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更新日:2022.04.22 / 掲載日:2022.04.22

【ホンダ 新型シビック e:HEV】走りも燃費も諦めない新世代ハイブリッド

文●大音安弘 写真●ホンダ

 ホンダは、2022年4月14日、新型シビックの追加モデル「シビック e:HEV」をWEBサイトにて先行公開を行った。新型シビックは、11世代目となる新型が2021年8月にフルモデルチェンジを発表したばかり。現在のラインアップは、1.5Lターボエンジンのガソリン車のみとなっており、新たにハイブリッド車である「e:HEV」を加え、2022年7月に発売する予定だ。ホンダにとってハイブリッド車は、同社の電動化戦略に置いて、エンジン車からEVへのシフトの間を取り持つ重要な存在といえる。新世代ホンダを象徴するハイブリッド・シビックはどんなクルマが目指されているのか。新ハイブリッドシステム「e:HEV」の特徴を中心に解説しよう。

エンジンとモーターそれぞれのメリットを生かした次世代ハイブリッド

シビック e:HEV

 ホンダが主力とするハイブリッドシステム「e:HEV」は、2つの電気モーターを備えるハイブリッドシステムだ。これらの電気モーターは、発電用と走行用に役割を分担して走行を行う。さらにエンジンの動力を駆動にも使える。これが「シリーズパラレル方式」のハイブリッドシステムである点もポイント。この構造は、トヨタのハイブリッド車でも使われる一般的なものだ。大きな特徴は、走行時の動力源をモーターとエンジンのいずれかを選択する切替方式としていること。例えば、トヨタ車の場合、ハイブリッドモードだと、エンジンと電気モーターの力を電気式無段変速機で混流されて走るが、ホンダ車の「e:HEV」では、ハイブリッドモードでも、エンジンは発電に集中し、走行はモーターのみで行う。但し、シーンによっては、エンジン直結モードに変更し、エンジンの動力を直接駆動に伝達することもできる。なぜハイブリッドモードでも、電気モーター走行となるのに、わざわざエンジン直結モードを備えることを疑問に感じるだろうが、そこに低燃費の秘密がある。エンジンが得意とする高速巡行では、エンジン動力を電気に変換することなく、直接駆動に伝えることで、よりエネルギー効率を高めるのが狙い。つまり、エンジン車とハイブリッド車のメリットを最大限活かせるハイブリッドカーを目指しているのが、「e:HEV」なのだ。

 そんなホンダの2モーターハイブリッド「e:HEV」は、小型車向けの1.5Lエンジンと中型車向けの2.0Lエンジンのふたつのシステムがある。それでも新型シビックには、パワフルな後者が与えられている。その理由は、シビックには「FUN TO DRIVE」が必要性能のひとつと考えているためだ。大衆車として誕生したシビックだが、歴代モデルでは、スポーティなモデルを用意してきたため、クルマ好きや運転好きからの支持も厚い。そのため、ホンダは、エコカーの代表格であるハイブリッド車でも、環境性能が高いというだけでは、ファンに喜んでもらえないと考えているのだ。

 そんなハイブリッド「e:HEV」最大のトピックは新エンジンの採用だ。この先も10年の強化される環境規制を見据えたオールニューエンジンで、従来の2.0Lエンジンとの最大の違いは、直噴化による1回の燃焼時に多段階の燃料噴射を行うことで、広い領域でのエミッション発生を抑制していることだ。この新エンジンにより追い越し加速や高速巡行など燃費に不利な状況でも優れた燃費を実現しているという。直噴化は、音や振動面での課題も生まれるが、その点に置いてもしっかり対策を施すことで、ポート噴射のアコードハイブリッド用2.0Lエンジンと変らぬ静粛性と高回転域での心地よいエンジンサウンドを実現しているという。新エンジンの単体性能は、最高出力104kW(約141ps)/6000rpm、最大トルク182Nm/4500rpmを発揮。アコードハイブリッド用と比べ、出力は同等としながらトルクを7Nm強化している。走行時の主役となる電気モーターの性能も最高出力135kW(約184ps)、最大トルク315Nmと、同クラスのインサイトの1.5Lのe:HEVシステムと比較すると、最高出力で+39kW(約53ps)、最大トルクで+48Nmもの違いがあり、パワフルなハイブリッド車であることが分かる。もちろん、電動パワートレインの小型軽量化、高効率化も進んでおり、全面的な性能向上が図られている。まさにホンダの電動車の最新の知見が惜しみなく、投入されたハイブリッドカーというわけだ。

低重心や高剛性といった優れた資質に加えサウンドのような感性領域も重視

シビック e:HEV

 FUN TO DRIVE、運転の愉しさという点でも、ハイブリッド化は大きなメリットがある。駆動用バッテリーや電動システムなどが車両の低い位置に搭載しているため、1.5Lターボ車よりも10mmの低重心化に。さらにバッテリーユニットを守る構造が、リヤボディ剛性の向上に繋がり、コーナリングや高速レーンチェンジ、ワインディング走行などのボディに負荷が掛かる状況でのハンドリングの良さやボディの安定感の向上にも繋がっており、快適性だけでなく、運動性能も高まっているという。さらに興味深いのは、シビック開発者たちは、シビックe:HEVを単なるエコカーにするつもりは一切なかったと断言している点だ。低燃費や環境負荷低減はもちろんだが、電動車らしい静かさを強調するのではなく、乗って愉しい、乗員みんなが快適で心地よいクルマを目指しているのだ。その最大の特徴となるのが、新エンジン。なんとハイブリッド用を前提に開発されているが、高回転まで気持ちよく回るエンジンで、そのフィーリングは、かつてのホンダエンジンを彷彿させるというから面白い。もちろん、それはエンジンを全域で効率よく使うための技術でもあるが、同時にエンジンを積むクルマの魅力も感じることが出来るわけだ。もちろん、エンジンサウンドは、ノイジーということではなく、クルマとの一体感を生むためである。心地よさを高めるべく、アクティブノイズコントロールだけでなく、スポーツ走行を盛り上げるアクティブサウンドコントロールも使われている。また電動システムの良さをより体感できるように、ドライブモードには、仕様の切替が可能なインディビジュルモードが追加され、任意の設定が楽しめる。

走る喜びと経済性を両立させるユーザー想いのハイブリッドカー

シビック e:HEV

 最後に内外装の仕様についてだが、大きな差別化は図られていらず、エクステリアは、前後のHエンブレムのベースがブルー化され、グリルとドアミラーなどがグロスブロック仕様に。さらにリヤバンパーガーニッシュが専用化される程度。インテリアもシフトレバーが電制ボタン式のエレクトリックギアセレクターとなり、e:HEV専用表示のデジタルメーターが与えられる程度に留められている。実にさり気ない演出となっている。

 ハイブリッドシステムを中心に解説してきたシビック e:HEVだが、単に電動車感を高めた進化型ハイブリッドではなく、エンジンと電気モーターのふたつを備えるメリットを最大化している次世代を担うハイブリッドカーとして送り出される。しかも、ホンダらしい走る歓びもしっかり味わえるのも重要な価値のひとつ。それでいて、1.5Lターボ車と異なり、燃料もハイオクではなく、レギュラーというからお財布にも優しい。なんとユーザー想いのハイブリッドカーなのだ。1.5Lターボ車をベースに、さらに磨き上げられたシビックe:HEVは、クルマへの情熱を持ち続ける大人向けのシビックなのかもしれない。その価値については、今後の試乗レポートをお楽しみに……。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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