新車試乗レポート[2018.01.29 UP]

【試乗レポート】驚きの広さと便利さ! 新型スペーシアに込められた驚きの作り込み

スペーシア カスタム

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 そういう方向で来ましたか。
 新型スペーシアのデザインにそんな印象を感じたのには理由がある。スペーシアが属するスーパーハイトワゴンクラスは昨今ますます競争が激化し、従来以上の個性化が求められているジャンル。そんな背景もあって、今回のスペーシアのモデルチェンジでは、先代よりもデザイン上の主張が強くなったのだ。
 スーパーハイトワゴンは、いま軽自動車においてもっとも熱いカテゴリーである。乗用タイプの軽自動車のなかではいちばん室内が広く、居住性に優れた背の高い車体が特徴で、2017年に日本で販売台数ナンバー1となったホンダ Nボックスも属するジャンルだ。
 2003年11月にダイハツが発売したタントが発端となって生み出されたカテゴリーで、気がつけばそれまで軽自動車のトップセラーだったスズキワゴンRやダイハツ・ムーヴを主力の座から引き下ろしてしまった。
 しかも数年前には、デビュー以来クラスをリードしていたパイオニアのタントが後発のホンダNボックスに販売面で抜かれてしまうという政権交代も発生。売れているジャンルであると同時に、競争が激しいクラスでもあるのだ。各車ともライバルに追いつけ追い越せと言わんばかりに、個性と快適装備で切磋琢磨している。

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ボディタイプ:軽自動車 ボディタイプ:コンパクトカー ボディタイプ:ワンボックス エコカー 新車 内装 レジャー

スーツケースをモチーフにしたデザインで個性を強調

スペーシア

 その中でスペーシアの立ち位置は、現在のセグメントリーダーであるNボックスを追う立場。先代スペーシアやその前身であるパレットはプレーンな雰囲気としていたが、ライバルが増えたなかで存在感を高めるには、まず個性化が重要だと開発チームは考えたのだという。だから、デザインにストーリーを持たせたのだ。
 デザインモチーフは「スーツケース」。「旅行に出かける前にパッキングするときのようなワクワク感を形にした」と開発者は言う。しかし、標準モデルの外観デザインは、どことなく親しみを覚えるレトロテイストだと筆者は感じた。まるでラパンをハイトワゴンにしたような雰囲気を持っている。
 そのうえでハイトワゴン初のルーフレールを装着して、ステーションワゴンSUVのような感覚をトッピング。ボクシーなNボックスや広いドア開口部という飛び道具を持ったタント、ハイウェイスター推しでスポーティな印象を作っている日産デイズルークス、そして三菱eKスペースに対してスペーシアらしさで個性と存在感を高められた。

押し出しの強い迫力マスクのカスタム

スペーシア カスタム

 いっぽうで、フロントグリルの大きさとメッキの煌びやかさに驚くのが上級仕様の「スペーシアカスタム」だ。こちらは顔つきが標準車とは異なり、フロントグリルやヘッドライト、バンパー、そしてボンネットフードやフロントフェンダーまで別デザイン。圧倒的な迫力と存在感が自慢で、ひたすら派手だ。またリヤスタイルはメッキでギラギラ感が増しているほか、テールランプも内部が標準車とは異なるデザイン。こちらは主張が強すぎると感じる人もいるかもしれないし、主張が強くて好みという人もいるだろう。いずれにせよ、2つの仕様を作り分けでより幅広いユーザーに受け入れられる体制になっている。
 ちなみにインテリアは、標準車はボディカラーに合わせてブラックとアイボリーの2パターン、カスタムはブラックのみの設定となる。

遊び心あふれる室内デザインは実際の使い勝手も良好

スペーシア

 さて、乗り込んでみよう。その際に改めて感じたのは、優れた乗降性。高めの着座位置は座ったり立ち上がったりがしやすく、乗降時の姿勢変化が少ないから身体への負担も軽い。リヤドアは低い床面と高い天井で、大きな開口部にスライドドアを組み合わせているのが特徴であり、スライドドアの採用もスーパーハイトワゴンの強みだ。
 そんなスライドドアは、スイング式のドアと違って狭い駐車場などでも全開にできるのが大きなメリットであり、パワースライドドア装着車には今回、予約ロック機能という新機能も追加されている。これはスライドドアを電動で閉めている途中にリモコンのドアロックボタンを押すと、ドアが完全に閉まってからドアがロックされる仕組み。ドアが閉まるまで待ってから操作しなくてもいいというのがポイントである。
 インテリアで目を引くのは個性的なインパネ、とくに助手席側のデザインだ。収納スペースは上からアッパーボックス、インパネボックス、そしてグローブボックスとそれぞれ箱ティッシュが収まる3段階あり、実用的。それと同時に、アッパーボックスの蓋がまるで樹脂製のスーツケースのようなデザインと質感なのだ。これは新しい。
 インパネは上部を乗員と離して前方に奥まったデザインとしているので、先代よりも立てたフロントウインドウと相まって、開放感が抜群にある。いっぽうでナビの位置を、手が届きやすい手前かつ見やすいように配置して、操作性と視認性を高めるなどよく考えられていることを実感する。エアコンの操作パネルも操作しやすい位置になった。
 上級グレードのみの採用となるが、情報をフロントガラスに投影して表示するヘッドアップディスプレイも見やすくて運転を助けてくれる。軽自動車としてはワゴンRに続いて2例目の採用だが、ワゴンRがメーター上に設置したパネルに表示するのに対して、スペーシアはフロントウインドウに投影するタイプ。こちらのほうが断然視認性が高くてメリットが大きい。コスト的にはかかってしまうが、それでも軽自動車に採用したスズキの心意気は立派だ。

後席の広さはライバルのNボックスとほぼ互角

 広さに驚くのはどのスーパーハイト系も同じだが、スペーシアはさらに広くなっているから凄い。天井を5cm高くして頭上のゆとりが増しているだけでなく、フロントウインドウを立てて前席の前方の開放感を拡大。それだけでなく、室内幅の拡大とともに運転席と助手席の間隔が25mm広くなったから、軽自動車にありがちな「隣の人が近い」という感覚も緩和されているのだ。後席に座ると、前後席間距離が10mm増したことで、ひざまわりのスペースが広がっている。ゆったり足を組んでもまだまだゆとりがある後席居住性を目の当たりにすると、巧みなパッケージングが理解できる。
 後席足元空間のゆとりは、最大のライバルであるNボックスと比べるとわずか劣るものの、そのさは“僅差”の範囲。これで物足りないなんていったらバチが当たりそうだ。
 全車に左右独立スライドとリクライニングを組み込んだリヤシートは、座面前端の形状を工夫してふくらはぎまでサポートして座り続けても疲れにくい形状とし、内部のクッションはこれまでのスズキ車では前例がないほど高密度のウレタンをつかって座り心地をチューニング。言われてみれば確かに、従来よりも薄い座面ではあるものの着座感は好印象だ。

 ライバルに対して追い付け追い越せの精神で、快適装備も新たに追加されている。大きなアイテムは、天井に装着したサーキュレーター。これは、空間が広すぎるがゆえに後席が暑かったり寒かったりするというスーパーハイトワゴンの欠点を補うために、前席付近の空気を後席へ送る仕掛けで、ライバルのeKワゴンやデイズシリーズであるデイズルークスでも採用しているが、スペーシアに採用されたそれは薄くて室内の広さを邪魔しない。これは、単にファンを使い、少量の空気で風速を高めて吹き出すことで、周辺の空気を誘引して後方へ送る仕掛けとしているからだ。また、運転席には風が拡散する範囲を調整できるエアコン吹き出し口を軽自動車初採用。範囲を狭めるとスポット的に風が強くあたり、範囲を広げるとじんわりと広範囲にあたるようになり、好みに応じて調整できるというわけだ。
 もちろん、大きなフロントウインドウでも日差しをしっかりと遮る大型サンバイザー、後席ドアのロールサンシェード、後席用テーブルなどは従来同様に採用している。そのうえアクセサリーのUSBソケットを装着すれば後席の人がスマホなどを充電できるようにリヤシート脇にDC電源アウトレットを用意するなど快適性を高める工夫が盛りだくさんだ。
 荷室も大きく進化していて、荷室側(車両後方)から後席スライドができるのも便利だし、従来だと「後席側にまわって背もたれを倒す→全体を床下に沈める」という2アクションが必要だったのが、新型では車両後方から背もたれを前方に倒す操作だけでシートが床下に格納されるようになったのは大きなトピック。これまでこのジャンルにおいてワンタッチで後席を倒せるのはNボックスだけだったが、新型スペーシアも可能になったというわけだ。
 荷室といえば、開口部は床が25mm低くなり天地高が40mm高くなった。そのうえ掃き出し部分には自転車を積むときにタイヤを動かすガイドとなる溝も作っている。これはニーズが多い自転車を積む際の積載性を高める意味合いが大きく、その親切心には驚いた。

NAでも十分走るが標準タイプにもターボの設定を求む

 まずは自然吸気モデルを試乗。嘘偽りなく、出だしから驚かせてくれた。スーパーハイトワゴンの自然吸気エンジン車は、車体の重さに対してエンジントルクが不足気味で、発進や加速に力強さがないのが定説である。しかし、想像していた以上に車速を高めてくれるのだ。
 昨年フルモデルチェンジしたNボックスも、その不満が解消されていたので驚いたのだが、新型スペーシアも同様で、その2台以外のライバルを抜きんでているから頼もしい。
 加速と言えば、新型スペーシアは全車がISGという発電機をモーターとして活用する簡易的なハイブリッドシステムを搭載していて、システムはバッテリーが3Aから10Aへ、モーターは1.6kWから3.2kWへと従来よりも強化された。モーターによるクリープ走行も最長で10秒間おこなえるのだが、ハイブリッド感はよほど意識しないと感じなかった。
 いっぽうターボエンジンは力強く、低回転域から力を発生するので排気量が上がったエンジンを搭載している感覚。流れのいいバイパス道路への合流では力不足を感じることもある自然吸気に対して、こちらは高速道路でもしっかりと頼れる動力性能だ。
 だから走りを考えるとターボエンジン搭載車が欲しくなるが、残念なことに標準タイプでは選べずカスタムだけに限られてしまう。スペーシアらしい個性が強く感じられる標準タイプでもターボエンジンが選べるといいのだが……。

スペーシア カスタム HYBRID XSターボ 2WD(CVT)
全長×全幅×全高 3395×1475×1785mm
ホイールベース 2460mm
トレッド前/後 1295/1300mm
車両重量 900kg
エンジン 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 658cc
最高出力 64ps/6000rpm
最大トルク 10.0kgm/3000rpm
JC08モード燃費 25.6km/L
サスペンション前/後 ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後 Vディスク/ドラム
タイヤ前後 165/55R15

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