衝突事故や自損事故に遭遇すると衝撃でエアバックが作動します。エアバックが作動したことで事故による体へのダメージは軽減されますが、作動したエアバックはどのように処理したらよいか分からない方が多いのではないのでしょうか。

特にエアバックが作動してしまうと、簡単な修理だけで済んだとしても事故車に該当してしまうことはあまり知られていません。

この記事では、エアバックが作動した後の車の処理や車の取り扱い、修理と廃車のどちらを選べばよいのか、などを詳しく紹介します。

エアバックが作動した車は事故車扱いになる可能性がある

事故に遭遇すると衝突の衝撃でエアバックは作動しますが、エアバックが作動すると事故車に該当してしまう可能性があります。

そもそも事故車とは、事故もしくは天災などの何かしらの原因によって、車の骨格部分にダメージを負い、骨格部分の修理やパーツを交換したものが該当します。

もし、エアバックが作動した車を廃車処分もしくは中古車買取業者へ買取を依頼する場合、業者によっては事故車として処理が進められ、普通の中古車と比べて買取査定金額が低く設定される可能性もあるため、業者選びの際には注意が必要です。

車に備わっているエアバックの役割

車に備わっているエアバックの役割
事故に遭遇した際に身体を守ってくれるエアバックですが、実際にどのような役割があるのか、どのような仕組みなのか、しっかりと理解している人は少ないでしょう。

ここからは、車に備わっているエアバックの役割について紹介します。

エアバックについて正しい知識を身に付けることで、エアバックが作動した後にスムーズに対処できるようになります。

エアバックの仕組み

車には衝突時の衝撃を感知するセンサーが備え付けられており、車が何かに衝突し、センサーが一定以上の衝撃を感知するとエアバック作動します。

センサーが衝撃を感知すると、信号がエアバックを膨らませるためのガス発生装置に伝わり、着火することでエアバック内に窒素ガスが送り込まれ、エアバックが膨らむ仕組みです。

車にはシートベルトが備え付けられています。そのため、衝突時に車外へ飛び出ることは防げますが、衝撃による力が全てベルト部分にかかるため体はダメージを受けます。

そこでエアバックが作動すると、シートベルトによってかかる衝撃を軽減しつつ、車外への飛び出しを防ぐこともできます。

現代においてエアバックは命を守るために欠かせないものになりました。

エアバックは使い捨て

車の衝突事故から命を守ってくれるエアバックですが、一度作動してしまうと元には戻りません。基本的に使い捨てのアイテムとして備え付けられています。

エアバックはクッション部分以外にも感知センサーやガス発生装置など複数のパーツから構成されたシステムであるため、一度作動して交換が必要な場合、関連する部品も含めて全て取り換える必要があるでしょう。

さらに、車種によってはエアバックが作動すると、エアバックを格納していたハンドル部分や配線関連、シートベルト、エアバック制御コンピューターなどエアバック以外の部品も破損している可能性があります。そのため、元通りにするために必要な修理代金は高額になりがちです。

車のエアバックはどれくらいの衝撃で作動する?
厚いコンクリートの壁に時速20~30km以上のスピードで正面衝突した場合に作動します。また、車の前方左右30度以内の方向から強い衝撃を受けた場合も作動します。

作動したエアバックの対処方法

作動したエアバックの対処方法
エアバックが作動した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

ここからは、作動したエアバックに対する対処法について紹介します。

急な事故によって作動するシステムのため、落ち着いた対応をとるためにも、事前に正しい知識を知っておくことは非常に重要です。

エアバックが展開したら業者へ修理依頼

エアバックが作動した場合、修理は必ず業者へ依頼しましょう。

エアバックは衝突以外に縁石に乗り上げた衝撃でも作動するため、状況によっては作動後も問題なく運転できると考えがちです。しかし、素人判断で修理を行ってはいけません。

エアバックはガス発生装置で着火したことによる爆発エネルギーで作動します。そのため、作動時の衝撃で周辺部品が損傷を受けている可能性があります。

素人がエアバック部分を見ただけで、車の内部に発生している破損を見つけ出すことはできません。エアバック作動後に車を運転できたとしても、見えない破損で走行時に異常をきたす可能性がゼロではないため、後続車両の邪魔にならないように移動して、速やかに保険会社や修理工場に連絡を入れましょう。

事故の場合は警察や救急車への連絡も必要です。

エアバック展開後に修理をしないことのリスク

エアバックが作動してしまうと高額な修理費用が必要です。エアバック自体は使い捨てであり、交換時には周辺システムを総取り換えする必要があるため、工賃や部品代を含めると修理費用の相場はおよそ10~30万円と考えられています。

修理するかどうか判断が悩ましいところではあるものの、買い替え時に売却を検討するのであれば修理がおすすめです。

中古車買取業者の査定基準は通常、年式や走行距離、各パーツの劣化具合などで設定されていますが、エアバックを修理していないままだと、損傷の大きなパーツごとの価格を査定するようになります。

結果、下取り価格や買取価格が事故車と同じように大幅に減額されたり、中古車として購入してもらえなかったりするリスクがあるでしょう。

エアバックの修理は事故車にあたる?
エアバックの修理は、事故車における修復歴と同じような取扱いになる可能性があります。そのため、ディーラーや中古車買取業者へ下取りや買取査定を依頼しても、買取してもらえなかったり、引き取り費用を請求されたりするかもしれません。
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エアバックを修理した方がよいケース

エアバックを修理した方がよいケース
エアバックを修理しなければ、下取り金額や買取査定金額に悪影響を及ぼす可能性があることが分かりました。

それでは、エアバックが作動してしまったら全て修理しなければならないのでしょうか。ここからは、エアバックを修理した方が良いケースについて紹介していきます。

車の損傷が少なく相手方の対物賠償保険がおりる時

衝突事故に遭遇し、例えば自分の過失割合が15、相手の過失割合が85だった場合においては、相手方の対物賠償保険が出るのであれば修理したほうが良いでしょう。

例えば、修理費用が総額100万円かかったとして、相手方の保険から85万円、自己負担を15万円で修理できるなら、かなり安く修理できることが分かります。

しかし、このような場合は次の条件を追加で満たしておくことが必要です。

  • 車へのダメージが少ない
  • 乗っている車の人気が高く価値がある

上記2つの条件が揃っていないと車両価値が修理費と同額にならず、相手方の対物賠償保険から支払われる金額が少なくなります。結果として自己負担額が増えてしまうため要注意です。

車の損傷が少なく自分の車両保険がおりる時

車両保険に入っている車で自損事故をしてしまった場合、車の損傷が少なく、自分の車両保険が支払われるのであれば自己負担額を下げられるため修理したほうが良いでしょう。

このパターンでも、「乗っている車の人気が高く価値も高い」といった条件は外せません。

その理由としては、車両評価価格が低ければ支払われる保険金額も少なくなり、自己負担額が増えてしまうからです。

エアバック修理時に気を付けたいポイント

エアバック修理時に気を付けたいポイント
エアバックを修理することになった場合、気を付けておきたいポイントがあります。

ここからは、修理前に覚えておくべきポイントについて紹介していきます。

修理したことによるデメリットも存在するため、修理するかどうか判断する際は参考にしてみてください。

修理に保険を適用すると来年度以降の保険料が高くなる

加入している車両保険を活用することもできますが、デメリットについても理解しておきましょう。

もし修理費用の補填のために車両保険を活用した場合、保険等級が下がるため来年度以降の保険料金が高くなります。単独事故もしくは車両同士の事故であっても、修理費用を支払ってもらえば3等級下がってしまいます。

自動車保険を修理費に充てようと考えているのであれば、来年度以降の等級による保険料と比較検討してみることが大切です。

事故車扱いで車両価値が下がる可能性がある

エアバックを修理すると事故車扱いになる可能性があります。

エアバックが作動した場合、周辺パーツの総取り換えなど大掛かりな作業が発生するため、修理歴のある中古車としては取り扱ってもらえないでしょう。

事故車に該当してしまうと、中古車販売業者へ販売するときの買取価格が下がってしまうといったデメリットが生じます。一般的には普通の中古車買取価格の3~4割減少するようです。

外装を含めて元通りになるまで修理しても、結局は買取価格が下がってしまうことを考慮すると、売却するか廃車にするかを検討してみても良いかもしれません。

廃車か修理かの決め手は何ですか?
廃車か修理のどちらを選ぶかについては、次のポイントを全て満たしているかを判断基準として持っておきましょう。
・車へのダメージが少ない
・修理費を超える自動車保険が下りるかどうか
・乗っている車に人気や価値があるか
もし、この3つのポイントのどれかが欠けるのであれば、修理するよりも廃車にして新しい車に買い替えることをおすすめします。

エアバック作動後の車を買取依頼できる業者について

エアバック作動後の車を買取依頼できる業者について
ここからは、エアバック作動後の車を買い取ってくれる業者について紹介していきます。

業者にはそれぞれ特徴があるので、どのような人に適しているのかなどのポイントも説明します。

中古車販売業者

中古車販売業者は、処分予定の車の車両価値が高い人におすすめです。

中古車販売業者に買取依頼した場合、エアバックが作動していれば事故車扱いになるため、一般的な中古車と比較して買取価格は下がる傾向にあるものの、車両価値が高い車の買取であれば、値下げ幅が多少緩和されます。

一方で、即日対応が難しかったり、必要書類の手続き費用がかかったりと、事故車の取り扱いの観点から考えると実際にはあまりメリットを感じないかもしれません。

廃車買取業者

廃車買取業者はスピーディーかつコストを抑えて廃車処分したい人におすすめです。

事故車の取り扱いに慣れているため買取金額も申し分なく、地域によりますが即日対応であったり、不動車の引き取りや手続き関連の費用が無料に抑えられたりと、事故車を処分するのに適した業者といえます。

ディーラーや中古車販売業者と比べて引き取り時のレッカー代もサービスしてくれる業者もあるため、サービス面と金額面の両方でメリットを感じやすいでしょう。

解体業者

解体業者は廃車の選択肢しかない車において、少しでも費用をプラスにしたい方におすすめです。

業者にもよって違いはありますが、引き渡し方法の融通が効いたり、不動車の引き取り金額や書類手続き費用が安く設定されていることがメリットでしょう。

即日対応の観点からは廃車業者に劣り気味であるものの、ディーラーや中古車販売業者に比べるとメリットが多い業者といえます。

新車ディーラー

新車ディーラーは車の乗り換え予定があるものの廃車手続きが面倒と感じる人におすすめです。

車の乗り換え予定があれば、新車ディーラーでは下取り価格として少しまとまった金額で買取査定額を提示してもらえるメリットがあります。

一方で、車の状態によっては引き取り手数料を請求されることがあるため、金額的なメリットを感じにくいかもしれません。

また、車の引き渡しに関しては基本ディーラーへ持ち込まなければならないため、その分の手間や費用もかさむ傾向にあります。

エアバック展開後に事故車をなるべくお得に廃車する方法

エアバック展開後に事故車をなるべくお得に廃車する方法
ここからはエアバック作動後の事故車をなるべくお得に廃車にする方法について紹介します。

売却のタイミングや複数社への見積もり依頼で買取金額に差が出るでしょう。

乗らないと決めたら早めに売却する

エアバックが作動した時期によりますが、事故に遭った車に今後乗らないと決めたならば速やかに廃車手続きを進めましょう。

廃車手続きを早い段階で完結できれば、自動車税の還付をより多く受け取れる可能性があります。

自動車税は毎年4月1日時点で所有している車に対して課せられる税金ですが、普通車に限り年度の途中で廃車手続きを行うと納付した自動車税の還付を受け取れます。

排気量2Lの普通車であれば年間の税額は45,000円です。自動車税は月ごとに還付されるため、1ヵ月早く廃車手続きができれば受け取れる還付金額に3,750円の差が生まれます。

複数の廃車買取業者に見積もりをもらう

廃車買取業者へ買取依頼をする場合、複数の業者から相見積もりをとることがおすすめです。

1社だけであれば、適正な買取金額であるかよく分からない上に、より高く買取してもらうための交渉材料もありません。

廃車処理後はパーツごとに分解してスクラップとしてオークションに出品されることが多く、金額の付き方はオークションの結果次第のため、比較検討だけで数万円変わるといったことも起こり得ます。

よりお得に買取してもらうためにも複数社の見積もりが大切です。

まとめ

①エアバックの役割は衝突時の負荷を軽減するものだが、使い切りのシステムなので、交換する際は対象となるパーツが多く、修理費用が高額になりがち
②エアバックが作動した場合は必ず業者へ修理を依頼すること
③車の損傷が少なく、諸条件を満たしているのであればエアバックの修理をしたほうが良い。ただし、修理したことによって事故車扱いになる可能性や修理に自動車保険を使った場合は等級が下がるデメリットがある
④エアバックが作動した車を買取依頼できる業者は複数社あるが、廃車買取業者がサービス面でもコスト面でもメリットが多い
⑤お得に車を処分するためには、自動車税の還付を受けるために速やかに廃車手続きを進めることや、複数の業者から買取査定の見積りを依頼するといった方法が必要

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