、前回は冬場で電費に不利なうえに、雪の影響でワインディングロードが走れなかったことから、早々の再登場となった。

 高速道路の電費は制限速度100km/h区間のその1が5.6km/kWh、その4が5.2km/kWh、制限速度70km/kWh区間のその2が6.6km/kWh、その3が6.3km/kWhだった。

 今回は小雨がパラつくことはあったが、概ね曇り。外気温は朝のスタート時が22℃で、高速道路を走行中は最高で27℃。例年のこの季節にしては暑く、湿度も高かったので、それなりにエアコンの負荷はあったが、電費にとってまずまずのコンディションだった。

 前回は1月にテストして、気温は6〜6.5℃。電費は制限速度100km/h区間のその1が6.8km/kWh、その4が3.57km/kWh、制限速度70km/kWh区間のその2が7.07km/kWh、その3が8.5km/kWhだった。一般的に冬場にヒーターを使ったときの電費は20〜30%悪化すると言われるが、今回は22%〜43%の差が出ている。43%と大きな差になったのは1回目テストのその3が、工事区間が多く、ストップ&ゴーを強いられるほど渋滞してしまったことが要因。その他は概ね20〜30%といったところだ。

 ちなみにマツダMX-30では5月(18〜30℃)と12月(9〜11℃)にテストしているが、高速道路の電費の差は13〜22%。冬場にしては気温が高めでヒーターの負荷が少なく、今回ほどの差はつかなかったとみることができる。

【ワインディング】電費はクラスの平均だが、回生効率の高さが光った

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

 1回目のテストでは走行できなかった箱根ターンパイク。約13kmの距離で963mもの標高差があり、登り区間ではとくに重量級にとってつらいが、ここでの電費は1.4km/kWhだった。ジャガーIペイスは車両重量2250kgで1.45km/kWh、アウディe-tron55は2560kgで1.3km/kWh、メルセデス・ベンツは2470kgで1.4km/kWhとだいたい似通った数値になっている。iX50は2530kgだから標準的と言えるだろう。

 下り区間では4.41kWhを回生した。3kWh台のモデルが多く、けっこう優秀な部類といえる。さすがはフラッグシップ・モデルだけあって高効率なようだ。

【一般道】冬季に比べて2~3割優秀なデータとなった

 一般道での電費は4.4km/kWhで、前回の冬場の6.12km/kWhを約30%上回った。走行時の気温は今回が27.5〜28.5℃、前回が6.0〜6.5℃。やはり冬場は20〜30%ほど電費が悪化する説は、概ね正しいようだ。

 ちなみにIペイスは4.2km/kWh(気温は30〜32℃)、e-tron55は4.1km/kWh(23.5〜24.5℃)、EQCは 4.0km/kWh(23.5〜24.5℃)となっていて、それらの比較で、わずかながら上回っている。iXはBEV専用プラットフォームでフラッグシップということもあって優秀とも言えるが、一般道は電費への影響が大きい信号や周囲の交通状況などが変動しやすいのであくまで参考という位置づけにしておきたい。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】高出力急速充電器の性能を活かせる充電効率の高さ

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 バッテリー残量80%、航続可能距離480kmからテストをスタート。154km走行した復路・海老名サービスエリアでは53%、353kmだった。そこから出力90kWの急速充電器を30分間使用して38.8kWhの電力が充電され、86%、575kmまで回復した。充電開始直後から80kW程度の出力で、バッテリー残量が80%を超えても65kWほど。平均値は77.6kWということになる。これまで、同じ90kWの急速充電器を使用して最大の電力だったのはアウディRS e-tronGTの39.2kWhで、それとほぼ同等だ。ちなみに同じ充電器でも気温が低いときに使うと、だいぶ充電量が下がったケースもあるが、今回は26℃だったので快調だった。154kmの実走行をしても30分の急速充電器によってスタート時よりもバッテリー残量が増えているのだから、十分な性能があると言えるだろう。

 出力90kWの充電器が増えてくれれば、iXなど大容量バッテリーで充電受け入れ能力もしっかりしたモデルならばロングドライブでも怖くはない。

 出力40kWの充電器なら18kWh程度が充電され、今回の実電費にあてはめると高速道路を80〜100km程度は走行できるはずだ。

BMW iXはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 さすがはフラッグシップモデルだけあって、静粛性の高さや滑らかな走りが魅力のiX。BEVなのだから静かで滑らかなのは当たり前と言われそうだが、iXは他を一線を画すほど頭抜けているのだ。今回はワインディングロードを走れたが、ハンドリングや操縦安定性も相当に高いレベルにあった。ただし、スポーティなイメージが強いBMWとしては快適志向で、キュンキュンと俊敏な走りは強調されていない。そこは今回のiX xDrive50ではなく、まだ未試乗のiX M60に期待したい。

BMW iX xDrive50

■全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm

■ホイールベース:3000mm

■車両重量:2530kg

■バッテリー総電力量:111.5kWh

■モーター定格出力(前/後):70/95kW

■フロントモーター最高出力:258ps(190kW)/8000rpm

■フロントモーター最大トルク:37.2kgf(365Nm)/0〜5000rpm

■リアモーター最高出力:313ps(230kW)/8000rpm

■リアモーター最大トルク:40.8kgf(400Nm)/0〜5000rpm

■システム最高出力:523ps(385kW)

■システム最大トルク:78.0kgf(765Nm)

■サスペンション前/後:ウイッシュボーン/マルチリンク

■ブレーキ前後:Vディスク

■タイヤ前後:255/50R21

取材車オプション

■ボディカラー(アヴァンチュリン・レッド)、ナチュラル・レザーカスタネア(ブラック/カスタネア)、ファースト・クラス・パッケージ、ラウンジ・パッケージ、テクノロジー・パッケージ、エアロダイナミック・ホイール、スポーツ・パッケージ

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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