新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2019.03.05

【試乗レポート・ホンダ ヴェゼル ツーリング】1.5Lターボ搭載! 欧州仕込みの追加モデル

ホンダ ヴェゼル ツーリング Honda SENSING

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 太い低回転トルクを持つエンジンならではのスムーズな加速なので気がつきにくいが、アクセルを踏み込んだ時の加速はなかなかの速さだ。
 ホンダ ヴェゼルに追加された「TOURING(ツーリング)」と呼ばれるグレードの最大のトピックは、ターボ付きのガソリンエンジン。ヴェゼルにとっては“自然吸気ガソリン”や“モーターを加えたハイブリッド”に続く3つめのパワートレインとなる。
エンジンは排気量1.5LのVTECターボで、172馬力の最高出力と22.4kgmの最大トルクは、自然吸気エンジンに対してそれぞれ41馬力/6.6kgmも多い。出力は32%も増えているのだ。これだけ違えば、動力性能の差は明確だ。自然吸気エンジン車は言うなれば「必要にして十分」だが、ターボエンジン車は「かなりの力強さ」である。

ボディ補強や燃料タンク容量アップなど他グレードとの違いは大きい

 そんな「ツーリング」(正確なグレード名称は「Honda SENSING(ホンダセンシング)」と呼ぶ先進安全運転システムが備わることも主張して「TOURING Honda SENSING」となる)の特徴はターボエンジンだけではない。車体下部を引き締める印象を与えるために組み合わせたグレーメタリックのロアガーニッシュや、ブラック塗装のヘッドライトガーニッシュ、専用カラーのアルミホイール、そして左右二本出しのテールパイプフィニッシャーなど「ツーリング」専用の仕立てを採用。スタイリングをスポーティにコーディネートしているのだ。
 また、見えない部分までしっかりと手が入っているのも、キャラクターを知るうえで重要なポイントだ。板厚アップや補強などで強化した専用ボディに、鍛え上げた専用サスペンションを採用。しかしながらこの「ツーリング」が単なるスポーツモデルという位置づけでないことは、遮音材などの追加で静粛性もアップしていることからも理解できる。タイヤはコンフォート性能も高いミシュラン製の「PRIMACY」を履くし、差別化はガソリンタンクにまで及ぶのだから驚く。容量が他のグレードよりも10L多い50Lなのだ。

ヨーロッパ市場に向けた高速安定性重視のセッティング

 パワフルなエンジンに、より強固なボディ、そして静かさに、容量アップした燃料タンク。特徴をザッとあげればそれらがポイントとなるのだが、高出力エンジンを積んでいるからと言って単なるスポーツモデルにはせず、静粛性やガソリンタンク容量アップによる航続距離延長まで盛り込んでいるのにはしっかりと理由がある。
 じつは、ヨーロッパ向けの仕様として開発された仕様だからだ。「ツーリング」は、欧州で求められる、ハイスピードで長い距離を巡行するグランドツーリング性能を高めた商品企画が施された、言うなれば帰国子女的なグレードなのだ。

名前のとおり、高速クルーズを得意とするキャラクター

 走りは、伸びやかな加速が印象的だ。組み合わせるCVTは多段式ATに比べるとダイレクト感に劣るものの、かなり上手に味付けが施してある。アクセル操作に対してパワーが立ち上がるリニア感は、CVTとしては素晴らしいものだ。
 低回転からしっかりと太いトルクを発生するおかげで、加速感は高回転域でグググッと盛り上がるものではなく一定の加速度をずっとキープするような優等生的な特性。排気量の大きな自然吸気エンジンに近い感覚だ。
 これは爽快感や刺激を求めるドライバーにとってはやや物足りないだろうけれど、扱いやすさが抜群で、欧州の高速巡行にはこういった味付けが最適なのだろうと納得できる。ロングドライブでも疲れにくいし、単なるスポーツモデルとしなかったキャラクターが、きちんと反映されているのだろう。冒頭に書いた通り加速自体は力強いものである(ライバルに相当するトヨタC-HRのターボエンジン車よりも加速は強力だ)。
 一方でサスペンション設定は、単刀直入にいうと僕らが「欧州向け」という響きから起きる期待に応えてくれるものだった。鍛え上げた車体と締めたサスペンションは峠道ではキビキビ感を、高速道路ではどっしりと構えた安定感を提供。この操縦性は共感ができる。
 しかし一方で、乗り心地に関しては、橋の継ぎ目などで車体の細かい上下動が気になるシーンもあった。とくにファミリーユーザーには、首都高速道路のように継ぎ目が連続する路面を走ることが多いなら、家族を乗せて試乗してから買ったほうがいいかもしれない。

後席や荷室の広さはいまだにクラストップ

 それにしても、ヴェゼルに触れるたびに実感するのは実用性の高さである。後席やラゲッジスペースはトヨタC-HRやマツダCX-3などコンパクトSUVに相当するライバルの中でもっとも広く、お世辞抜きにひとクラス上の実力。後席はひざ周りにゆとりがあり、ラゲッジスペースは、テールゲートを開けた瞬間に床の低さと空間の広さに驚く。さらには後席を床下へ小さく畳めるなどの特技もあり、ファミリーユースにもっとも適したコンパクトSUVと断言できる。デビューから5年が経過しているのに、実用面でヴェゼルを超えるコンパクトSUVが登場しないというのは、ヴェゼルのパッケージングがいかに秀逸かを端的に表している事柄といえるだろう。

「ツーリング」は最上級モデルという位置付けではなく、走りを重視するユーザー向けの新たなる選択肢

 今回、ターボエンジン搭載の「ツーリング」が加わったことで、従来からの自然吸気ガソリンエンジン車やハイブリッド車に加えて、ヴェゼルの選択肢はさらに広がった。300万円弱という「ツーリング」の価格は「高い」という声もあるが、選べる仕様が増えたことは素直に歓迎すべきだと思う。
 グレード選びのポイントは、車両価格をはじめ絶対的なコストパフォーマンスなら「G」「X」「RS」といったガソリン自然吸気エンジン車、モーター走行の爽快な走りやガソリン代の安さを重視するならハイブリッドモデル、そして中速域以上の力強い走りと欧州で鍛えられた操縦性を求めるならガソリンターボエンジン搭載の「ツーリング」がおススメだ。


ホンダ ヴェゼル ツーリング HondaSENSING(CVT)

全長×全幅×全高 4340×1790×1605mm
ホイールベース 2610mm
トレッド前/後 1535/1540mm
車両重量 1360kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1496cc
最高出力 172ps/5500rpm
最大トルク 22.4kgm/1700-5500rpm
サスペンション前/後 ストラット/ド・ディオン
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 225/50R18

販売価格 290万3040円(ツーリング HondaSENSINGのみ)



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グーネットマガジン編集部

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