車種別・最新情報
更新日:2020.12.24 / 掲載日:2020.11.27

MAZDA MX-30のすべて

話題のニューモデルはSUV中心だが、その中でも特に注目を集める一台が登場。CXシリーズを擁するマツダがシリーズ名も新たにリリースするMX-30は、その名の通り従来ラインナップとは一線を画す個性を放つ。公道試乗やCXとの比較からその全貌に迫る。

マツダSUVの 新機軸、発進!!

マツダの未来を拡げる新趣向のクーペSUV

「魂動デザイン」と「人馬一体」はマツダのクルマ造りの根幹であり、ブランドイメージ確立の原動力となってきたのは事実だろう。ただ、それに拘泥すれば多様性や可能性が萎縮して未来は閉ざされてしまう。そんな危惧を打破するモデルがMX-30である。

カテゴリーはスペシャリティ志向SUV。4ドアの体を採っているが、RX-8と同様に観音開き分割機構を用いた2ドアと考えるべき。2ドアクーペの実用性を向上させた車体構造である。

ただし、2名乗車に割り切っていないのが興味深い。室内長とホイールベースはCX-30とほぼ等しく、後席乗降性にクセがあるものの乗り込んでしまえばヘッドルームもニースペースも不足ない。ちょっと圧迫感はあるがCX-30並みの広さは確保されている。

プラットフォームは前ストラット/後トーションビームの構成。駆動系を持つ4WDのリヤサスはドディオン式と捉えてもいい。最低地上高は180mmであり、これもCX-30と大差ない。

ハードウェアで興味深いのはパワートレーンだ。ISGを用いたM(マイルド)ハイブリッドを採用。小容量ながら専用リチウム電池を搭載する。また、マイルド型では珍しくブレーキシステムに回生油圧協調制御を採用し、効率向上を図っている。スペックよりも実効性を求めた設計だ。

これらのことから、CX-30からカジュアル&パーソナル志向で発展したバリエーションと考えてもいいのだが、側面から一段高くしたルーフ形状やプロテクターとモールの存在感を高めた外観はCX-30よりもSUV的であり、従来路線からの脱却を強く意識したものと言える。多様な価値観を取り入れた新生マツダの幕開けモデルと位置づけていいだろう。

icon MAZDA MX-30

MAZDA MX-30●発売日:10月8日
●価格:242万~339万3500円
問い合わせ先:0120-386-919(マツダコールセンター)

スタイルからグレード構成まで新たな方向性にチャレンジ

 クーペ的フォルムに新鮮なフェイスデザイン、そしてピラーレス観音開きの「フリースタイルドア」など、新たな試みを満載。グレード構成は標準仕様と全盛り100周年車とシンプル。「Your original choice」と銘打ち、標準仕様にオプションを追加していくセミオーダー式のシステムを提案している。

icon 100周年特別記念車

●セラミックメタリック×マローンルージュ(2トーン)

●ブラック×レッド

マツダが各モデルで展開中の特別仕様車。フルオプションに加え、専用の車体色/内装色/ロゴ付アイテムを採用する。

【公道試乗インプレッション】

ドライブフィールも運転支援も洗練度高し!

標準仕様・FF ●車両本体価格:242万円 ●ボディカラー:セラミックメタリック

■主要諸元(標準仕様・FF)
●全長×全幅×全高(mm):4395×1795×1550 ●ホイールベース(mm):2655 ●最低地上高(mm):180●車両重量(kg):1460 ●パワートレーン:1997cc直4DOHC直噴(156PS/20.3kg・m)+モーター(6.9PS/5.0kg・m) ●トランスミッション:6速AT ●使用燃料・タンク容量(L):レギュラーガソリン・51 ●WLTCモード総合燃費:15.6km/L●タイヤサイズ:215/55R18

奇をてらわず、自然で バランスが良好だ

燃費向上がMハイブリッドの主目的だが、ドライブフィールはマツダのパワートレーンの中では最も現代的だ。回転を抑えて浅いアクセル開度での反応がいい。加速時のモーターアシストの効果だろうが、小さなペダルコントロールに素直に追従する加減速特性が余力感を高めている。100km/h巡航回転数は2100回転強だが、けっこう余裕があり、もう1段ギヤが欲しいくらいだ。

サスチューンは硬さでは他のマツダ車と同様だが、車軸周りの細かな動きなどがしなやかになっている。突き上げ等の衝撃から「角」が取れた感じである。悪く言えば軸周りの剛性感が減少したとなるが、肌触りのいい乗り心地にはほどよい往なしが重要である。

GVCの効果もあるのだろうが、初期操舵から定常円への一連の挙動の繋がりがよく、間合いのいい操縦感覚だ。加減速や路面のうねりによる方向性の乱れを抑えるなど、操安の基本特性は他のマツダ車に似ているが、全体のバランスがよくなった。

走行性能で見逃せないのは運転支援機能の向上。特にLKAは圧倒的に使いやすくなった。作動速度域が拡がっただけでなく、システムによる補正操舵補助が巧み。車線内の位置取りは中央付近だが、車体軸線と走行車線の方向を早いタイミングで穏やかに補正するので動きに落ち着きがあり、保舵の違和感も少ない。

パワーフィールにしてもフットワークにしても、あるいは運転支援もケレン味がなく、自然な馴染みやすさが印象的だった。

10Ahの24Vリチウムイオン電池を搭載するMハイブリッドは回生協調ブレーキの採用などで効率を追求。駆動トルクを自動調整するGVCプラスは4WDと協調する統合制御に。

  • ●シルバー塗装

  • ●高輝度ダーク塗装

全車18インチアルミ+215/55R18。エクステリアパッケージは高輝度ダーク仕上げ、100周年車は専用ホイールキャップとなる。

  • 基本骨格はストレート化&環状構造を基本に設計。剛性とエネルギー伝達効率を高めるとともに、騒音の原因となる振動を低減した。

  • ■e-SKYACTIV G

    2LガソリンエンジンをMハイブリッド化。ベルト式ISGによってi-stopもスムーズに。

マツダ3やCX-30と同じ前=マクファーソンストラット/後=トーションビームのサスシステムはブッシュの最適化等を実施した。

量産EVとして企画されるも国内市場ではMハイブリッドが中心

CX-30をベースに開発され、マツダ初の量産電気自動車(EV)として’19年10月に世界初公開、同月の東京モーターショーで一般公開(写真)された。欧州ではそのままEVとして予約が開始されたが、国内市販はMハイブリッドに。EVはリース販売の予定だ。

【エクステリア&寸法】

シンプルで親しみのある 「Human Modern」

全長:4395mm ホイールベース:2655mm

「わたしらしく生きる」がコンセプトのMX-30。デザインコンセプトは「Human Modern」。マツダのデザインテーマである「魂動(こどう)」を発展させ、親しみや温かみを感じさせるシンプルなフォルムとした。

  • 全幅:1795mm トレッド:1565mm 最小回転半径:5.3m

    グリル周りの加飾や強い“吊り目”を廃止し、シンプルで彫りの深い表情を見せる。

  • 全高:1550mm 最低地上高:180mm トレッド:1565mm 車重:1460kg(FF)/1520kg(4WD)

    肩の張った力強い造形に、ヘッドランプとも通ずるシリンダー形状のリヤランプを採用。

 CX系よりもシンプルさを追求。フロントはシグネチャーウイングを廃止して中心線に要素を収斂させ、サイドは一体感のある面構成のボディに、対照的な傾斜のA/Dピラーが印象的なキャビンを組み合わせている。

灯火類はすべてLEDで、前後ともに魂動デザインに共通する奥行きのあるシリンダー形状。リヤは特に立体感が強調されている。

ルーフとサイドを塗り分けたフレームドトップ(3トーン)を設定。エクステリアパッケージのピラーガーニッシュはMAZDAのロゴ入りだ。

よりアウトドア志向に仕立てられた用品装着車。システムキャリアベースは4万3559円、キャリアバスケットはTHULE市販品だ。

【インテリア&ユーティリティ】

水平基調の空間構成によりシンプルかつワイドな印象に。宙に浮かせたフローティングコンソールやコルクなど、既存モデルとは異なる意匠や素材を多数採用している。

TFTカラー液晶の7インチマルチスピードメーターを中心に据えるほか、フロントガラス照射式カラーHUDも備える。

  • 8.8インチディスプレイを標準装着。アップルやアンドロイドの連携アプリに対応、ナビ機能(SDカード)はディーラーOP。

  • エアコンの操作/表示をフローティングコンソールのタッチパネルに集約。ダイヤルやつまみが減り、シンプルデザインに貢献。

シフトレバーは選択位置に固定されるステーショナリー式。パターンは奥からR/N/D、Rの右がPだ 。

足を自然に伸ばした先にペダルを配置。スポーツペダルはディーラーOP設定だ。

前後シートは乗員の骨盤を立て、背骨のS字を維持する形状。標準仕様のシート表皮はクロスだが、撮影車はインテリアパッケージ装着により、クロス+合成皮革となっている。

ユーティリティパッケージには運転席パワーシートや前席シートヒーターが含まれる。

マツダが東洋コルク工業として設立されて100年、創業の歴史に関わるコルクをインテリア素材に初採用。基材との同時成型や専用コーティングで耐久性を確保している

リヤシートは6:4分割可倒式。荷室容量は床下を含めて約400L(VDA方式)で、ボーズサウンドシステム装着車は床下にウーファーユニットが設置される。

前後席ともに着座姿勢はSUVとしてはあまりアップライトではないが、ベルトラインとアイポイントの位置関係のバランスが取れているので沈み込むような印象もない。ドラポジは比較的自由度が高く、各調節機能も充実しているため好みのポジションに設定しやすい。

結局どーなの!? Freestyle Door

●リヤドアはフロントドアオープン時のみ開閉可能
●後席から前席をスライド可能
●前席のシートベルトはリヤドアに搭載

乗降性はミニバンの3列目に近い印象

 後席のへの乗り込みは前席退避でできた空間に潜り込むような感じ。2ドアクーペほどではないが、ワゴン型ミニバンのサードシートにアクセスするのと似ている。なお、前席はドア開口幅は少なめながら、標準的なドラポジなら問題なく、コンパクトSUVの標準レベルだ。

ピラーレス化にともない、リヤドアの内部に補強部材を配置して衝突安全性を確保。

【先進装備 etc.】

マツダの先進安全技術「i-ACTIVSENSE」は、右直事故回避やロードキープアシスト、側方危機回避アシストなどの機能を追加し、緊急時車線維持支援を備えた最新仕様だ。

■ロードキープアシスト機能

約60km/h以上で走行中に縁石などを検知して操舵をアシスト。

■側方危機回避アシスト機能

約60km/h以上で走行中に後方・後側方を24GHzレーダーセンサーで検知し、危険な背線変更操作に対して操舵アシストを行う。

【まとめ&おすすめグレード】

実は中身は良心的。長距離重視なら安全系OPを選択

分割式2ドアとも言える観音開き4ドアは実用性ではハンデ。ユーザータイプを選ぶスペシャリティ志向のSUVなのは違いないが、乗ってみれば一般的なユーザーにも馴染みやすい懐深さがある。マツダのよさを残してマニア好みの味を抜いたと言い換えてもいい。ジャンルは際どいが中身は良識的。後席の使用頻度が少ないならコンパクトSUVを狙っているユーザーに勧められるモデルである。

なお、車種構成は1グレード設定で、装備内容に比べて値頃感のあるパッケージOPが複数用意されている。ACC等の基本安全&運転支援装備を標準装備するが、長距離用途重視なら新型LKAは是非とも欲しいのでセーフティパッケージが一番の狙い目だ。

MXかCXか迷ったときの 決め手はココだ!!

好み以外の実用部分で CX-30くらべてみると

スカイアクティブXやディーゼル縛りならCXしかないが、MXも動力性能は十分で、実用上の決定打にはなりがたい。荷室はCXが40Lほど大きいが常日頃気になる差でもなさそうだ。車載通信機によるコネクトサービスは両車共通。運転支援は後発のMXが洗練されているのでそれで選ぶ手はある。結局、最大の違いはリヤドアだ。4人乗り前提なら乗降性でCX-30に分があるが、狭い場所での乗降など場面によってはMXが有利な場合も。使用状況との相性が決め手となる。

icon [正統]CX-30

【CX】にあってMXにない
●ディーゼル
●スカイアクティブX
●普通のリヤドア ほか

  • icon [異色]MX-30

    【MX】にあってCXにない
    ●マイルドハイブリッド
    ●フリースタイルドア
    ●最新仕様の運転支援 ほか

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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