車の歴史
更新日:2026.04.18 / 掲載日:2026.04.18
エコ時代を先取りした元祖ハイブリッドカー、トヨタ プリウス【名車の生い立ち#25】

グーネットの人気中古車ランキングで首位を独走しているのがトヨタ プリウス。さらに新車販売ラインキングも非常に好調で、街中でも見かけない日はないほど。そんなプリウスは発売から今年(2026年)で29年目。30年の節目が迫るなか、ハイブリッドカーとしてトップクラスの燃費と先進装備をまとい人気を博しています。そこで今回は、プリウスの歩んできた歴史を振り返ってみましょう。
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21世紀を先取りした未来のエコカー、初代プリウス(10系)

1990年代の自動車事情は、スポーツカーブームの到来やミニバンの黎明期として語られることがあります。しかし、21世紀が目前に迫るなか、自動車メーカー各社は「新世紀にふさわしいクルマとは?」という命題に取り組まなければなりませんでした。トヨタが次世代のクルマのあり方を検討し始めたのは1992年といわれており、1994年には本格的なプロジェクトとして始動。「最低でも従来の2倍の燃費性能アップ」という極めて高いハードルが設定されました。
そんなトヨタが選んだ方法は、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド方式。今でこそハイブリッドカーは当たり前の存在ですが、90年代当時はそのようなクルマはほぼ皆無。およそ100年ほど昔、1899年のローナーポルシェ ミクステが世界初のハイブリッドカーと言われていますが、当時のバッテリー性能は貧弱で、これがメインストリームになることはなく、量産車として普及するのは1990年代後半まで待たなくてはいけませんでした。

1995年の東京モーターショーでは、次世代の自動車として「プリウス(プロトタイプ)」を出展。パワートレインは、ガソリンエンジンをモーターでアシストする「トヨタ EMS(Energy Management System)」を採用した、今に続くプリウスの原型となったモデルといえます。1997年3月には、ハイブリッドの核となるTHS(Toyota Hybrid System)を発表。これは先に発表されたEMSとは異なるシステムで、モーターの動力を直接駆動に用いるパラレル式と、発電にモーターを使うシリーズ式のいいとこ取りを目指した複合型システムを採用したのがEMSとの違いです。エンジンは高効率なアトキンソンサイクルを採用し、燃費性能を100%向上、CO2は半減というこれまでにないエコ性能を可能にするものでした。

同年10月にはプリウスの市販型は正式発表。そのルックスは、2年前にお披露目されたコンセプトカーと比べて洗練化されたものに。「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーで登場したプリウスは、まさに未来のクルマがやってきたという印象を与える鮮烈なものでした。燃費は10・15モードで28.0km/L。今でこそ少し物足りない数値ですが、当時の燃費は15.0km/L前後が主流。そのインパクトはとてつもなく大きいものです。また、215万円スタートというリーズナブルな価格も人々を驚かせました。やや唐突なブレーキフィールという難はあったものの、高い静粛性や心地よい加速感など走りも未来的。21世紀を先取りしたプリウスは当時大きな話題となり、1997-1998 日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。
ハイブリッドシステムを刷新して大幅進化した2代目(20系)

中東情勢が悪化し自衛隊のイラク派遣の決定、新型肺炎SARSの流行など、大きな出来事が続いた2003年、プリウスはフルモデルチェンジを実施。初代プリウスは累計販売台数12万台を突破し、量産型ハイブリッドカーの草分けとして大きな功績を残しました。その後継となる2代目は、デザインからメカニズムまでほぼ全て一新したのが見どころ。パワートレインの核となるTHSはバージョン2(THS II)に進化し、モーター出力を50%増しの50kWとすることで走行性能を飛躍的にアップ。10・15モード燃費は世界トップレベルの35.5km/Lを達成したほか、インテリジェントパーキングアシストや横滑り防止機構と電動パワステを統合的に制御する「S-VSC」も採用されました。

ボディサイズはひとまわり拡大され、全長は4445mm(先代比+135mm)、ホイールベース2700mm(先代比+150mm)に延長。このおかげで室内は広く快適になり、ゆとりの空間が生まれました。車内はただ広くなっただけではありません。エクステリアのデザインもドラスティックに一新されました。2代目は5ドア+ハイデッキの“トライアングルモノフォルム”を採用し、真横から見ると三角形のようなシルエットに。Cd値=0.26という優れた空力性能も実現し、21世紀の次世代ハイブリッドカーに相応しい走りとルックスを手に入れたのです。
走りも見た目も正常進化を果たした3代目(30系)

2000年代後半になるとエコカーブームが到来。2009年には国交省からエコカー減税の概要が発表され、ハイブリッドカーや電気自動車、さらにクリーンディーゼルなど燃費に優れたクルマは税金が優遇されるように。この前後から各社のエコカー開発競争はさらに過熱していきます。燃費性能はクルマの大きなステータスになり、クルマ選びでは欠かせないファクターとなりました。2009年5月、プリウスはモデルチェンジを受けて3代目に進化。ハイブリッドシステムはリダクションギア付きのTHS IIを搭載し、排気量は1.5Lから1.8Lにアップ。Cd値=0.25に向上したほか、軽量化や消費電力を低減するなど効率化を図り、10・15モード燃費は38.0km/Lを実現しました。

エクステリアは、プリウスの象徴だったトライアングルシルエットをさらに進化。先代のスタイリッシュなデザインをベースとしながら、よりスポーティで動的なスタイルとなったのが見どころ。ホイールベースはそのままに、全長は4460mm(先代比+15mm)に延長。後席のひざ元スペースは20mm、室内長は15mmアップし、より広く快適になりました。さらに、バッテリーが小型化されると同時に配置を見直すことで、ラゲッジ容量は約30L拡大。リアシートを倒さなくてもゴルフバッグ3個を収納する積載性を確保しています。燃費だけでなく高い実用性が評価され、初代に続き2度目の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。

さらに、2011年5月にはミニバンスタイルのプリウスαが登場。これは全長が4615mmに拡大され、車高も1575mmを確保することでゆとりの室内空間を実現したモデル。5名乗車(2列シート)と7名乗車(3列シート)の2タイプを設定し、幅広いニーズに応えたのが特徴となっています。さらに同年11月、プラグインハイブリッドのプリウスPHVの受注がスタート。外部充電を可能とし、近距離ではEVモード、バッテリーが切れたらHVモードで走行可能。プリウスの新たな可能性を切り開いたモデルとなりました。
TNGAを導入してクルマとしての性能を高めた4代目(50系)

2015年12月、プリウスはフルモデルチェンジ。4代目(50系)になったプリウスは、かつてないほど大きな進化を遂げました。ちょうどこの時期、トヨタはクルマづくりの構造改革を推し進めていた頃。新型プリウスは、「Toyota New Global Architecture(TNGA)」第1弾として投入されたのです。大幅な低重心化、軽量化、高剛性化により走行性能が格段にアップ。リアにはダブルウィッシュボーン式サスペンション(従来まではトーションビーム)を採用し、乗り心地の改善とともに気持ちのよいコーナーリングを実現。また、E-Fourと呼ばれる4WDも設定し、積雪地帯のニーズもしっかりと応えました。

パワートレインは、従来と同じく1.8LエンジンのTHS IIを搭載。エンジンの最大熱効率は40%を達成したほか、モーター、トランスアクスル、パワーコントロールユニット、バッテリーなどシステム全体を小型・軽量化。JC08モード燃費は最大で40.8km/L(Eグレード)と、従来型からさらに燃費を改善しました。エクステリアは、涙目形状が特徴的なヘッドランプを採用。個性を強めたそのスタイルは発売後賛否両論を巻き起こしたものの、見るものに強烈なインパクトを与えました。そのほか、先進安全装備「トヨタセーフティセンスP」の導入など、安全面も抜かりなし。次世代ハイブリッドカーのベンチマークを再び築き上げたのです。
デザインと走りを磨き上げた5代目(60系)

かつては斬新なテクノロジーだったハイブリッドカーも、2020年に入る頃にはありふれたものとなりました。ファミリーカーの多くはモーターを搭載してエンジンをアシストするハイブリッドを採用。プラグインハイブリッドや電気自動車も普及が進み、エコカーという言葉も特別なものではなくなっていきます。それゆえプリウスは、それならではの特別な価値を追求する必要がありました。2023年1月に発表された5代目(60系)は、「Hybrid Reborn」をコンセプトにデザインと走りをブラッシュアップ。エクステリアは、伝統のモノフォルムシルエットを継承しつつ、スポーツカーのような低重心なプロポーションとなり、クルマ好きがワクワクするような特別感を目指したのです。

プラットフォームは第2世代のTNGAを導入。パワートレインは2.0Lと1.8Lの2つを用意し、「G」または「Z」の上位グレードではWLTCモードで28.6km/Lという低燃費を達成。システム最高出力は196馬力と過去最高レベルに高められ、高い動力性能を身につけました。一方、「U」または「X」グレードはWLTCモードで32.6km/Lを実現。そのほか、予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備とし、安全性にも磨きがかけられました。また、同年3月にはPHEVバージョンも登場。こちらも大きく進化し、EVのみで105kmも走破可能な性能を獲得(17インチタイヤ装着車)。そして同年末、プリウスとしては3度目の日本カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いています。
ハイブリッドが当たり前の時代になっても、つねに時代をリードするプリウス。来年30年周年という節目を迎えることもあり、派生車の登場なども期待が寄せられます。トヨタ プリウスは、まさに日本が世界に誇る名車といっていいでしょう。

