新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.09.13

【試乗レポート】軽の枠を超えたしっかり感! 新型ホンダ N-BOXはボディがいい!

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス

 “日本の家族のしあわせのために”をコンセプトにフルモデルチェンジしたホンダN-BOXは、プラットフォームやパワートレインを一新。新採用となるロングスライドシート仕様による使い勝手の向上のほか、安全運転支援システムのホンダセンシングをホンダ軽自動車として初めて採用するなど、大幅な改良が加えられた。この新型N-BOXを短時間であるがテストする機会を得たので印象を述べてみよう。

 今回のフルモデルチェンジでは、エクステリア・インテリアデザインが大きく変更されたが、注目点は大幅な軽量化と共に、ボディ剛性アップの両立がある。さらに、新開発のエンジンや、改良されたトランスミッションなどにより、安心感のある走りと低燃費、そして快適な乗り心地が目指された。
 軽量化とボディ剛性アップは相反する課題だ。N-BOXでは、ボディに超高張力鋼板を多用したほか、ラインに新たな冶具を導入し、シーム溶接/高粘度接着剤併用接合を採用した。これは、これまでスポット溶接など点で接合していたものを、面で接合させたものだ。これにより大幅なボディ剛性の向上が図られた。

 一方、前述の超高張力鋼板のほか、新軽量プラットフォームを採用することなどで最大150kg軽量化。そこから、今回のN-BOXが目指す性能進化、装備充実、燃費向上等商品力アップのために重量を70kgほど使い、それでも80kgの軽量化に成功している。軽自動車で大人一人分以上の軽量化の余地があったとは驚きだ。これが実際に走りにどう影響しているのか興味深い。
 また、サスペンション周りを見直すとともに、リヤスタビライザーをFF車には全車標準とし走行安定性を向上させた。さらに振動や騒音を発生源で抑制する高性能エンジンマウントや、軽量防音システムを採用することで、静粛性も高められた。
 利便性においてもっとも魅力的なのはロングスライドシート仕様といっていいだろう。セパレートタイプのフロントシートを選択すると、助手席側は前後に570mmスライド可能だ。これにより、例えば190mmスライドするリヤシートを最先端に出し、助手席を最後端にすることで、手を伸ばすだけでチャイルドシートに座った子供の世話が出来るなど、使い勝手が大幅に向上している。

上級仕様のカスタムは静粛性も上

ホンダN-BOXカスタムG・LターボHonda SENSING

 最初にテストしたのはカスタムG・LターボHonda SENSINGだ。”セレブリティ・スタイル・エクステリア”というデザインコンセプトは気恥ずかしさを覚えないではないが、メッキぎらぎらではないフロントグリルや、キャラクターラインにより左右に張り出したように見せているフロントバンパーまわりは、上手く標準のN-BOXと差別化が図られている。
 サイドビューは標準車と共通だ。いくつかのキャラクターラインと面構成により、こういったボディタイプにありがちな商用車チックなイメージを拭い去り、シンプルながらも抑揚を持たせ、上質感を演出している。また、カスタムでは軽自動車初のシーケンシャルターンシグナルランプや片側9灯式のフルLEDヘッドランプも採用された。

 さて、乗り込んだ時の第一印象は室内が驚くほど広々としていること。そして、質感が非常に高いことだ。そこに“軽自動車”というネガティブなイメージは存在せず、積極的に選びたくなる魅力あふれるものだ。カスタムのインテリアカラーはブラック基調なので、広々感のさらなる演出という意味では逆効果だが、十分に広いので狭苦しい印象はない。
 説明はこのくらいにしてそろそろ走り出してみよう。クルマが停めてある地下駐車場からゆっくりとスロープを登り、一般道へ這い出て、歩道の段差を乗り越えた際、ボディが非常にしっかりしていることに気づかされた。これまでこういったスーパーハイトワゴン系は、床面がわなわなと震えたり、ひどいときはボディがねじれたりするクルマも少なくなかったのだが、このN-BOXにはそれがまったくなく、高いボディ剛性が感じられ、この第一印象はクルマを降りるまで変わらなかった。
 そこからゆっくりとアクセルを踏み込み、街の流れに乗って走り出すと、64馬力、10.6kgmを発揮するi-VETCターボエンジンは十分以上のパワフルさで、ドライバーにストレスを感じさせることはなく、もちろんターボラグという言葉は過去のものだ。タコメーターを観察していると、街中では2000rpmから2500rpmあたりを指しており、最大トルク発生回転数2600rpmあたりを上手く使っていることがわかる。そこに貢献しているのが新開発のCVTだ。アクセルを踏み込めばスムーズに回転に同調しスピードが上がる違和感のないものが実現出来た。

 また、足のしなやかさも印象的だ。前述のとおりボディ剛性が高いことにより、足まわりをしっかりとセッティング出来た結果、きちんとサスペンションがストロークして、ショックを効果的に吸収していることが伝わってくる。さらに分厚いシートもそのショックを吸収し、より上質さを感じさせている。
 今回のフルモデルチェンジのポイントである静粛性の向上では、とくにカスタムでは標準仕様よりも防音材の適用個所を増やしていることもあり、エンジンノイズやロードノイズの侵入は低く、Bセグあたりの登録車顔負けの静粛性を実現している。
 どうしても、走り始めると動力性能や足まわりの動きなどの挙動に目が行きがちなのだが、何よりこのクルマのいちばん大きな利点は視界のよさだ。Aピラーを先代の88mmから65mmと細くした結果、前方視界は大幅に広がり、とくに右左折時の不安は劇的に減っている。また、新設計のステアリングは握り径や形状を徹底的に見直されており、手の小さい女性でも気持ちよくステアリングを握ることが出来るなど、不安なく気軽にクルマを取りまわせるよう仕上げられていた。

 一方、気になる点もある。まずメーターから与えられる情報が煩雑過ぎ、目にうるさく感じられるのだ。もう少しフォントの大きさやスピードメーター・タコメーターの回転を表す目盛り線の長さ等を見直し、レイアウトを変更するなどでより見やすいデザインを目指してほしい。 また、N-BOXは性別・年齢問わず運転することが想定されることから、ぜひシートベルトの高さ調整は装備してほしい。また、今回のインテリアデザインでは助手席側前面にエアコンの吹き出し口が配され、デザイン上の特徴にもなっている。しかし、ここから出る風のみを止めることが出来ないのだ。もちろん一括で風を足元などに調整することは可能だが、ここからの吹き出し“のみ”止めることが出来ないのは女性から不評を買うかもしれない。

街中ではNAエンジンでも十分に快適

ホンダN-BOX G・EX Honda SENSING

 もう一台、今回はNAの標準車にも乗ることが出来た。基本的な印象はターボに準じるが、こちらは遮音材等が若干省かれている分、ロードノイズやエンジン音は侵入してくる。もちろんうるさいということはなく、ターボと同時に乗ることで、こちらの方が侵入音の大きさに気付くレベルで、競合他車と比較すれば抑えられた部類に入るだろう。
 エンジンは、最高出力58馬力、最大トルク6.6kgmを発揮。当然ターボよりは下まわるが、街中で走るには十分だ。流れに乗るためには3500rpmくらいまで回転は上がるものの、よりパワーが欲しくなることはほとんどなかった。ただし、今回テストすることが出来なかった高速では、パワー不足を感じるかもしれない。そういったシチュエーションが多い場合は、ターボを選んだ方が良いだろう。
 このクルマにはロングスライドシートが装備されていた。スライド量は570mmと十分以上で、しかも操作自体が軽いので、女性でも簡単に様々なシートレイアウトが可能だ。なお、このシートを選択するとフロントのドアポケットがなくなることは注記しておく。
 全体を通して新型N-BOXは軽自動車の枠を超えた静粛性や乗り心地を備えたクルマといえる。通常積極的に軽量化を図ると、ボディ剛性の低さや室内へのノイズ侵入、軽薄な走りなどに表れやすいのだが、このN-BOXはそれをまったく感じさせない。使い勝手においても新たな提案を含め、様々なUSP(ユニーク・セールス・ポイント)として商品性向上に役立っており、このN-BOXをベースに今後、続々と登場するであろうNシリーズにも大いに期待したい。

ホンダ N-BOXカスタム G・Lターボ Honda SENSING(CVT)
全長×全幅×全高 3395×1475×1790mm
ホイールベース 2520mm
トレッド前/後 1295/1295mm
車両重量 930kg
エンジン 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 658cc
最高出力 64ps/6000rpm
最大トルク 10.6kgm/2600rpm
JC08モード燃費 25km/L
サスペンション前/後 ストラット/車軸式
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 165/55R15

販売価格 138万5640円~208万80円(全グレード)

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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