新車試乗レポート
更新日:2020.01.06 / 掲載日:2020.01.06
【試乗レポート ダイハツ ロッキー&トヨタ ライズ】注目のコンパクトSUVの実力をチェック

ダイハツ ロッキー X
文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス
空前のSUVブームは、まだまだ留まるところを知らない。国産車から輸入車まで選り取り見取りの状況にあり、車種も豊富になってきた。しかし、サイズや価格の面では、素直に身近な存在といえない部分があるのもたしかだ。その一筋の光となったのが、「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」だ。ボディサイズは、日本にジャストな「5ナンバー」。価格帯も200万円前後が中心という身近さ。もちろん、安いだけでは意味がない。一体どんなSUVに仕立てられているのか、私も興味津々であった。
ロッキーとライズの関係、違いは? そしてロッキー/ライズに注目すべき理由も紹介

ダイハツ ロッキー X
まずロッキーとライズの関係だが、いずれもダイハツが開発生産を一手に引き受けたモデルで、両者はいわゆる姉妹車である。ただフロントマスクなどの一部デザインやグレード構成が異なるので、装備内容や価格などに違いがあるものの、基本的な部分や味付けなどは共通している。
これは「トヨタ・パッソ」と「ダイハツ・ブーン」、「トヨタ・タンク&ルーミー」と「ダイハツ・トール」などと同じ関係にある。しかし、これまでの登録車シリーズと最大の違いは、ダイハツの次世代登録車を担うDNGA開発による新プラットフォームを採用したことだ。これが何を意味するのか。料理で例えるなら、これまでダイハツ車は、冷蔵庫にある材料でしか、新メニューを作れなかった。それでも料理人(技術者)が腕を振るい、おいしい料理に仕上げていたわけだ。しかし、材料の鮮度が落ちれば、味の向上はもちろんだが、維持すら難しくなる。当然、開発者としては、新鮮な材料を手にしたい。それを実現させたのが、次世代を担うDNGAの取り組みなのだ。全面刷新となれば、決められた条件の範囲でなら、全てを自由に設計できる。そのため、プラットフォームの構造を見直し、軽量かつ高剛性なものに進化。サスペンションも新設計とすることで、運動性能を向上させたという。
ダイハツ ロッキー、トヨタ ライズは「扱いやすい5ナンバーサイズ」でありながら力強いデザイン

トヨタが発売するライズは、RAV4などと共通するデザインテイストを採用
まずSUVである以上、見た目もインパクトも大切だ。そのスタイルは、ボディこそ小さいが、貧弱さとは無縁。存在感のある力強いデザインを持つ。とくに大型グリルを採用したロッキーはSUVらしい顔立ちに映る。かつてのクロカン「ロッキー」の名を受け継ぐことを意識したのだろう。一方、ライズは、RAV4を彷彿(ほうふつ)させるトヨタのSUV顔で、スポーティさを意識したもの。ただちょっと大人しくも映る。ちかごろ流行のイケメン風といったところだろうか……。
だれでも扱いやすい5ナンバーサイズに収めたボディは、全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mm。さすがに機械式立体駐車場だとハイルーフ対応となるが、これもSUVとして、最低地上高185mmを確保することを優先した結果。最小回転半径も5.0m以内に留めているので、どこでもスイスイと行けそうだ。
ダイハツ ロッキーのインテリアの質感や使い勝手をチェック!

小型車づくりのノウハウを凝縮したインテリアの設計
インテリアは、機能的かつスポーティな仕立てだ。塊感のある形をしており、カジュアルであるものの、安っぽくはない。安いクルマだから……なんて言わせないぞという設計者たちの気持ちが伝わってくるようだ。
キャビンスペースも乗り込むと、視界がよい。もちろん、十分快適な広さも確保しており、小さいクルマ作りにたけたダイハツの強みが活かされている。新しいシートも、座り心地やホルード性が上々で、長距離ドライブにも対応できそうだ。SUVとして重要となるラゲッジスペースは、369Lを確保。マツダCX-3が203Lであることを考えると、かなり優秀だ。さらに床下収納として、買い物かご2個分(FF)の広さを持つ。4WDでは、床下収納のサイズこそ縮小されるが、色々な小物を収めるだけのスペースは確保されている。もちろん、車内各部の小物入れが充実しているのはいうまでもない。
フロントシートは十分なサポートとクッション性能を提供
リヤシートは2段階のリクライニング機能付き
後席使用時でも369Lのラゲッジ容量を確保
2段可変式デッキボードの下にアンダーラゲージを用意
ロッキー/ライズのパワートレインと先進安全装備は?

走りの源となるパワートレインは、全車で、1.0Lの3気筒DOHCターボにMTモード付CVTの組み合わせ。最高出力98馬力/6000rpm、最大トルク14.3kgm/2400-4000rpmと実用的なユニットだが、車重1トン前後の車体には十分といえよう。燃費性能もWLTCモードで、18.6km/L(FF)、17.4km/L(4WD)と経済的だ。
CVTは、タントから採用しているスプリッドギヤ付き新開発品で、発進時など力が必要なシーンでは、ギヤ駆動となるメリットを持つ。ギヤとベルトの切り替わりもスムーズなので、とくに機構の差を感じさせることはないが、走りは格段によくなる。
装備が充実しているのもポイントで、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、オートハイビームなどの先進安全運転支援機能の「スマートアシスト」を始め、前後のLEDランプ、スマートキー、USBソケットなどは全車に標準化。これも良品廉価を掲げるダイハツ車らしいところだ。トヨタはコネクテッドカーを推進しているが、ダイハツでも新たなコネクト機能を採用。ロッキーでは、車内Wi-Fiまで対応するのが面白い。
ダイハツ ロッキーの17インチ仕様と16インチ仕様には走りの味つけに違いが

足まわりの仕様は、FFと4WDの2タイプを設定する。タイヤサイズは、グレードにより17インチもしくは16インチを採用するが、セッティングは共通だという。
まず17インチ仕様のFFモデルから試した。試乗したエリアは、ワインディングに近い環境で、アップダウンとコーナーが多く、しかも道幅が狭い箇所が多数あるところだ。まさにロッキーとライズを試すには打ってつけといえるシーンといえる。
走り始めると、思った以上に、快適性も重視したクルマに仕上がっていると感じた。乗り心地もよく、走行音もできるだけ抑えようとしていることが分かる。もちろん、1Lの3気筒ターボなので、回転数が高くなるとエンジン音が若干気になるシーンがあるものの、うるさいというほどではない。むしろ、適度に聞こえるエンジン音は、クルマを走らせている感覚をより強めてくれ、好印象でもある。
ハンドリングは滑らかで、路面からのインフォメーションもしっかりしており、コーナーとアップダウンが連続する道でも軽快に駆け抜けてくれる。例えば、路面に落下物を発見して素早い回避動作をとっても、クルマの動きが不用意に乱れることはなく、安心して運転を楽しめた。これもDNGAで進化したボディとサスペンションがもたらす大きな恩恵だ。流行のSUVのように、過度なスポーティさを追求せず、軽快かつ柔軟な走りを重視したセッティングは、運転する楽しみが感じられ、「このままドライブに出かけたい」そんな気持ちにさえしてくれた。
ただ16インチのFF仕様に乗り換えてみると、その味わいは少し落ちる。ボディのしっかり感はそのままだが、17インチと比べると、ステアリングインフォメーションが薄い。また路面ギャップの吸収などが弱いこともあって、運転の楽しさを少々スポイルされており、残念であった。この点を開発者に尋ねると、17インチに最適な足まわりのセッティングとしたため、味としては16インチでは、味が少し落ちてしまったとのこと。ただ今後の課題として認識しているとのことなので、年次改良などでのアップデートに期待したい。
最後に、17インチの4WD仕様にも乗ったが、こちらも17インチのFF車で感じた好印象はそのままに、電子制御4WDによるトランクション制御のよさが、より機敏な走りを生んでいた。4WD が必要となるシーンが想定されるなら、ぜひお勧めしたくなる仕様であった。
ロッキー/ライズのコンパクトSUVとしての評価は?

ロッキーとライズが持つ、クロスオーバーSUVとしてのコストパフォーマンスは最高だと思う。一人や二人で出かけることが中心なら、ジムニーなど本格派の選択も面白いが、日常使いや後席に人を載せる機会が多い人は、断然、こちらがおススメ。 たしかに本格SUVのような堅牢(けんろう)さとは無縁だし、おしゃれSUVほど見た目優先でもない。しかし、手ごろな価格と実用性を重視した設計だからこそ、アウトドアシーンを含めて様々な場面で、遠慮なく使い倒せる。そんなSUV本来の楽しみ方に最適な一台といえる。後はいかに楽しみつくせるか、それはユーザー次第だ。
ダイハツ ロッキー X(CVT)
全長×全幅×全高 3995×1695×1620mm
ホイールベース 2525mm
トレッド前/後 1475/1470mm
車両重量 970kg
エンジン 直3DOHCターボ
総排気量 996cc
最高出力 98ps/6000rpm
最大トルク 14.3kgm/2400-4000rpm
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 195/65R16