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更新日:2022.03.18 / 掲載日:2022.03.18

ガソリン高騰はいつまで続くのか?【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

 ガソリンが高い。3月に入って以来、レギュラーで170円超え、ハイオクなら180円超えが常態化しつつある。

ではこのガソリン価格の高騰はいつまで続くのか? 結論から言えば、ガソリン価格の高騰は常識的には5年以上続くだろう。

 もちろん各種税金が販売価格の半分を占める現状なので、減税などの措置が取られればまた話は別なのだが、原油の卸売り価格が下がる見込みは当分無い。そのメカニズムをかいつまんで説明しよう。

 まず最初に知っておくべきことがある。原油の生産は、必要な時に短期的に増やしたり、不要な時に短期的に減らすことが難しい。水道の蛇口の様なわけにはいかない。出始めればほぼ止められないし、出なくなればすぐに増やせない。

 安定して生産を続けるためには、多額の投資をしてメインテナンスを続けなくてはならないのだ。このメインテナンス投資を怠ると、一般に年率5%ずつ生産量が落ちて行くとされている。

 2015年に中国株暴落から始まった、いわゆるチャイナショックにより、世界経済の見通しに陰りが見えたことから、油田への投資は一気に半分に落ち込んだ。もちろん景気には波があるので、これまで通り、様子を見ながら投資を再開して、産出量を調整するつもりだった。

 ところが2018年に米中経済摩擦が発生。再び中国経済の先行きが怪しくなった。さらに追い打ちを掛けるように翌2019年に端を発する新型コロナのパンデミック。原油採掘への投資は、現在に至るまで半減のままである。その結果、世界の油田の総合計産出量が著しく目減りしてしまい。あらゆるエネルギー資源の不足を招いているのが現状だ。

 年率5%だと2015年から2022年までに33%減ることになる。投資はゼロになったわけではなく半減だから、ざっくりと16%程度足りなくなっていることになる。

 冷たい現実を直視するならば、投資が効果を発揮するには一般に5年程度の時間を要すると言われているので、今回のオイルショックは、タイミング的にこのチャイナショックと米中貿易摩擦の分のみの影響と考えられ、今後これにコロナ危機の影響が上積みされることになる。投資抑制が2024年まで続けば、目減りは20%になる。

 恐ろしい事に、それで終わりではない。グリーン系のNPOなどが、世界中の機関投資家に対して、脱炭素運動を背景にした「化石燃料投資の禁止」を求めるロビーイングを執拗に繰り返した結果、年金や保険などの運用をする機関投資家は、投資対象から石油投資事業を除外するルールを策定してしまった。

 現在、欧州を中心に深刻なエネルギー危機が発生しているのだが、このルールを改定しない限り、今後も機関投資家は化石燃料系事業の企業に対して投資ができない。このままだともっと足りなくなっていく。

 仮に今すぐ、投資規制を廃止して、緊急避難的に油田への投資を倍増させたとしても、その成果が得られるのは2027年頃からである。

 しかしよく考えた方が良い。果たしてルールが変わったとして機関投資家たちは、今回の一連の脱炭素騒動を経験した上で、これからの投資が回収できる確信を持てるだろうか? 莫大な投資をした後、再度掌返しをされたら堪らない。そんなことに絶対にならないという保証を誰もできない。

 ということで、極めて夢も希望もない結論だが、ガソリン価格が下がる見込みはあまり見えて来ない。ただし「だったらBEV」というのも先が見えない。EVへの移行が進めば、現在減免されている重量税や自動車税、免除されている燃料関係の税が、そのまま見逃されるとは思えない。取れるところから可能な限り取りたい行政は、すでに走行税の話を何度も持ち出している。

 噂されている走行税がいったいどういう計算になるか不明だが、もし重量別に課税されることになったら、BEVにとっては大変なことになるだろう。

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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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