パーツ取付・交換
更新日:2025.12.19 / 掲載日:2025.12.19

スラストベアリングとは?車での役割と使用部位、故障の症状などを解説

スラストベアリングは、車における回転運動の支えとなる重要な部品です。名前は聞いたことがあっても、「どこに使われているのか」「通常のベアリングとなにが違うのか」「交換の必要はあるのか」など、疑問を感じて検索する人も多いでしょう。

実はスラストベアリングは、トランスミッションやエンジン、サスペンションなど、さまざまな部位で使用されており、劣化すると異音や振動、走行性能の低下を招く恐れがあります。

この記事では、スラストベアリングの仕組みや特徴、使用部位、故障のサイン、純正品を選ぶ重要性までをくわしく解説します。

1. スラストベアリングとは

車の中にはさまざまな「ベアリング(軸受)」が使われていますが、スラストベアリングは回転する軸に働く「軸方向」の力を支えるために特化した部品です。

構造は比較的シンプルでありながら、トランスミッションやエンジン内部、サスペンション周辺など、自動車の走行性能や操縦安定性を支える重要な場所で活躍しています。ここではまず、スラストベアリングの基本的な仕組みとほかのベアリングとの違いを整理しておきましょう。

(1) スラストベアリングの特徴

スラストベアリングとは、回転軸と同じ方向(軸方向)に加わる力=スラスト荷重(アキシアル荷重)を支えるために設計されたベアリングです。

たとえば自動車では、クラッチ操作によって生じる軸方向の力や、エンジン内部でクランクシャフトが回転する際に発生する軸方向の力が代表的なスラスト荷重の例にあたります。

こうした力を受け止めることで、部品同士の過度な摩耗を防ぎ、部品が滑らかに動くよう支える役割を果たしています。

構造としては、上下のリング(上輪・下輪)の間に転動体(ボールまたはローラー)が組み込まれており、荷重を均等に分散しながらスムーズな回転を支える仕組みになっています。スラストベアリングには以下の2つのタイプがあり、用途に応じて使い分けられています。

特徴スラスト玉軸受(ボールタイプ)スラストころ軸受(ニードルや円筒ローラータイプ)
構造上下のリング間に鋼球が配置された構造上下のリング間に円筒形やニードル状のローラーが配置された構造
特徴・コンパクト設計
・回転性能に優れる
・摩擦抵抗が小さい
・高速回転に適している
・大きな軸方向荷重に対応
・振動や衝撃に強い
・接触面積が大きい
・耐久性に優れている

なお、スラストベアリングには、使用箇所に合わせて内径・外径・厚み・保持器形状などの規格が細かく設定されています。車に使用される場合も、部位ごとに適合するベアリング規格が異なるため、構造と規格を正しく理解しておくことが重要です。

(2) ラジアルベアリングとの違い

ラジアルベアリング

ベアリングは大きく分けて、「ラジアルベアリング」と「スラストベアリング」に分類されます。

両者の違いは、対応する荷重の向きにあります。

ラジアルベアリングは、回転軸に対して「垂直な方向から加わる力」(ラジアル荷重)を支えるためのものです。回転体の重さを支えつつ滑らかに回転させる役割を果たしています。
スラストベアリングは、回転軸と「同じ向きに加わる力」(スラスト荷重)を支えるためのものです。前後方向にかかる圧力を分散し、部品同士の摩耗や損傷を防ぎます。

車にはこの両方のベアリングが適所に使い分けられており、用途や力の向きに応じて使い分けられています。

2. 車でよく使用されている部位

スラストベアリングは、自動車の各部品の中で軸方向にかかる力を受け止める部品で、部品の寿命や動きの滑らかさに大きく関わっています。使用部位ごとに求められる性能や形状が異なるため、種類もさまざまです。

ここでは、自動車でスラストベアリングが使われている代表的な部位と、それぞれの使用例を紹介します。

(1) トランスミッション内(変速機)

トランスミッションでは、ギアが回転する際に軸方向の力が発生します。とくに、ヘリカルギアのような斜めに歯が切られた構造では、スラスト荷重が大きくなりやすいため、スラストベアリングの使用が欠かせません。

たとえば、マニュアルトランスミッションでは、インプットシャフトやアウトプットシャフトの端部、カウンターギアやシンクロナイザー付近に配置されています。ギアやシャフトがケースに直接こすれて摩耗するのを防ぎ、スムーズな変速や耐久性の向上に貢献していたり、クラッチのレリーズベアリングにスラストベアリングが用いられていたりします。

これにより、クラッチペダルを踏んだ際に回転しているダイヤフラムスプリングをスムーズに押し込み、エンジンとトランスミッションを切り離すのです。その結果、変速操作をスムーズにできる仕組みになっています。

オートマチックトランスミッションでも、変速機構の安定性を高める目的で複数のスラストベアリングが使われており、快適な走行性能に貢献しているのです。

(2) エンジン内部のクランクシャフト周辺

クランクシャフトは、ピストンの上下運動を回転運動に変える部品です。このとき、軸方向にわずかな力がかかります。このスラスト荷重を受け止めるために、スラストワッシャーと呼ばれるベアリングが組み込まれています。

スラストワッシャーは、半円形の金属板を左右から挟み込む構造で、クランクシャフトの前後移動を防いでくれるのです。これにより、金属同士の干渉を避け、エンジン内部の摩耗や異音の発生を抑える効果があります。

また、潤滑性能と耐久性のバランスが求められるため、この部位では設計精度や使用素材も重要なポイントになります。

(3) サスペンション・ステアリング周辺

車高調のようなサスペンション構造では、スプリングが伸縮する際に回転する(ねじれる)動きが加わります。ここにスラストベアリングを挟むことで、回転の滑らかさが向上し、乗り心地の改善につながります。

スプリングがねじれるのを防ぐことにより、異音や偏摩耗の発生を抑制できる点もメリットです。また、ステアリングコラム内部などにもスラスト荷重がかかる部分があり、スラストベアリングを組み込むことで、ハンドル操作時の力を軽減し、滑らかな操舵フィールを支えています。

3. スラストベアリングの役割と効果

スラストベアリングは、軸方向の力を受け止めるという基本的な役割に加え、車の乗り心地・操縦性・静粛性・耐久性にまで影響を及ぼすパーツです。搭載される部位ごとに得られる効果は異なりますが、いずれも車の快適性や安全性を底上げする重要な働きをしています。

ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのかを整理して解説します。

(1) 回転動作の補助と摩耗の軽減

スラストベアリングは、部品同士が軸方向の力を受けながら回転する場面で摩擦を減らし、摩耗を防ぐ役割があります。

たとえばエンジン内部では、クランクシャフトが回転する際に発生するスラスト荷重を受け止め、軸の位置ズレや金属同士の接触を防いでくれるのです。これにより、摩耗や異常発熱を抑え、エンジン全体の寿命を延ばすことにつながります。

トランスミッション内でも、回転軸にかかる力をスムーズに受け止めることで、ギアの噛み合わせを安定させ、変速時の抵抗や部品へのダメージを軽減します。

また、車高調に用いられるスラストベアリングは、スプリングの回転動作を補助しながらねじれを防止します。結果としてスプリングの寿命の延長や、より正確なハンドリング応答に貢献しています。

(2) 異音や振動の抑制

スラストベアリングは、軸方向の力が原因で発生する異音や振動を抑える効果があります。

エンジンでは、スラスト荷重によりクランクシャフトが微妙に動くことで、打音や共振が生じることがあります。ベアリングが適切に機能していれば、こうした異常音の発生を防ぎ、エンジンの静粛性を保てるのです。

トランスミッションも、スラストベアリングが劣化するとギアの動きが不安定になり、変速時にショックや異音が発生しやすい箇所です。正常な状態を保つことで、運転中のストレスを軽減できます。

さらに、車高調のスプリング周辺では、ねじれが起きるとスプリングシートとの摩擦によってキュッという擦過音が出ることがあります。スラストベアリングを使うことで、こうした異音の発生を防いでいます。

(3) 操作性と信頼性の向上

スラストベアリングが滑らかに動くことで、部品の摩擦や抵抗が減り、その結果、クラッチ操作や変速動作がスムーズになり、車の操作感も向上します。

たとえば、トランスミッションでは、変速時のショックが抑えられ、ドライバーが意図したタイミングで確実にギアチェンジできます。これにより、運転時の安心感が高まるのです。

サスペンションや車高調では、路面の凹凸に対して柔軟に動作することで、突き上げをやわらげ、乗り心地を改善します。加えて、ステアリングの応答性も良くなるため、操縦安定性の向上にもつながるでしょう。

摩擦が減ることでエネルギー損失が抑えられ、燃費の改善になる場合もあります。

4. スラストベアリングの故障・劣化時に現れる症状とリスク

スラストベアリングは消耗部品のひとつであり、長期間の使用や過酷な条件下で使用すると少しずつ劣化が進みます。外観だけでは異常が分かりにくいため、異音や応答性の低下といった症状から劣化に気づくことが重要です。

ここでは、劣化したときに現れやすい代表的な症状と、そのまま放置すると起こり得るトラブルを解説します。

(1) 異音・金属音がする

スラストベアリングの劣化が進むと、初期症状として「キュルキュル」「ゴリゴリ」といった異音が出ることがあります。これは、内部の転動体(ボールやローラー)の動きがスムーズでなくなり、摩擦や干渉が発生している状態です。

異音の特徴や発生するタイミングは、使われている箇所によって異なります。以下に代表的な例をまとめました。

使用部位発生する異音発生タイミング主な原因の例
エンジン内部「カタカタ」「コンコン」といった打音アイドリング時や急加速時クランクシャフトのスラスト方向のガタつき
トランスミッション「ゴン」「ガツン」といったショック音変速操作時、とくにクラッチ操作時ギアやクラッチとの干渉による衝撃
車高調・サスペンション「キュルキュル」「ギシギシ」という擦れ音ハンドル操作時や段差乗り越え時スプリングのねじれやアッパーマウントの摩耗
全般「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」という金属音回転動作時ベアリングの潤滑不良または内部摩耗

(2) 挙動の違和感や応答性の低下

スラストベアリングがスムーズに動かなくなると、操作に対する反応が鈍くなったり、車の挙動に違和感が出たりします。場所によって症状は異なりますが、「動きが重い」「反応が遅い」と感じたときは注意が必要です。

以下は、部位別に見られる具体的な不具合の例です。

使用部位不具合の内容体感しやすいシーン主な原因の例
トランスミッションギア操作が重く感じられ、変速タイミングもズレるクラッチ操作時や変速時内部のスラストベアリングの摩耗・グリス切れ
ステアリング機構ハンドルの戻りが遅くなる曲がった後にハンドルが自然に戻らない場面ステアリングシャフトの回転抵抗増加
車高調(足回り)スプリングの動きが悪く突き上げ感が増す段差を越えるときや低速での路面変化スプリングの回転補助が効かず動きが阻害されている

(3) 放置による深刻なトラブルへの発展

異常を放置したまま走行を続けると、スラストベアリングの機能が失われ、周囲の部品にまでダメージが広がる可能性があります。

以下に、放置した場合に起こりうる代表的なトラブルを整理しました。

使用部位想定されるトラブルリスク主な原因の例
エンジンクランクシャフトがズレ、摩耗や焼き付きが発生出力低下・最悪の場合エンジン破損スラスト方向の動きを制御できず、周辺部品と干渉
トランスミッションギアの噛み合いが不安定になり破損の恐れ変速不能・クラッチが切れないベアリング破損による軸の位置ずれ
車高調・サスペンションスプリングの動きが制限され、操縦性が低下ハンドリング不良・安全性の著しい低下ベアリングが固着し、足回りの動きがスムーズに連動しない

5. スラストベアリングは純正品がおすすめ

自動車整備士による整備中の様子(イメージ)

スラストベアリングは車種や取り付け部位によって、必要な強度や寸法が異なるため、純正品を選ぶのがおすすめです。

汎用品はホームセンターや通販でも手に入りますが、寸法や固定方式の違いにより、異音や不具合が起きやすくなります。専門知識がない場合や、適合判断が難しい場合は、整備工場に相談して車両に合った部品を選定してもらうと安心です。

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6. 運転時の異音や振動が気になったら、グーネットピットにご相談ください

スラストベアリングは、普段は目立たない部品ですが、エンジンやトランスミッション、足回りなど車の各所で重要な役割を担っています。回転を支え、摩耗や異音を防ぐことで、快適な乗り心地と安定した操縦性を保っているのです。

もし走行中に異音や振動、操作の重さなどに気づいたら、ベアリングの劣化が進んでいるかもしれません。とくにミッションやエンジン周辺のベアリング不具合は、放置すると深刻なトラブルにつながる恐れがあります。

不安を感じた場合は、自己判断せず、整備のプロに相談するのが安心です。まずはグーネットピットで、お近くの整備工場を探してみましょう。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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